京都府宇治市の職員が、生活保護を申請した母子世帯の女性に対し、異性と生活することを禁止したり、妊娠出産した場合は生活保護に頼らないことを誓わせたりする誓約書に署名させていたことが2012年3月13日に分かりました。
この30代男性職員のケースワーカーは生活保護の申請者に対し、
「妊娠・出産した場合は、生活保護を打ち切る」
「母子世帯には異性と生活することを禁じる」
「生活保護費削減のため、子どもの養育費を獲得する」
などを約束させる誓約書に署名させていたのです。
そのほかに、病気である事などは生活保護を支給する判定材料の一つにすぎないのに、精神疾患や傷病が確認されない場合は支給打ち切りを受け入れることという、間違ったことまで誓約書に入れています。
また、再支給や治療費について生活保護では「認められない」という、これも明らかに誤りの確認も入れてしまっているのです。
さらには
「書類の不備が複数回発生した場合には自己責任なので、廃止を踏まえた処分は貴職に一任する」
などという項目まであります。それを援助するのがあなたの仕事でしょう。何様のつもりか。
生活保護「改革」ここが焦点だ! [単行本] あけび書房
尾藤 廣喜 (著), 吉永 純 (著), 小久保 哲郎 (著), 生活保護問題対策全国会議 (監修)
上の本にあるように、生活保護は「お上からお情けで頂くもの」ではありません。
生存権という憲法25条に規定された基本的人権の具体的な現れであり、れっきとした権利です。働けているときには生活保護の財源となる各種税金を納めているのですから、当然のことでしょう。
生活保護を受けているからといって、私的なことに口を出されるいわれはありません。
このケースワーカーが作った誓約書には、
「受給中はぜいたくや無駄遣いをせず、社会的モラルを守り、節度ある生活をすることを誓う」
などという項目もありました。
これについては、生活保護を受けているのだから、神妙に生きるのは当然だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、生活保護を受けているのは権利を行使しているだけですからね。犯罪者が更生のために罰を受けているわけじゃないんですから、こんな過度の私生活への干渉は許されません。
さらに、この職員が作った誓約書には外国籍の申請者を想定して
「日本語を理解しないのは自己責任。日本語がわからないという理由で仕事が見つからないなどの言い逃れは認められない」
と誓わせる記述まであったということです。
そもそも、外国籍の人が生活保護を受給できることに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、彼らから所得税も消費税も相続税も、およそ税金という税金は取っているわけです。
それなのに社会福祉だけは受けさせないなんて言う、やらずぼったくりが国家に許されるわけがないのです。
上の本にあるように、そもそも、生存権は、動物として生きられる最低限度の生活を保障したものではありません。人間の尊厳を保つことのできる「健康で文化的な」最低限度の生活を保障したものです。だからこそ、国籍に関係なく、人間として保障されるのです。
生活保護の不正受給を防ぐために、現金ではなく、現物支給にすべきだなどという物凄いことを言う人が時々います。住むところも食べるものも着るものも国家が支給するという考えです。
しかし、考えてもみてください。
皆さんが少年少女だったころ。親からお小遣いをもらってその範囲内でなら自由に自分の買いたい物を買えて、好きなことに使えるのと、こづかいなしで全部親からのお仕着せで、なにもかも親が選択して与えてくるような家庭に育っていたら、その不自由さ、窮屈さはいかばかりのものでしょうか。
私ならグレてやる。
下の本にあるように、人間の尊厳は、自分のことは自分で決められる自己決定権につながります。選択肢が極度に狭められた自由のない生活に、人らしく生きる尊厳などあり得ないのです。
権利としての生活保護法―その理念と実務 [単行本]
森川 清 (著) あけび書房
女性の申請者には異性と一緒に暮らすことや妊娠したり出産する女性としての当然の要求を奪い、外国籍の人には言葉の問題で就職できないと言ってはならないと決めつけ、小さく縮こまって生きよと迫るケースワーカー。
しかし、これは彼個人の資質の問題だけではありません。
厚労省は、下の本にある「北九州方式」と言って、生活保護申請に来た市民を、申請させさえしないで窓口で帰してしまい、生活保護申請数を少なく見せ、却下数を少なくするというとんでもない方式を編み出して、各地に普及させました。
このことは北九州市で餓死者が出たことで発覚しましたが、今年になっても札幌で何度も生活保護の相談に行っていた姉妹が自室で二人とも死体で発見されるという事件が起きました。
