臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

川添英一作『流氷記60号・夢徒然』を読む(其のⅠ・改訂版)

2014年08月25日 | ブログ逍遥
 去る8月20日、大阪府高槻市にお住いの歌人・川添英一さんより思い掛けなくも当ブログ宛てにご丁重なるコメントを頂戴した。
 その記すところに拠ると、「個人歌集『流氷記』の60号を刊行したので、私・鳥羽省三の現住所を知りたい」とのことであった。
 早速、川越さん宛てにメールにて、当方の現住所などをお知らせ方々、個人歌集『流氷記』60号の刊行のお祝いを申し上げた次第であるが、それに伴って、この一年間、久しく拝見させて頂いた事の無かった、川添英一さんのホームページを開いてみたところ、『流氷記』60号の全貌を知り得たので、本日よりしばらくの間、「『流氷記60号・夢徒然』を読む」と題して、川添英一さんの最新作の鑑賞に当たらせて頂きますので、作者の川添英一さん並びに本ブログの読者の方々には、宜しくお願い申し上げます。


①  図書室の本積み上げて流氷記束ねて圧縮されし数日
②  バカ犬は吠えてばかりと教えればやや大人しくなる生徒あり
③  聞き耳を立てては上司に悪く言うこの鼻糞のような人あり
④  本当につまらぬ人を気に留めて悩む自分が馬鹿らしくなる
⑤  なぜこうもつまらぬ人が限られた残り時間を邪魔ばかりする
⑥  世間とは外れた見方ばかりする我こそつまらぬ人かもしれぬ
⑦  時折は触らぬ神にたたりなき用心もして今日も暮れゆく

 上掲の七首は、歌人・川添英一さんの中学校教師としての生活に取材した作品である。
 私は、川添英一さんが既に定年退職なさり、悠々自適の生活を送って居られるとばかり思っていたので、前述の川越さん宛てのメールの文面に於いても、「川添様に於かれましては、恐らくは教員生活をご退職なさった事と拝察しますが、如何でありましょうか?」などと記してしまった次第ではありましたが、これらの七首の作品から推して知るに、川添英一さんは未だに大阪府下の中学校にご勤務なさって居られるご様子で、この度の『流氷記』60号の「編集後記」にも、「この四月に茨木市立東雲中学校から南中学校へ転勤。めまぐるしい異動である。一年間で学校を変わるというのは初めての体験だが、その分接する生徒が増えて楽しい面もある。二年生と三年生の二クラスずつ教科を受け持つことになったが生徒も僕も楽しい充実した時間を過ごしている。生徒もみなが集中して僕の話を聞いてくれるので自然成績も良くなり、或るクラスは一回目の定期テスト九十点台が十二人、八十点台が七人でクラスの丁度半分が八十点以上になった。生徒の感想も授業が楽しかったというのが多かったのが嬉しい」と記されている。
 私の感じるところに拠ると、「公立学校に於いては、あまりにも研究熱心、教育熱心、知的レベルが高く、問題意識の高い男性教師は、県教委(市教委)や管理職などから警戒され、嫌悪され、管理職に登用されることが無く、平教員のままに定年退職の日を迎える」という傾向がありますから、定年退職の日を目前にして、未だに教科担任としての仕事に情熱を燃やして居られる、川添英一さんの教師としての日々は、必ずしも満ち足りた日々とは言えないものだろうと、勝手に憶測しているのである。
 前掲の「②・③・④・⑤」の四首は、川添英一さんのそうした満ち足りない日々を覗い知るに充分な作品と思われ、「⑥・⑦」の二首は、そうした苦労の多い立場に立たせられている川添英一さんが、ふと漏らしてしまった溜め息のような趣が感じられる作品である。
 前掲の「①」、即ち「図書室の本積み上げて流氷記束ねて圧縮されし数日」は、この度、ご刊行なさった60号を初めとした、川添英一さんの個人歌集『流氷記』の成り立ちを説明していて、私にとっては真に興味深く、趣き深い一首である。
 一首の意は、「私は、私自身の個人歌集『流氷記』を刊行するに当たって、この数日間、勤務校の図書室の分厚い本を、件の歌集の上に幾冊も積み上げて、正しく折り目が付くように圧縮しているのである」といったところでありましょうが、このような難しい手順を経て仕立て上げられた中の一冊が、川添英一さんがお住まいの高槻市の郵便ポストに投函されて、はるばると我が家の郵便受けまで運ばれて来るのでありましょうか。
 なお、同歌集には、「三千円歌集は一円でも売れず溶かされてまた紙となりゆく」並びに「目録に高価な歌集並びおり我楽多となる定めも知らず」という、歌人と名乗る他の方々の歌集への皮肉たっぷりな二首も掲載されているのであるが、これらの二首こそは、主宰と称し、選者と称する有象無象の輩に雁字搦めに呪縛された、現在歌壇の歌人たちに対する痛烈な批判とも思われる作品である。

 尚、本日、二日振りに我が家の郵便受けを覗いたところ、川添様からの「クロネコメール便」の封書が入って居りました。
 就きましては、早速開封させていただきましたところ、私にとっては初見の「流氷記」の第五十九号と第六十号が現れ出でましたので、今晩でも拝見させていただきました上で、近日中に「一首評」なども電子メールにて述べさせていただきますので、何卒、宜しくお願い申し上げます。  八月二十五日  鳥羽省三


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。