2022年7月のブログです
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瀬尾まいこさんの『傑作はまだ』(2022・文春文庫)を読む。
夏休みに読もうと楽しみにしていた小説。
旅先の旭川の本屋さんで購入。
ゆっくり読もうと思っていたが、なかなか面白くて、1日で読んでしまう。もったいない。
本の帯には、50歳の引きこもり作家の元に、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子が、突然やってきた、とある。
若気の至りで生まれた息子に20年間、写真と引きかえに養育費だけを送っていた父子関係が突然変わる。
びっくりする物語の始まりだ。
現代っ子の息子と世間知らずの父、二人の織りなす物語が楽しい。
少しのユーモアと少しの真実が色を添える。
一見、悩みのなさそうな息子だが、しかしなにやら、少しだけ影を引きずっている風でもあり、気にかかる。
息子のおせっかいで町内会に入ることになってしまった作家は、おっかなびっくりながらも新しい人間関係を少しずつ築く。
同じように少しひきこもりの傾向のあるじーじは、人間とはなんとやっかいなものかと思う。
しかし、そのわずらわしさが同時に喜びでもあるわけだろう。
子どもを産んだら、子どもだけしか見えなくなった、という息子の母親の言葉も逞しく、重い。
そして、それが驚くようなラストに続く。
小説だなあ、と思うが、いい小説だ。
そして、希望を持てる物語だと思う。 (2022.7 記)
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2025年7月の追記です
この作家さんは20年間、養育費を送ったのだから、義務とはいえ、なかなか偉い。
元の奥さんも、写真をずっと送ったのは偉いと思う。
中には、養育費なんていらないから、その代わり一生会わないでちょうだい、というお母さんもいる。
夫としては最低で、父親としても、お母さんから見れば最低、と思って、そう言うのは理解できなくはないが、子どもとお父さんの関係は、お母さんから見るだけでは理解できない繋がりもあるかもしれず、お母さんの感情だけで父子の繋がりを断つのは早計かもしれない。
難しいことだろうが、熟慮が必要な問題だろうと思う。 (2025. 7記)