今回の事件は、このような人権無視の行政の生活保護行政に根本原因があります。
さらに、生活保護者数抑制の行政の方針に協力して、わずか0・3%しかない不正受給(1000人のうち997人は問題のない受給者)をことさら大きくとりあげるマスメディアと、生存権をどうしても権利と感じられない国民の側にも問題があるのだと、私は考えています。
姉は病死 妹は凍死 生活保護申請も出来ずに逝った姉妹 生活保護に関する3つの誤解
生活保護「ヤミの北九州方式」を糾す―国のモデルとしての棄民政策
1度や2度の失敗は誰にでもある。その時もう一度立ち上がれるように支え合うのが社会福祉の制度。
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宇治市が生活保護申請で誓約書 妊娠・異性同居なら打ち切り
京都新聞 2012年3月13日
京都府宇治市が生活保護の申請者に対し、母子世帯には異性と生活することを禁じたり、妊娠出産した場合は生活保護打ち切りを強いる誓約 書に、署名させていたことが、12日分かった。市は不適切な内容であることを認め、関係者に謝罪するとした。生活保護制度に詳しい弁護士は「生活の自己決 定権に不当に踏み込んでおり、人間らしい生活を奪う人権侵害」と批判している。
■私生活に踏み込む
市によると、誓約書は3 月、相談にきた女性に対し、生活支援課の30代の男性ケースワーカーが署名を要求した。約束を守れないと保護打ち切りの判断を担当者に一任するとの趣旨 で、「生活保護費削減のため、子供の養育費を獲得することを誓います」などと私生活に踏み込んだ約束を強いる内容。
再支給や治療費につい て「認められない」との誤った説明を確認させたり、市が相談記録を他機関に提出することを強いているほか、外国籍の人らに「日本語を話せないのは自己責 任。日本語が分からないから仕事が見つからないなどの言い逃れは認められない」との偏見のある記載もある。
市によると、誓約書は男性ケースワーカーが個人的に作成し、署名させたケースは少なくとも今年2件確認できたという。
「反貧困ネットワーク京都」事務局長の舟木浩弁護士は「行政が保護廃止をちらつかせて脅し、生存権を侵害するひどい内容。生活保護の利用者を厄介者と決めつける蔑視がある」と話している。
生活保護法の実施要領には「申請権の侵害を疑われるような行為は慎むこと」と定められている。
西村公男宇治市生活支援課長は「不適切な内容で、誓約書に効力はない。関係者に謝罪するとともに、職員には人権尊重と市民の気持ちに配慮した業務徹底を指導したい」と話している。
【 2012年03月13日 08時44分 】
「普通の人」は、老後や「何かあったとき」のために、
買いたいものややりたいこと、言いたいこと等、様々な我慢して、
身内はもちろん他人と付き合い、そして、せっせと預貯金しています。
そんな当然のことをしていても、身寄りも生活費もなく健康状態も良好でない人が生活保護を受給するのは、
当然のことだと思います。
しかし、そんな人たちに限って、生活保護など受給したくない、とか、
受給したとしても、パチンコ等のギャンブルは当然しないですし、
無計画な妊娠などしません。
隠れて車を運転したり、喫茶店でお茶さえ飲みません。
保護受給者の多くは、私利私欲のために、その我慢や預貯金ができなかった人がほとんどです。
生活保護を受給するのに、過去どのような人生を歩んできたか、というのは条件にはありません。
「現状はどうか」というだけです。
週に一回、ハローワークへ行き、胃潰瘍やヘルニアの意見書をもらい、
それだけで、「生存権」を盾に、
「朝からパチンコ三昧」「母子家庭のはずなのになぜか男の影がある」
(通常、ケースワーカーが訪問するのは平日日中です。ほぼ多くはこの時間に家庭訪問しても
男は仕事もしくはパチンコ等にいっているので在宅の可能性は少ないです。
ですので、男が転がり込んでいる、または援助をしてもらっていたとしても、
実態をつかむのは困難です。ましてやタンス貯金の有無の確認など不可能です。)
「近所からのクレームが多い」ような受給者がほとんどの中、
市町村のケースワーカーの気持ちもわからなくはありません。
納税をしている市民目線でみれば、このお金でパチンコされたり、宝飾品購入されたり、借金返済にあてられたら
「?」だと思います。
「受給中はぜいたくや無駄遣いをせず、社会的モラルを守り、節度ある生活をすることを誓う」
など当たり前のことではないでしょうか。
これができていないから、保護受給をしているのであり、
その「更正」の手助けをしてあげるのがケースワーカーではないでしょうか?
