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私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「百万円と苦虫女」

2008-07-26 19:33:52 | 映画(は行)

2008年度作品。日本映画。
鈴子は短大を卒業して就職もできずに、しかたなくアルバイト生活を送っているどこにでも女の子。どうにかしてこの生活を変えようと考えている中、ひょんなことから事件に巻き込まれてしまう。「百万円貯まったら、この家を出て行きます」と家族に宣言し、百万を貯めるたびに次から次へと引越しをして、1人で生きていく決意をする。
監督は「赤い文化住宅の初子」のタナダユキ。
出演は「ニライカナイからの手紙」以来の主演となる蒼井優。「世界の中心で愛をさけぶ」の森山未來 ら。


この映画を語る上で、蒼井優の魅力を抜きにすることはできない。好きな女優なので、ひいき目もあるかもしれないが、彼女の存在感とナチュラルな演技はとにかく光り輝いており、映画に独自の色合いを添えていたと思う。
たとえば彼女が「好きです」と語るときのこもった感じや緊張感、話がすれちがったりしたときのあいまいな表情、ポツリとこぼす本音などは印象深く、胸にすっと馴染むものがある。こういう場面を見ていると、彼女は本当にいい女優だ、と思う。

蒼井優の演技もあって、主人公の鈴子の魅力も充分に引き出されている。
基本的に鈴子は不器用なのだろう。だがその不器用さもきわめて自然体に見える。たとえば人との距離感がうまく測れない気まずい雰囲気や、「自分から逃げている」と語る感覚は自分にも身に覚えがあるだけに共感性を抱くことができる。

そんな鈴子というキャラは、映画を通して少しだけ成長をする。
弟のエピソードや、好きになった男性との出会いでもって説得力よく撮られているのがわかり、非常に好印象だ。特に弟から勇気をもらったと語るあたりは個人的には好きである。

ただ本音を言うと、森山未來演じる(いままで森山未來はどうでもいい俳優だと思っていたが、今回見てその考えを改めた。非常にいい演技をしている)彼と鈴子の関係がちょっと残念でならなかった。
告白のシーンの甘酸っぱさに大変共感を覚えただけに、ベタなラストであった方が個人的にはうれしかったのだが、まあそれが鈴子の、あるいは監督の選択ならそれも仕方ないだろう。

基本的に地味な作品ではあるが、個人的にはなかなかの良作だと思う。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


出演者の関連作品感想:
・蒼井優出演作
 「男たちの大和/YAMATO」
 「クワイエットルームにようこそ」
 「虹の女神 Rainbow Song」
 「ハチミツとクローバー」
 「フラガール」

「フィクサー」

2008-04-14 21:01:51 | 映画(は行)

2007年度作品。アメリカ映画。
巨大製薬会社有利のうちに解決されようとしていた薬害訴訟。だが製薬会社の弁護を担当する弁護士が、全てを覆す秘密を握ってしまう。彼は良心の呵責に苛まれて、事実の暴露を決意。この動きを察知した事務所は、「フィクサー」=マイケル・クレイトンにもみ消しを依頼する。
監督はこれが初監督作となるジェイソン・ボーンシリーズの脚本家トニー・ギルロイ。
出演は「オーシャンズ11」のジョージ・クルーニー、「フル・モンティ」のトム・ウィルキンソン ら。


前半から中盤にかけてはストーリーが幾分わかりにくく感じられた。僕個人の理解能力もあるのだろうが、物事が無駄に複雑となっているように見えて、少し話に乗れなかったきらいがある。
重厚なテーマを扱うわりに地味でテンポが悪かったというのもあるが、そういうわけでとにかく途中までは退屈な印象すら受けた。

しかしそれも後半になってから盛り返す。
ジョージ・クルーニー演じるマイケルは金のために友人の意志を見殺しにすることに決めるが、最後は個人的な復讐心と正義感で、倫理的な行動を取る。そのシーンがすばらしい。特にティルダ・スウィントン演じる薬害会社の重役との交渉シーンはなかなかスリリングだ。

またこの映画では俳優陣の存在感が光っていた。
特にジョージ・クルーニーがすばらしい。最後の方で、友人の意志を裏切り、組織になびいてしまった後で見せる悲哀と苦痛に満ちた表情が心に残る。
またティルダ・スウィントンの少し神経質な女性像もよくつくりこまれていて、引き込まれるものがあった。

