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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや原っぱカウンセリングなどをやっています

鳩沢佐美夫『コタンに死す-鳩沢佐美夫作品集』1973・新人物往来社-アイヌ民族からの叫びをきく

2025年04月28日 | 北海道を読む

 2020年4月のブログです

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 アイヌ民族の作家である鳩沢佐美夫さんの『コタンに死す-鳩沢佐美夫作品集』(1973・新人物往来社)を再読しました。

 この本は20年くらい前に帯広の古本屋さんで購入したもので、一度読んだきりだったのですが(鳩沢さん、ごめんなさい)、今回、すごく久しぶりに読みました。

 1973年、じーじが大学に入った年の本ですが、内容は全く古くありません。

 それどころか、アイヌの人々への差別問題だけでなく、最近、問題になった知的障碍者の避妊手術事件などがすでに描かれていて、作者の問題意識の深さにびっくりさせられます。

 短編集ですが、じーじは作者の自伝的な小説である二つの小説が印象に残りました。

 一つはおばあちゃんとの思い出話を描いたもの。

 おばあちゃんのアイヌ民族の知恵がたくさん描かれていて、美しい小説です。

 もう一つは、戦時下での小学生の姿を描いた小説。

 アイヌ民族ゆえにだんだんと差別をされる主人公の憤りと哀しみが描かれます。

 哀しいことですが、この現実を忘れてはならないと強く思います。

 これを読んでじーじは、小学生の頃に、貧乏な子や頭の悪い子をみんなと一緒になって馬鹿にしていた自分を思い出し、申し訳なさと自分への怒りでこころがいっぱいになりました。

 鳩沢さんの文章はとても美しい日本語です。

 日本語教育を受けたのだから当然かもしれませんが、下手な日本人の作家さんより美しいです。ましてや、今の若い作家よりはずっとうまいです。

 アイヌ民族の人たちとのことだけでなく、じーじたち自らの内にあるすべての差別意識についても、深く考えていきたいと思いました。    (2020.4 記)

 

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東直己『鈴蘭』2010・角川春樹事務所-私立探偵・畝原シリーズ第8作、生きる哀しみと喜びを描く

2025年04月28日 | 北海道を読む

 2023年4月のブログです

     * 

 東直己さんの『鈴蘭』(2010・角川春樹事務所)を読む。

 私立探偵・畝原シリーズの第8作。

 生きる哀しみと喜びを描いている、と思う。

 いい小説だ。

 このところ、樋口有介さんと東直己さんの小説にはまっていて、ずっと読み続ける毎日。

 幸せな日々だ。

 主人公の畝原は、第4作の『熾火』で関わりのできたみなしごを引き取り、養女とし、さらに、長年、娘の学童保育を通じて付き合いのあった女性とその連れ子と一緒に生活をするようになる。

 娘と再婚した女性の連れ子の女の子と養女との3人の女の子の父親となって、なかなかにぎやかだ。

 第5作から第8作まで、畝原が私立探偵として関わる事件とともに、女の子たちの成長ぶりが読んでいて楽しいが、特に養女となったみなしごの成長ぶりにとても癒される。

 その子は、保護された時、虐待の跡があり、学齢期なのに言葉をまったくしゃべれず、腎臓が一つないという人身売買の被害者だったのだ。

 その子が、本当に少しずつ言葉を身につけていく様子が感動的だ。

 第8作もあらすじはあえて書かないが、生きることが下手な老人の哀しみが描かれるといってよいのかもしれない。

 悪気がないのに、迷惑をかけてしまう人生は哀しそうだ。

 しかし、急に生き方を変えられるわけもなく、哀しみは続く。

 生きることはなかなか大変だと思う。

 そんな中で出会う小さな幸せは尊い。大切にしたい。

 そんなことを描いている小説ではないかと思う。         (2023.4 記)

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