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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

「いのちの砦」訴訟の熊本地裁判決で原告の生活保護受給者らが完全勝利!安倍政権による生活保護費削減は「専門的知見に基づく適切な分析や検討を怠った」もので、厚労大臣の裁量権を濫用しており違法!

2022年05月28日 | 生活保護と生存権

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 安倍政権は民主党政権を打倒するための2012年12月の総選挙で、当時の生活保護たたきの風潮を作り上げ、それに乗っかって生活保護は年間約670億円の削減を打ち出し、世帯ごとの削減幅は平均6・5%、最大10%に及んだのです。

 それまでも、生活保護費は「健康で文化的な最低限の生活」(憲法25条1項)ギリギリか、むしろ足らないくらいの水準だったのに、それを1割も減らされたら、健康で文化的どころか、生物として命を維持することさえ難しくなってしまいました。

 このように国が生活保護基準額を第二次安倍政権時代の2013年から3年間連続で引き下げたのは、生存権を保障する憲法25条に反するなどとして、生活保護受給者が全国の29都道府県の裁判所で減額決定の取り消しを求めている「いのちの砦」裁判

 

 そのうち、熊本の36人が原告になっている訴訟の判決が2022年5月25日、熊本地裁であり、中辻雄一朗裁判長は厚生労働省の判断の過程や手続きに誤りがあり、引き下げは生活保護法に反しており違法だと判断し、引き下げを取り消す判断を出し、同市など自治体による減額決定を判決で取り消しました。

 この判決は、物価の下落を反映して基準額を引き下げる「デフレ調整」などの決定過程について、専門家が議論する社会保障審議会の部会に厚労相がはからなかったことなどを

「専門的知見に基づく適切な分析や検討を怠った」

と強く批判しています。

 そして、安倍政権による生活保護基準の改定に関わる厚労相の裁量権を逸脱・濫用したものと結論づけたのです。

 

 

 判決は熊本地裁で10件目ですが、同じくこの生活保護費を引き下げを違法とした2021年2月の大阪地裁判決では、原油価格の高騰など特異な物価上昇があった2008年を起点として物価下落を反映させた点などを、合理性や専門的知見との整合性を欠くと指摘していました。

 さらに、熊本地裁判決は、こうした算定が審議会部会などの検討を経ていないことについて、

「外部の視点に全くさらされていない以上、客観性や合理性が担保されているとはいいがたい」

と断じ、安倍政権の政策決定過程の問題にまで言及して生活保護法違反と断定したのが画期的です。

 同じ人権侵害が問題になっている憲法訴訟でも、生存権のような社会権の場合には、裁判所が国の裁量権を広く認め、明白に合理性を欠くでないとなかなか違憲ないし違法判決は出ないのですが、まさに安倍政権によるこの生活保護費削減は、裁判所から見て明らかに不合理だと判断されたわけです。

 

 

 このような当たり前の判決、生活保護問題対策全国会議の代表幹事で、全国生活保護裁判連絡会の代表委員である尾藤廣喜先生に言わせれば「オーソドックスな判決」、を勝ち取るのがなかなか難しいのが今の司法の状態で、

これぞ不当判決!名古屋地裁が、安倍政権の生活保護費引き下げは「国民感情や国の財政事情を踏まえたもの」。基本的人権の保障が財政事情や国民感情で左右されてたまるか!

に書いたように、2020年6月の名古屋地裁判決はなんと

「専門家の検討を経ることを義務づける法令上の根拠は見当たらない」

と言い切り、厚労大臣の判断に客観性など必要ないと言わんばかりの判断をしました。

 また、名古屋地裁判決は

「自民党の政策の影響があった可能性は否定できないが、当時の国民感情や国の財政事情を踏まえた」

とし、生活扶助基準を改定するにあたり、これらの事情を考慮することができることは

「明らかである」

としたんです!

 つまり、自民党都合で生活保護費が削減されても良しとしたわけですから、こんな司法の役割を放棄した判決は前代未聞です。

 
 

 

 裁判所まで安倍政権に忖度したかのような支離滅裂な判決を出しかねない中、今回の熊本地裁は誰が考えてもこうなるだろうというオーソドックスな判決が出てホッとしました。
 
 生活保護費の算定に当たって、

「専門的知見に基づく適切な分析や検討」

がなされることが厚労相の義務であるという当たり前の判決。

 それさえせずに、いわば安倍自民党の生活保護者いじめの意向に沿って、厚労省がやみくもに生活保護費を削減して市民の生存権を侵害した行為は違法だとした今回の判決。

 私たち市民が自分事として噛みしめ、かたや生活困窮者に寄り添い、かたや権力を濫用する政府に異議を申し立てていかなければなりません。

 

生活保護「改革」ここが焦点だ!