欠点が多い作品ではあるが、ラストの方の展開に好感が持てたことと、俳優陣に助けられたこともあり、総じての印象はプラスマイナス0といったところである。

評価:★★★(満点は★★★★★)


製作者・出演者の関連作品感想:
・トニー・ギルロイ脚本作
 「ボーン・アルティメイタム」
・ジョージ・クルーニー監督作・出演作
 「オーシャンズ13」
 「グッドナイト&グッドラック」(監督・出演作)
 「シリアナ」
・トム・ウィルキンソン出演作
 「エミリー・ローズ」
 「理想の女」
・ティルダ・スウィントン出演作
 「サムサッカー」
 「ナルニア国物語 第一章 ライオンと魔女」

「バンテージ・ポイント」

2008-03-09 16:46:10 | 映画(は行)

2008年度作品。アメリカ映画。
スペイン、サラマンカ。シークレットサービスのバーンズは同僚のテイラーと共にテロ撲滅サミットに出席するアシュトン米大統領の警護にあたっていた。ところが、広場で大群衆を前にした大統領に、1発の銃弾が――。鍵を握る目撃者は8人。しかし彼らがそれぞれ異なる地点・立場から見たものは食い違っていた。
監督はピート・トラヴィス。
出演は「デイ・アフター・トゥモロウ」のデニス・クエイド。「LOST」のマシュー・フォックス ら。


非常にスリリングな作品だ。
大統領狙撃という衝撃の事態を多視点で描くことで、事件の全貌を徐々に、複合的かつ立体的に浮かび上がらせているのが興味深い。
そのサスペンスフルなトーンのおかげで最後まで集中力を切らすことなく、ドキドキとしながら楽しむことができた。

ラストのカーチェイスといい、テンポの速い展開といい、エンタテイメントにとことん徹しているのが伝わってきて、非常に好感が持てる。
綿密に組み立てられた構成と共に、ほれぼれするばかりだ。

もちろんそういう作品にありがちなことだが、つっこみどころもある。
最大のつっこみどころは別に「大統領」を狙撃する必要などなかったというところだろう。

テロリストはシークレットサービスのことを把握し、周到な計画を練っているが、大統領殺害が目的ではないのなら、広場で「大統領」を狙撃をする必然性などないはずではないか? それは警戒態勢を強化させるだけで、無駄にリスクを生んでしまう。
実際、広場で撃たずに目的だけを遂行していたら、テロリストの計画は成功していたと思う。
もっともそれをつっこんだら映画自体が成立しないわけだが。

だがそういった細かいことさえ考えなければ、単純におもしろいことは請け合いだ。エンタメなんてそれで充分なのである。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)


出演者の関連作品感想
・マシュー・フォックス出演作
 「スモーキン・エース / 暗殺者がいっぱい」
・フォレスト・ウィッテカー出演作
 「ラストキング・オブ・スコットランド」
・ウィリアム・ハート出演作
 「グッド・シェパード」
 「シリアナ」

「ヒトラーの贋札」

2008-02-25 20:54:46 | 映画(は行)

2006年度作品。ドイツ=オーストリア映画。
第二次大戦中のドイツ、ザクセンハウゼン強制収容所。そこに各地の収容所から送られてきたのは世界的贋造犯サリー、印刷技師らの技術者たちだった。彼らに課せられた使命は「完璧な贋ポンド札」を作ること。サリーたちの命を賭けた贋札作りは、成功しつつあったが、それはナチスに資金を与え、戦況を有利にし、収容所にいる家族や恋人を苦しめ続けることを意味していた。
第80回アカデミー賞外国語映画賞受賞作。
監督は「アナトミー」のステファン・ルツォヴィッキー。
出演は「エニグマ奪還」のカール・マルコヴィクス。「青い棘」のアウグスト・ディール ら。


この映画でもっとも印象に残ったのはユダヤ人収容者の卑屈とも取れるおびえた表情だ。
もちろんそれは死と隣りあわせで、圧倒的な暴力の前に置かれた状況という点を考えれば自然なことだが、その表情を見ているとなんとも気分が滅入ってしまう。人間は恐怖を前にすると、そのような態度しか取れないということ、そして人間は他者を容易にそのような立場に追いやれるのだ、といういやな事実をそこから見ることができるからだ。
しかしそれこそ、いまから60年前に実際に行なわれていたことなのだろう。

