ココロの居場所

平穏な居場所を求めるべく、日々、感じた事を掲載していきます。

忘れられない笑顔

2007-06-17 22:24:48 | ショートショート
君は居たたまれない気持ちを、悲しくなるような照れ隠しの笑顔で返してくれた。
僕は、君の自尊心を傷つけないように、言葉を選らんだ。
「送っていくよ。」でも、君は「大丈夫だから。気にしないで。」とそっけない。
今日、君を誘わなければ大切な物を無くさずにすんだのだ。
そして、ランチの時も、気まずいまま。...
空回りの午後のひと時だから、このあたりで帰ったほうが無難だろう。
傷つけあう事から逃げるような僕は弱い人間だ。
あのピアノの生演奏だけが間を持たせてくれる救いだった。
そのメロディーが僕の心の中で何度も何度もリフレインしていた。

(このショートショートは、90%フィクションです。)

おやじギャルのつっこみ。

2007-02-20 23:23:41 | ショートショート
スタバで、コーヒーをとって、一人の時間を楽しんでいた。
ここの店の土曜の朝は、私のような人々が店内に結構いる。
私は、コーヒーの香りとともに読みかけていた単行本を開こうとした時だった。
後ろから、女性の声がした。
「この前は、途中で帰えちゃって、どうしたんですか。」と
言いながら、私の肩をたたいた。
彼女とは、仕事関係で、もう3年以上、向き合っている。
「いや、ちょっと、次の朝が早かったので。...お、おはよう。」
とかなり、ふいをつかれて、慌てている私。
「で、何してたんですぅ。」と突っ込まれる。
「いや~、例の改善提案のアイデアをいろいろと考えていたところで。...」
と一人の世界に入って来られそうで、デタラメを行ったりする。
「てか~、上司が、また、変わったものだから。今までの事も、チャラになって、
いったいどうなっとるんじゃいという感じですよね。」とおやじの独り言のように彼女。
朝の空気がいっきに変わってしまった。
でも、彼女と意味のない話をするのも、それはそれで、悪くないのだ。

(このショートショートは、100%フィクションです。)

目も前にいる、あなたは救世主か。

2007-02-17 00:23:53 | ショートショート
ジョン・レノンのような趣きのその人は、いつも、公園の決まったベンチにいる。
私は、何の根拠もないのに、彼を救世主かもしれないとその時思ったのだ。
「今日も、仕事が思ったように行かなくて。どうしたらいいのか。...」
彼は、「そう。」と聞こえるか聞こえないか小さな声で、答える。
そして、タバコに火をつけた。淡い煙が、風のない公園の空に溶け込んでいった。
私は、もう一度、なげかけてみる。
「なるようになると思えればいいんですけど。...」
彼は、何も答えず、日向ぼっこにやってきた猫をなでてている。
ただ、苦労も悲しみも、受け入れているような優しげな彼の目元が、声なき声を伝えていた。

(このショートショートは、100%フィクションです。)

清浄なるもの。...

2007-02-08 23:02:43 | ショートショート
西高東低の気候が、ここのところ続き、地面は凍りついている。
冷たい雨は、雪に変わり、私は傘をたたむかどうか迷っていた。
とその時、耳元で、透明感のある、静かな女性の声がした。
「傘に入れてもらえますか。」
私は、恐いながらも、そっと聞いてみる。
「あなたは。...」
「私は冬です。」真っ白なコートを身にまとったような。
私は、彼女が冗談でも言っていると思っている。
「そうですか。寒くなってきますね。寒いのは苦手なもので。...」
「あの~、寒さはこの世の中で一番清浄なものと言われているんですよ。」
「しょうじょうって。...」
彼女の言っている意味がわからない。
雪があたり一面に積もって、あっという間に白銀の世界に。
「しょうじょうって、なんですか。」と彼女に聞いてみる。
「あなたは、既に見ているじゃない。」と彼女。
私は彼女の表情を見ようとしたが、そこには、もう彼女の姿は無かった。
私は、静かなる白い世界を眺めて、寒いのも悪くないと思った。