保護受給者全員に様々な誓約書を書かせていたわけではないと思いますし、
よっぽど酷い受給者だったと思います。
それをあたかも、全国の市町村窓口で受給者全員に生存権を無視した誓約書を書かされていると、
取られかねない表現だと、
現場窓口で一生懸命仕事をしている全国のケースワーカーが哀れでなりません。
机上の読書と受給者の意見だけでなく、
多くのケースワーカーからの生活保護事務の現状を理解したうえでの
意見を楽しみにしています。
ただアメリカではフードクーポンといって無駄遣いしないような食券制度があります。
生活保護を受けているのに携帯代が1万以上とかパチンコとか、そうした批判を避けるために作ったのかもしれませんね。
ただどこまでが文化的(人間的)で、どこからが贅沢かの基準を決めるのは難しいので、最終的には現物支給に近い形が落としどころになるのではないかと思います。
『生存権』は日本国憲法第25条だけでなく、国際人権規約自由権規約でも保証されている最も基本的な人権です。しかもこの生存権は非常事態や武力紛争にも違反を許されない権利です。さらに、到達可能な最高水準の健康や文化的権利についても『外国人に一定の制約を設けること』ができるのは発展途上国だけです。私が思うに『国民が生存権や生活保護を権利として受け入れられない』のは国際人権諸条約に対する無知であると思います。さらに働く人の人間らしい労働(ディセント・ワーク)国際労働条約についても労働時間、有給休暇やパートタイムに関する条約だけでなく、特に重大な条約として世界160カ国以上が批准している強制労働廃止(105号)や差別待遇禁止(第111条)さえ批准されていません。これはいったいどういうことでしょう!こうした非人間的な労働環境下で、社会的弱者や生活保護受給者に対する、汚名やヘイトスピーチが続出するのだと思います。さらに最近『殺人を犯していけないのは、法律で決まっているから。』という意見まで耳にするようになりました。一体いつから人格や人間性の尊厳の理解できない国民性が形成されるようになったのでしょうか。
まず早急に必要なのは、ウィーン宣言で再確認された全ての社会や教育現場での国際人権法尊重に関する人権教育でしょう。それこそが障害者権利条約批准や貧困削減の第一歩となるでしょう。
生活保護を受給すると自動車は絶対利用できないし、持病以外の病気を発症しても自由に病院にすらいけない。そもそも保険適用外の医療まであるくらいですから。以前『働いたら負け』という言葉を聞きましたが、実際は『働けなくなったら負け』でしょう。
『現物支給』云々については、今のジンバフエの様に貨幣の価値が大暴落(超インフレ)すれば効果はあるのかもしれません。
会社員でいたときはそれなりの年収もあり、そのままお勤めしていれば、それなりに生活できました。
僕の場合は、自己都合の退職ですが、今チャレンジしている資格試験の合格可能性がかなりNGそうなので(爆)、このまま非正規として生きていくことになりそうな気配です。
なので、
ビョウキ等をすればいつ自分も生活保護の状態になるかわかりませんっ。
人権問題のムズカシイのは、自分以外の問題について、考えを及ぼすということです。
今あなたが正社員として生活保護の心配がない場合でも、自分がそういう立場にいたらどうだろうか!?と想像力を働かせることができるかどうか…
伴走者の立場で考えることができるかどうか!?
そこから考えていかないと、視点がズレてしまいます。
法律という学問がオトナの学問であるということの意味がやっとわかってきた最近です(微笑)
人権問題について考え、それを表現しようとすると自分の浅さがよくわかるので、もっと深い洞察ができるようにならなきゃと思うのです
わたしの遭遇した「間」扱いを足して、拙ブログ「千恵子@詠む」に引用させていただきました。
ありがとうございました。
だったら、そんな部署と人間、まとめてなくしてしまえ、と思ってしまいます。橋下氏みたいな文化大革命万歳野郎が出てくる一因、かと思っちゃったりもします。
生活保護、歳費より、預貯金にまわる分がほとんどないだけ、一般国民のためにもなります。担当者をクビにして、審査をゆるくしましょう。自治体一つ、一人クビにして、2~6件ふやしましょう。
本人はどう考えて作成し、
生活保護を申請しに来た女性に制約書を書かせたのか、
どういう根拠でその誓約書を作成したのかを聞いてみたいですね。
また、
その誓約書が違法であり効力の無い事を認識していたのかどうか、
無効である事を認識してそれをやったのなら
どういう動機で相手に無効な誓約書を書かせたのか、
自分の立場がそれに値する権限を持っていると思っていたのかどうかについても、
聞いてみたいですね。
何と答えるか。
ところで、
最近「新宿ホームレス生活保護訴訟」なる取消訴訟の判例をフルで読みました。
ホームレスの方が生活保護の申請をしたら、
行政側が生活保護法4条の保護要件の意義について、「真摯な努力をしているか否か」というハードルを付け加えて、申請を却下したというものでした。
条文では「利用し得る能力を、その最低限度の生活の維持のために活用すること」とあるのみで、どう読みこんでも「真摯な努力」なる解釈はできません(苦笑)
今日の読売新聞では「生活保護の不正受給」なる問題の記事がありました。
が、
一方では、ホームレスの方でさえ申請を却下されてしまう現実があるんですよね~
要するに何がしたかったか?というと「男をつれこんでその男のために保護費を使う」
のが問題なわけで、おつき合いするならちゃんと結婚してくださいということです。
生活保護の女性に近づいてくる男はヤクザとかろくでなしが多いので
わざと結婚しないで、世帯を2つにわけて保護費をもらう人たちもいるんです。
ケースワーカーはそういう連中を見ているのでそれの予防線でしょう。
誓約書を書かせたのは行き過ぎだし内容もアレですが、やってることはただしいです。
もっとも「生活保護でも結婚せず、男とばんばか子作りしてもいい」という考えでしたらその限りではないですけどね。
さも人権問題かのように取り上げるのは、問題の論点を見誤っています。