そのような恐怖を前にして人間は命令に屈服する他なくなる。彼らは単純に生きていたいからだ。
だから同胞を裏切ることになる、と言って、贋札作りに反抗する人間を排除しようと考える流れはきわめてリアルなのだ。
勇敢に正義感を振りかざすことは美しい。しかしそれは生きていたいという思いの前ではきれいごとでしかないのだ。何とも悲しい事実としか言いようがない。

だが贋札作りに従事している人間だって罪悪感がないわけではない。善良な市民なのに贋札作りをしている、というセリフや、解放後に言い訳のように贋札のことを話す姿には人間の後ろめたさが仄見えてくるようではないか。
そこにはどちらが良いか悪いかといった単純な問題を越えたものがある。極限下では人間は状況に流されるしかないのだな、と僕はそれを見ていて思った。

ラストで主人公は散財するように金を使っているが、それは過去を思い出した破れかぶれというよりも、そんな死と隣り合わせにいた贋札チームたちですら実は恵まれていたという後ろ暗さから来るものではないか、という印象を僕は受けた。何ともやるせない人生悲劇である。

筋運びはよく言えば堅実、悪く言えば地味な作品ではあるが、味わい深く、いろいろなことを考えさせてくれる。
今日のアカデミー賞で外国語映画賞を取ったらしいが、まあ有りではないだろうか。なかなか良質な作品といったところだろう。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「ペルセポリス」

2008-01-14 18:50:45 | 映画(は行)

1978年のイラン、9歳のマルジは革命によって王が倒されたと知る。それによって伯父は戻ってきて、世界が変わっていく雰囲気を身を持って実感する。しかし革命は民族主義に取って代わり、宗教的な抑圧が強まっていく。やがてイラクとのあいだに戦争が起こり、マルジと家族が住むテヘランにも戦火が広がっていく。
2007年カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員賞受賞。
監督はマルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー。


イラン革命とその後のイラン・イラク戦争を経験した女性が主人公のアニメーションだ。
そのアニメーションはまるで絵本のようで独特の雰囲気があってきれいだ。
それに戦争などの残酷性が弱めることができているし、幻想的な風景を美しく描き、コミカルな部分も楽しく描くことができており、アニメーションの良さがうまく生かされている。

イランの現代史を詳しく知らなかったので、映画の中ではそのあたりの描写に心を動かされた。特に前半部の革命からイラン・イラク戦争に至る流れは大変おもしろく楽しむことができる。
革命から戦争に至る流れや、アングラで西洋文化が流入していた点、反政府分子の虐殺、女性の抑圧の様子、秘密警察の存在など、知っていた点、知らなかった点を含めていろいろなことを学ぶことができて、個人的には満足だ。

しかし本作の主眼はそういったイラン社会の描写ではなく、イラン出身者である主人公の自己のアイデンティティの模索にあると思われる。
革命によって命を落とした伯父や、インテリ層に属する家族から授かったリベラルな思想により、主人公はイランの抑圧された環境にうまくなじめていない。しかしヨーロッパではイラン人であるということに、ときに羞恥を持ち、浮かれて生きている自分に罪悪感を抱えて生きている。母国でもヨーロッパでも、彼女にはどこにも居場所がないのだ。
ラストで主人公はイランに戻ることなく、ヨーロッパでイラン人の出自を抱えながら生きていくことを選択している。それがどこかビターな余韻を生んでいたような気がする。

前半の革命から戦争に至る物語がおもしろすぎたために、中盤以降のアイデンティティの模索は正直言って失速した感はあるのだが、なかなか見応えのある作品になっていることは確かだ。
アニメと言えば日本のイメージが強いが、なかなかどうしてヨーロッパも優れた作品を生み出している。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

「フランドル」

2007-11-19 17:12:32 | 映画(は行)