(このショートショートは、100%フィクションです。)

引用:「寒さはこの世の中で一番清浄なもの」(レイモン・ラディゲ)

ちょい乗りおやじになる。

2007-01-15 23:41:31 | ショートショート
冬なのに、柔らかな日差しがさして、少し暖かな日だった。
いつも通る道の途中に小さな自転車屋さんが、約1年前からあって、少し気にとめていた。(実は、ここのところチャリのない生活を送っていて、こんな日は、チャリに載るには絶好の日だと思った。)その日も何気なく、のぞくと店の前に自転車が3台ほどあって、驚くべき値札が目についた。見た所、どうみても新車である。とすぐさま、店から店員がでてきた。「奥もどうぞ、見てください。どれも、同じ値段なんですぅ。」と若い女の子がでてきた。「あの、この前の店員さんは、男の方でしたよね。」と私。「あ、後2箇所、店をだしてまして、そちらに行ってるんですぅ。」と彼女。「この奥のこれは、6段の変速機がついていて、同じ値段ですよ。」と彼女、商売上手である。「でも、どれも、この値段じゃ、儲けないでしょ。」と私が言うと「安く仕入れてるから、大丈夫なんですう。」と答えがすぐ返ってくる。あんまり安いと心配であったが、彼女の売る姿勢にのせられて、衝動買いでもいいかなと思えてきた。「その変速機つきのミニチャリ、ください。」と私がいうと「これ、この前もすぐに売れて人気なんです。」とすてきな笑顔をみせてくれた。チャリのメンテをしてくれている間、間があって、「パンクしたりして、修理にくるお客さんとか多いんじゃない。」と私も意味もない事を言う。「え、パンク、修理できるんですか。すごいです。」とどう聞き間違えたのか彼女。「あ、あの、僕は修理できなくって...」と会話がだんだん、変になってきた。最後に「また、気になるところがあったら、寄りますね。」と私は言って、調整してくれたチャリにまたがると、彼女は、また、その笑顔で見送ってくれた。買ったばかりのミニチャリは、軽やかに下り坂をおりていった。ハンドルをにぎる手が少しかじかむが、それがなんとも心地よかった。

(このショートショートは、80%ほどフィクションです。)

恐怖のインフルエンザ・ワクチン接種

2006-12-14 23:16:43 | ショートショート
風邪も治った事だし、インフルエンザの予防注射をし、万全の体制で冬を乗り切る予定だ。
いつもお世話になっている病院を訪れると、看護士さんがまた新しい方に変わっていた。
でも、見た感じ何年か経験を積んだ看護士さんのようで安心した。
「あの、インフルエンザの予防注射を受けたいのですが。」と私が言うとすかさず
「今が一番、いい時期ですよ。年によってはワクチンが足りなくなる事もありますから。」とその看護士さん。
「この問診票に書いてもらえますか。」とアンケートボードにはさんだ記入紙とボールペンを私に渡す。
「これ、まるをつけるだけでいいですか。」と私が問いと
「え、...(何いってんだこの人という雰囲気)上から住所、氏名と一通り、記入してくださいね。」としごく当然のことを言われてしまった。
「あ、それから、体温も測りますので。」と体温計も渡される。
36.6℃で、体調も問題なし。ここまで何事も起きない。
今度は、その熟練された看護士さんが手際良く、注射をしてくれるはずである。
ところが、ここで機材一式、その看護士さんから病院長に渡された。
「はあーい、腕をだして~。」と病院長。
「うう。右、右にしてください。」と焦る、私。
(皮下注射は、子供の頃から嫌いなのだ。しかも、病院長、じきじきとは。
 1年に何回、注射器を握るのだろう。)
「ちょっと、痛いですよっ。」と私のたるんだ右腕の皮膚をつまむ。
なんだか注射の持ち方もあやしげである。
私は、目をせいっぱいつぶった。私が今、できることは目をつぶることだけなのだ。
....「はあーい、後、よ~くもんでください。」と病院長。
実は、それほど痛くはなかった。でも、こういうストレスに弱いのである。
病院をでると、雨がやんで、雲の間からうっすら日差しがさしていた。

