生活保護世帯に冬の光熱費として支給される冬季加算が今冬から減額され、受給者の暮らしを直撃している。集中暖房を備える札幌や苫小牧の公営住宅では、暖房費が定額制のため冬季加算だけで賄いきれなくなる世帯が続出。17日には受給者436人が減額の取り消しを求める審査請求を道に行った。専門家は「このままでは最低限の生活を保障するという制度の趣旨に反する」と指摘している。

 「今も生活はぎりぎり。これ以上切り詰められない」。苫小牧の市営住宅に1人で暮らし、生活保護を受給する女性(68)は嘆く。

 3DKの自室の集中暖房費は、10月中旬から5月末までの7カ月半で約11万8千円。昨年度は冬季加算の総額が11万400円だったため不足はわずかだったが、本年度は冬季加算が8万7780円に減らされたため、暖房費を払うのに約3万円足りなくなる。

 月の生活費は冬季加算を除く生活保護費と年金の計約7万円。足が不自由なため、冬は病院通いにタクシーを使わなければならず、暖房費の穴埋めに回せるお金は少ない。女性は「暖房を節約しようにもできない状況で冬季加算が減らされるのは理不尽」と訴える。

 道などによると、定額制の集中暖房がある道営、市営の団地は、札幌市内の3団地と苫小牧市内の10団地の計13団地。これらの団地の入居者で本年度に冬季加算だけで暖房費を賄えない生活保護世帯は札幌で297世帯、苫小牧で573世帯の計870世帯に上る。

 中には4万円以上不足する世帯もあり、両市には受給者から「暖房費が足りない」という相談が相次いでいる。公営団地の集中暖房費は熱供給会社が部屋の面積に応じて料金を設定し、3DKの多くが10万円を超える。団地では子供の自立や配偶者の死後、広い間取りに住み続ける高齢者が多く、「独居高齢者ほど減額の影響を大きく受けている」(札幌市)という。