2005年度作品。フランス映画。
フランドル地方の村で、若い女のバルブは隣の農場に住むデメステルや、酒場で出会った男と行きずりの関係を重ねる。やがてデメステルは戦場に赴き、そこで多くの罪を重ねる。一方、村に残ったバルブは酒場の男との子供を妊娠し、堕胎をしていた。
監督は「ユマニテ」のブリュノ・デュモン。
出演はアドレイド・ルルー。サミュエル・ボワダン ら。


この映画の主人公のひとりバルブは誰とでも寝る女だ。彼女と寝たことのある隣人のデメステルは彼女に恋愛感情を持っているのは明らかだが、体を重ねる以上の関係にはなっていない。
その彼が戦争に向かうのだが、そこで描かれた戦場シーンには結構残酷なものが多い。
少年兵を射殺するのは戦闘上致し方ないとは言え、村の少女へのレイプや通りがかりの現地人を射殺するシーン、仲間を見殺しにするシーンや生きるために一般の家庭を襲撃するシーンなどは戦争という異常な世界の生々しい現実を突きつけられたようで衝撃的である。
しかもそれを犯しているのが村では素朴な一青年だったというのが悲しい。

そんな罪を重ねながら生き延びて戦場から帰ってきたデメステルを、バルブが責めるシーンがある。
そこでの「見ていたのよ」というセリフといい、戦場での行為と呼応するように、精神科で狂乱する姿といい、女はどこかデメステルと精神的につながったシャーマニズム的な要素があるように見える。
バルブの存在や行動理由はそれまでよくわからずに見ていたのだが、このシーンを見た瞬間、なんとなく映画全体の姿が見えてきたような気がした。

誤解覚悟で、僕の解釈を語るならば、バルブは男たちの汚くて醜いものを受け止める、宗教的な意味合いのシンボルなのではないだろうか、と思った。
性欲を満たすだけの無機質な関係といい、戦場でのシーンと呼応するように苦しむ姿といい、彼女は男の苦痛を共に味わうための同伴者なのかもしれない。ある意味、男にとっては都合がいい解釈かもしれないが、映画の性質上その可能性もあるのではないだろうか。

そういう風に考えると、ラストのふたりが抱き合うシーンは愛の告白というよりも、赦しを請うシーンのように見えてくる。罪を犯してまで生き延びざるをえなかった男が、女に口にしようともしなかった愛を語ることで、初めて苦しみから解放されたのだ、と僕は感じた。

うまく感想を語ることが難しい映画だが、見終わった後に何とはない良さが残るし、幾通りもの解釈が可能なストーリーもおもしろい。それなりに楽しめる作品である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「ボーン・アルティメイタム」

2007-11-12 21:18:10 | 映画(は行)

2007年度作品。アメリカ映画。
記憶を失くした元CIA暗殺者ジェイソン・ボーンは政府の極秘計画トレッド・ストーンを追っていた新聞記者に接触をはかる。しかしその場所にはCIAの追っ手が迫っていた。
ジェイソン・ボーンシリーズ三部作の完結編。
監督はジェイソン・ボーンシリーズのポール・グリーングラス。
出演は「ボーン・アイデンティティ」のマット・デイモン。ジュリア・スタイルズ ら。


本作で目を引くのはやはりスパイ行動を絡めたアクションシーンだ。
冒頭の30分の攻防からすでに心をぎゅっとつかまれてしまう。記者と連絡を取るためにボーンが取る様々な動きには緊迫感が漂っており、敵の目をいかにかいくぐるかに集中した無駄なく、知的な行動に見ているこちらもドキドキしてしまう。

そういったスパイシーンも含めてボーンはどこか超人的だ。
特に最後の方のカーアクションはすごい。というかあそこまでやられるとむしろ笑える。ボーンのすごさはわかるが、最後まで生き残る不死身っぷりにおまえは人間じゃねえよ、とつっこみたくなる。

そういったアクションを持ってくるタイミングも適切なので、映画に対して集中力が途切れることはない。すべてはテンポ良く進み、物語世界を楽しむことができる。
単純に構成が上手いのだろう。そこはさすがポール・グリーングラス。「ユナイテッド93」という多視点の作品を手際よくまとめた監督だけのことはある。