注:このショートショートは、70%ほどフィクションです。

恐怖の点滴

2006-12-01 23:08:22 | ショートショート
今回も、まだ若い看護士さんだった。
「点滴をしますので、左腕をだして、手を握りしめてくださいね。」
「こうですか。」と言いながら目をつぶる私。(針を見るのが恐いのです。)
消毒液で腕を消毒しながら、針を刺す位置を探しているようだ。
(手馴れた看護士ならば、あっという間に針を刺してくれるのだが。)
「ちょっと、チクっとしますよ。」としばらくして、彼女の声が。...
「すみません、もう一度やり直したほうがいいかなあ。やっぱり、やり直していいですか。」
私は心の中で勘弁してくれよと叫んだ。ここで、いやですという訳にもいかない。
「どうぞ、どうぞ。」と言ったものの、彼女の緊張が伝わってきて、また失敗するのではないかとという恐怖の時間が流れた。
「すみません。もう一度ですね。」
又、私の腕のどの血管に刺すか考えている。
「ちょっと、痛いかもしれませけど。...痛いですか。」
「うっ、痛ったた。」どうも、手首の近くの静脈を刺したようだ。このあたりは結構、痛いのだ。
そして、30分後、点滴が終わり、ベットから起き上がると、バンドエイドがなぜか3箇所貼られていた。

注:このショートショートは、30%ほどフィクションです。

血管をほめられる。

2006-07-18 22:19:23 | ショートショート
「○×さん、採血します。」私は、注射が大嫌いなのですが、今日は血液検査です。前回の看護士さんではなく、新しい方でした。
「腕をここに置いて」「こうですか。」と私。
「ワァ!素敵な血管ですぅ。」と彼女。「そんな事、言われるの初めてです。」(ちょっと変だが、まんざら悪くない感じ。)
後は、注射針が恐くて目をつぶって痛みに耐えた。
「大丈夫でしたか。」「注射針だから、それなりに。...でも、すばやくやっていただいたので、良かったですよ。」と私。
「素敵な血管なので、新人の子は、喜びますよ。」と彼女。
(嬉しいような複雑な心境で血液採取を終えたのでした。)

注:このショートショートは、80%ほどフィクションです。

幻の魚

2006-07-16 23:20:27 | ショートショート
「この水草水槽の中にいるカーディナルテトラは、水槽に『5匹で1500円』と札が貼ってあるので、売りものなんだよね。」と店員の女の子に聞いてみた。
「もちろん、大丈夫ですよ。」という快い返事。
「じゃあ、その5匹お願い。」とこちらも即座に返事する。
彼女は、目の大きな可愛い娘だった。わりと大きめの網を持ってきて、カーディナルなる魚をすくうのだが、綺麗にセットされた水草をうまく使ってカーディナルは、たくみに逃げる。彼女も仕事とはいえ、大変そうだった。
これは、まずい注文だったかなと感じた私は、「それ、大変だね。向こうの魚だけいる水槽で、レッドファントム・ルブラがいるけど、あれを5匹でいいよ。」と私。
「すみません。...あのレッドファントムは、天然もので滅多に入らないんですよ。」と彼女は笑顔で答えると、今度は、あっという間に5匹すくって、レジへ。2000円だった。
「今度、カーディナルは、とりやすい水槽に入れてますから、また来て下さいね。」と彼女。
私、なんだか気をよくしてショップを去った。
翌日、ある男が言った。「この水草水槽のさかな、もらえる。」
「もちろん、大丈夫ですよ。」

注:このショートショートは、フィクションです。