尾藤 廣喜吉永 純 | 2011/7/1

 

ここまで進んだ! 格差と貧困

唐鎌 直義尾藤 廣喜 | 2016/4/6
 
 
 
 

 

 

民主党政権が成立して野に下った時の自民党は酷くて、この生活保護者叩きを梃子に浮かび上がろうというゲスな戦略も取ったんですよ。

それが安倍政権が成立するときの総選挙の公約にもなり、実際に生活保護費を削減したのですから、客観的合理的な理由や基準があっての削減では全くないのは誰の目にも明らか。

それでもなかなか裁判では勝てないんですから、まず選挙の段階=民主政の過程で、自公政権を選んじゃダメなんです。

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生活保護費が平成25年から段階的に引き下げられたことについて、熊本県の受給者が最低限度の生活を保障した憲法に違反するなどと訴えた裁判で、熊本地方裁判所は厚生労働省の判断の過程や手続きに誤りがあり、引き下げは違法だと判断し、取り消す判決を言い渡しました。

生活保護費のうち、食費などの生活費部分の基準額について、国は、一般の低所得世帯の支出水準や物価の下落を反映する方法で、平成25年から27年にかけて最大で10%引き下げました。

これについて熊本県内の受給者36人は「最低限度の生活を保障した憲法に違反する」などとして、取り消しを求める訴えを起こし、裁判では国が基準額を算定した際の手法や手続きに問題があったかどうかが争点となりました。

25日の判決で、熊本地方裁判所の中辻雄一朗 裁判長は「基準額の決定には高度の専門技術的な考察とそれに基づく政策的判断が必要だ」と指摘しました。

そのうえで、今回の引き下げでは、初めて用いられる指標があったにもかかわらず、専門家の部会での十分な議論を経ていなかった点などを挙げ「厚生労働省の判断の過程や手続きは統計などの客観的数値との関連性や専門家の知見などとの整合性を欠いている点で誤りがあり、裁量権を逸脱している」として引き下げを違法と判断し、取り消しました。

原告の弁護団によりますと全国29の裁判所で起こされた同様の集団訴訟の判決は今回が10件目で、原告の訴えを認め、引き下げを取り消したのは去年2月の大阪地裁に続き2件目です。

弁護団の事務局長「重い判断なので早く判決を確定させたい」

原告らは記者会見を開き、弁護団の事務局長を務める阿部広美 弁護士は「受給世帯の生活実態に基づいた正当で一歩踏み込んだ判断が出された」と今回の判決を評価しました。
そのうえで「長い間たたかってきた原告の努力が報われた重い判断なので早く判決を確定させたい」と述べ、控訴しないよう求める考えを示しました。

また、熊本市に住む原告の80歳の男性は「勝訴を聞いたときは半信半疑だった。病気で働けなくなり生活保護を受給しているが月に1万4000円引き下げられ、苦しい状態が続いていたので今回の判決はうれしい」と話していました。

熊本市「国と協議して控訴するか検討」

36人の原告のうち、最も多い27人が生活保護を受給し、裁判で被告の立場の熊本市は「判決文を読んで精査したうえで、国と協議して控訴するか検討したい」とコメントしています。
 
 
 
 

5月25日、熊本地裁で全国2例目の原告勝訴判決が言い渡されました!(判決要旨・全文・弁護団声明を掲載しています)

2022.5.25いのちのとりで裁判全国アクション

 

2022年5月25日、熊本地裁において、保護費の減額処分の取消しを命じる勝訴判決が言い渡されました。原告勝訴判決は、2021年2月22日の大阪地裁判決に次ぎ、全国2例目となります。

いのちのとりで裁判全国アクション

 

熊本地裁判決は、大阪地裁判決と同様に、特異な物価上昇が起こった平成20年を起点とし、生活扶助相当CPIという独自の計算により被保護世帯の消費実態とはかけ離れた物価下落率を算定した「デフレ調整」の違法性を認めました。

さらに熊本地裁判決は、これにとどまらず、①生活保護基準部会が検証した「ゆがみ調整」による数値を増額分も含めて独断で2分の1としたこと、②そもそも独断で「ゆがみ調整」に加えて「デフレ調整」を併せ行ったことも違法であると認めた点において、踏み込んだ内容となっています。

「生活保護基準が国民の生存権を保障した憲法25条1項の趣旨を具体化した重要なものであること」をふまえて裁判所の審査が行われるべきとする判決は、上記の諸点が、生活保護基準部会等の専門的検討を経ていないことを直截に問題視しており、今後の同種訴訟に与える影響は大きいと考えられます。

いのちのとりで裁判全国アクション

 

判決後、報告集会がハイブリッド方式で行われ、地元や全国の原告や支援者らと喜びを分かち合いました。

いのちのとりで裁判全国アクション

 