明かされた結末は、前二作の内容の細かい部分を忘れていたし、元々ジェイソン・ボーンシリーズにそこまではまっていなかったので、ふーん、そうなんだ、という程度でしかない。
しかしそれでも映画としては充分に楽しめたし、まちがいなく及第点の作品だ。個人的には満足の一品である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・ポール・グリーングラス監督作
 「ユナイテッド93」
・マット・デイモン出演作
 「オーシャンズ13」
 「グッド・シェパード」
 「シリアナ」
 「ディパーテッド」
・デヴィッド・ストラザーン出演作
 「グッドナイト&グッドラック」

「パンズ・ラビリンス」

2007-10-14 16:24:09 | 映画(は行)

2006年度作品。スペイン=メキシコ映画。
独裁政権に対し、レジスタンスが立ち向かっていた1944年のスペイン、オフェリアは母と共に軍の大尉を努める新しい父の元にやって来た。そこで彼女は妖精と出会い、「あなたは地底の王国のプリンセスの生まれ変わりだ」と告げられる。彼女は王女の地位を手に入れるため、守護神パンが課した試練を乗り越えることになる。
監督は「ヘルボーイ」のギレルモ・デル・トロ。
出演はイバナ・バケロ。セルジ・ロペス ら。


主人公の少女、オフェリアと彼女の母を囲む環境は必ずしも穏やかではない。暴君じみた新しい父親にはなじめないし、住んでいる場所は内乱の真っ只中だ。少女期を生きる環境としては苛酷と言ってもいい。
その環境から逃れるために母親は男にすがることを選択している。もっともあの夫と結婚しても、この先、幸せになれるとも思えないのだが、彼女にとってはそれしか選択肢はなかったのだろう。
そして主人公のオフェリアは、地下の王国というファンタジーの世界を目指すことで、苛酷な現実から逃れようとしている。

そのファンタジー部分の描写はなかなかいい。
妖精やパンのぎこちない動きの描写、それに手に眼を持つ怪物の描写のレベルは高く、その世界観に引き込まれてしまう。若干グロい部分もあるが、それも含めて映像の作り方は凝っている。
そのグロや怪物も登場するファンタジーの世界に立ち向かうオフェリアの姿が印象深い。

しかし彼女の体験するそのファンタジーの世界はどこまでが真実かは疑問だ。
思い返してみるとラストに限らず、これは彼女の空想に過ぎないのではと感じさせるシーンは多い。
しかしたとえそれが空想の産物であろうと、彼女にとって地下の王国の世界は是が非でも必要だったのだろう。そうでなければ、彼女は残酷な世界から自分の心を守ることができなかったのだ。

ラストの黄金に包まれた宮殿のシーンをどう捉えるかは人によって異なる、と思う。
しかしその黄金のイメージは真実と幻想のいずれであろうと、まちがいなく彼女の心に救いをもたらしている。確かにビターな結末で泣きそうになるかもしれないが、少なくとも彼女にとってはハッピーエンドだったと信じたい。
ともかくもダークファンタジーの中でも上位にランクする優れた作品だ。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

「プラネット・テラー in グラインドハウス」

2007-09-23 21:05:45 | 映画(は行)

2007年度作品。アメリカ映画。
テキサスの田舎町で、ある日、謎のウィルスが蔓延。町中の人々がウィルス感染者が増殖し、ゾンビと化してしまう。チェリーは片足に傷を負い病院に担ぎ込まれることに。チェリーの元カレのレイはゾンビたちを倒しながら、チェリーの担ぎこまれた病院に向かう。
監督は「シン・シティ」のロバート・ロドリゲス。
出演は「ハード・キャンディ」のローズ・マッゴーワン。「レディ・イン・ザ・ウォーター」のフレディ・ロドリゲス ら。


「デス・プルーフ」の姉妹編らしく、こちらもいかにもなB級テーストが満載だ。
「プラネット・テラー」の方はゾンビホラーの趣きをたたえた作品となっているが、それが無駄にグロテスクで、スプラッタで、バイオレンスで、不必要なエロがある。そういったある意味、アホくさい部分を前面に出している点は個人的に結構好きだ。しかも最初にわけのわからない予告編を持ってきたり等、遊びが入っているあたりも僕としてはツボである。

ストーリーに関しては、プロットにうねりがあり、盛り上がりもあって、結構楽しめる。基本的につっこみどころは多いが、それをいちいちつっこむだけでも充分におもしろいのが、B級映画のいいところだ。
また脚にマシンガンを埋め込むなどの様式美はマンガチックで、マンガ世代としてはそのかっこ良さには心動かされる。

タランティーノほどの個性はこの作品から感じられないが、映画としては充分に楽しい作品だ、と僕は思う。

評価:★★★(満点は★★★★★)


・グラインドハウスシリーズ感想
 「デス・プルーフ in グラインドハウス」

監督・出演者の関連作品感想
・ローズ・マッゴーワン出演作
 「デス・プルーフ in グラインドハウス」
 「ブラック・ダリア」 
・フレディ・ロドリゲス出演作
 「ボビー」
 「夢駆ける馬ドリーマー」
・ブルース・ウィリス出演作
 「ダイ・ハード4.0」
 「ラッキーナンバー7」

「HERO」

2007-09-09 17:41:55 | 映画(は行)

2007年度作品。日本映画。
2001年に放映された連続ドラマ「HERO」の映画版。
型破りの検事、久利生公平はある殺人事件の裁判を任される。容疑者は自白しており、簡単と思われた事件だが、容疑者が起訴事実を否認し状況は一変する。弁護を行なう大物弁護士の蒲生は冷静な答弁で久利生を苦しめる。
監督は「NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE」の鈴木雅之。
出演は「武士の一分」の木村拓哉。「隠し剣 鬼の爪」の松たか子 ら。


テレビドラマの映画化であり、監督もテレビドラマの演出を手がけている人物だ。
だから当然といえば当然だが、映画の中にはテレビドラマの演出手法やテレビドラマ的なエピソードが多く使われている。
中盤の雨宮の拉致しかり、法廷の傍聴席に検事メンバー全員がつっこむところ、タモリの「何だって?!」と叫ぶタイミング、大物弁護士の中途半端な行動論理、一列になって二人を待つメンバー、ラストシーンとわかりやすすぎて安っぽい演出や造形が目立つ。

別にテレビの演出のすべてが悪いわけでもないし、テレビドラマは好きだが、金を払って見る映画でまで、それをやられると少しだけげんなりしてしまう。もう少し工夫をしてほしかった、というのが率直な思いだ。

しかし映画自体はそれなりにおもしろい。
ところどころに笑いはあるし、エピソードも多く盛り込まれていて退屈することがない。韓国のシーンのように捨てエピソードもあるが、そこそこうまく伏線を張っている。
それに代議士を前に語る久利生の熱い言葉は胸に響くし、その浪花節的な語りにはほろりとさせられる。

何もこれを映画にする必要はない、と言われたら、そうだろうね、としか言いようがないけれど、それでも僕は楽しめたし、不満はあるものの、それも許容範囲内だと思う。
他人に強く薦める気にはなれないが、個人的に楽しむ分だったらありだ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・木村拓哉出演作
 「武士の一分」
・松たか子出演作
 「THE 有頂天ホテル」
 「ブレイブ ストーリー」
・大塚寧々出演作
 「アヒルと鴨のコインロッカー」
 「バッシング」
・小日向文世出演作
 「UDON」
 「それでもボクはやってない」
 「虹の女神 Rainbow Song」

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」

2007-08-07 21:12:12 | 映画(は行)


2007年度作品。イギリス=アメリカ映画。
人気シリーズ5作目。
正当防衛のため、街中で魔法を使ったことから、ハリーはハグワーツを除籍される。ハリーは除籍撤回のため、魔法省で弁明。ヴォルデモートの復活を信じない魔法省はハリーを追求するが、ダンブルドアの助けにより除籍は免れる。しかし魔法省はその後、ハリーやホグワーツの監視を始める。
監督は英TV界出身のデイビッド・イェーツ。
出演はダニエル・ラドクリフ。ルパート・グリント ら。


良くも悪くもいつものハリー・ポッターである。
映像は相変わらずすばらしいのだが、ストーリーの方はいつも通り、詰め込みすぎにより、書き込み不足が目立っている。そのためいくつか気に食わない面が見られた。