弁護団声明

声 明


2022(令和4)年5月25日ストップ!生活保護基準引下げ行政処分取消請求訴訟原告団ストップ!生活保護基準引下げ行政処分取消請求訴訟弁護団いのちのとりで裁判全国アクション生活保護引き下げにNO!全国争訟ネット本日、熊本地方裁判所民事第3部(中辻 雄一朗裁判長)は、ストップ!生活保護基準引下げ行政処分取消請求事件において、保護費引下げ処分を取り消すという原告らの請求を認容する判決を言い渡した。

本訴訟は、熊本県内の生活保護利用者49名(提訴時)が、熊本県及び各自治体を被告として、2013年8月に行われた生活保護基準の引下げを理由とする保護変更決定処分(生活保護費引下げ)の取消を求めた裁判である。全国29地裁で提起された同種訴訟では、生活保護基準引下処分の取消しを認容した判決は、2021年2月22日の大阪地裁判決に続き2件目である。
 
本判決では、ゆがみ調整について、生活保護基準部会による検証結果を増額分についても一律に2分の1にした際に専門的知見に基づく適切な分析及び検討を怠ったとして、厚生労働大臣の判断過程及び手続に過誤欠落があると判断した。

さらに、デフレ調整についても、特異な物価上昇が起こった平成20年を起点としたこと、生活扶助相当CPIという独自の計算により、被保護世帯の消費の実態とはかけ離れた物価下落率を算定したことについても、専門的知見に基づく適切な分析及び検証を行うことが必要であり、これを経ずになされたデフレ調整を行った厚生労働大臣の判断過程及び手続に過誤欠落があると判断した。

本判決は、原告らの置かれた厳しい生活実態を真摯に受け止め、国が行った生活保護基準引下げを問題とし、裁量逸脱を認めた。健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を具体的に保障する勝訴判決である。本件各引下げ処分について、厚生労働大臣の裁量の逸脱・濫用があると認定したことは、裁判所が厚生労働大臣の恣意的な判断を許さない態度を示したものであり、本件のみならず今後の保護基準の引下げについても一定の制限を課したものとして、極めて重要な意味を持つものである。
 
生活保護制度は他の諸制度や諸施策と連動ており、保護基準はナショナルミニマム(国民的最低限)として生活全般に極めて重大な影響を及ぼす。格差と貧困が拡大固定化する中で、全世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の拡大は、現在の社会保障制度の脆弱さを浮き彫りにするとともに、最後のセフティネットとしての生活保護の重要性をも明らかにした。
 
私たちは、国に対し、本判決の意義を重く受け止め、控訴せず本判決を確定させることを求める。加えて、違法に保護費を下げられた生活保護利用者に対して真摯に謝罪し、その健康で文化的な生活を保障するため、2013年引下げ前の生活保護基準に直ちに戻すことを求める。
                                                                                                                                                         以上
 
 
 

生活保護費見直しに専門的知見の必要性指摘 熊本地裁判決

判決後に「勝訴」「違法性認める」と書かれた紙を掲げて喜びにわく原告の支援者ら=熊本市中央区の熊本地裁前で2022年5月25日午後2時3分、野呂賢治撮影

 生活保護費の引き下げを巡る25日の熊本地裁判決は、基準を見直した国の判断過程に過誤や欠落があったことを明確に示した。同種の訴訟では2021年2月の大阪地裁判決に続く違法判断だが、今回は更に踏み込んで違法性を指摘。コロナ禍で生活保護の受給者が増える中、「最後のセーフティーネット」とされる生活保護の見直しには、高度の専門的知見と合理的な判断が必要であることを国に突きつける格好となった。

 生活保護基準は政策的な判断を必要とすることなどから、国に広い裁量権が認められてきた。しかし、熊本地裁判決は今回の引き下げについて、国が専門的知見に基づく検討を怠っていたと判断。根拠の一つが、物価の変動に合わせて基準額を変える「デフレ調整」で、これについては大阪地裁判決も指摘していた。

 更に熊本地裁判決は、生活保護世帯と同レベルの世帯の消費水準を比べて調整する「ゆがみ調整」についても問題視。厚労相が専門部会に諮ることなく、官房副長官との協議で決定された過程を批判した。加えて、二つの調整を合わせた引き下げの影響を検討しなかったことも指弾し、国の全面的な敗訴といえるような判断を下した。

 今回の判決について、あるベテラン民事裁判官は「国の重大な政策決定について判断するには、信頼性が高く客観的なデータに基づいて決められたのかどうかが重視されると、熊本地裁が示した。インパクトのある判決だ」と話す。今回のように、手続き過程や根拠としたデータの信頼性をより厳密に評価する方向となっていけば、原告敗訴の流れが強まっていた同種訴訟の司法判断に影響を与える可能性がある。【近松仁太郎】

 

 

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