たとえば新キャラの扱いなどはそうだ。
初登場の女生徒ルーナは何のために登場したのか、その存在意義がわからない。特に目立った活躍をするわけでもなく、物語に華を添えるような扱いにもなっていない。これは一応テコ入れのつもりなのだろうか。だとしたら見事に失敗している。
それにヘレナ・ボナム=カーターの扱いも意味がわからない。確か、彼女は初登場のはずなのに、結局どういう立ち位置のキャラか、最後までよくわからなかった。有名女優を使っているわりに、最後までよくわからないキャラってのは、すさまじくもったいない。非常に残念な描き方だ。

その他にも書き込み不足が目立つ。
個人的にはシリウス・ブラックのラストの扱いも淡白すぎる気がする。大事なシーンなだけにもう少し丁寧に描いてもらえないと、観客は何の感情移入もできないのではないだろうか。
それにチョウに、誰もフォローを入れてあげなかったのも気になる。チョウも言ってみれば被害者なのだから、アフターケアをするのが作り手の誠意ではないのだろうか。

個人的な印象だが、今回はいつも以上、キャラの扱いがぞんざいになっているという気がした。プロットを進める以上、そういう切り捨ては仕様がないのかもしれないが、もう少しじっくり描いてほしかったと思う。

しかし物語自体はまとまっているし、プロットにうねりがあって飽きさせないつくりになっているため、それなりにおもしろくはあった。そういう意味、不満は残るものの娯楽としては充分に及第点な作品だろう。
この先の展開が気になるという出来でもないが、ここまで来た以上、ハリー・ポッターシリーズには最後まで付き合ってみようと思う。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


ハリー・ポッターシリーズ感想
 「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」

制作者・出演者の関連作品感想:
・レイフ・ファインズ出演作
 「ナイロビの蜂」
・アラン・リックマン出演作
 「パフューム ある人殺しの物語」

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」

2007-07-15 15:18:00 | 映画(は行)


2007年度作品。日本映画。
東京から田舎に戻ってきた姉の澄伽。女優を目指す彼女は自意識過剰でゴーマンな女だった。妹の清深はそんな姉の姿をホラーマンガにして暴露したことがあり、自分が成功しないのはそのせいだと必要以上に妹をいびる。
人気戯曲家にして作家、本谷有希子の同名戯曲を映画化。ブラックユーモアに満ちた家族の愛憎劇。
監督はCM界で活躍しこれが長編デビューとなる吉田大八。
出演は「キューティ・ハニー」の佐藤江梨子。「蝉しぐれ」の佐津川愛美 ら。


本作はアクの強いキャラが織り成すドラマである。
登場するどのキャラも個性は際立っており、ともかくもインパクトが強い。

たとえば主人公の澄伽。彼女は自分を特別だと思い込み、失敗しているのは他人のせいだと責任転嫁する、見ていて不快になるくらい性格ブスの女だ。
その主人公の役に佐藤江梨子がよくはまっている。彼女が演じると、澄伽が、というよりも、佐藤江梨子そのものがどうしようもなく、性格ブスで、演技力もない高慢なだけの女に見えてしまうから見事と言うほかない。言い方は意地悪だが、一応誉め言葉だ。

他に登場する家族のキャラも独特だ。
澄伽に過剰なまでに気を使う兄。ひたすら忍従しているように見えるが、さすがこの姉の、と思わせる妹。

そして何と言ってもすばらしいのは、生真面目でいい人であるが故、アクの強い家族に翻弄される嫂であろう。
この嫂を演じる永作博美がいい芝居をしている。夫に殴られて床を転がったり、のどにご飯を詰まらせてしゃべりも変になる。そのコミカルさが最高にいい。「空中庭園」のときも笑ってしまったし、永作はコメディエンヌの素質が相当高いのかもしれない。
それに、アクが強く不快にすら思えるキャラたちの中にあって、彼女ののほほんとした雰囲気がこの映画に穏やかな空気を与えてくれたのは注目に値する。

ドラマ的な面を見ると、正直言って若干物足りない。いやいやありえないから、とつっこみたくなる部分もあったせいだろうか、それほど心には響いてこないのだ。仲直りを予感させるラストのバスシーンは悪くはないと思うのだが、悪くないという以上にはなれていない。
だが、そんなプロットの物足りなさも、結局、登場キャラのおかげで楽しく見ることができる。
そういう意味、本作は徹頭徹尾キャラ映画であり、それ以上ではありえないというのが僕の印象である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・佐藤江梨子出演作
 「日本沈没」
・永作博美出演作
 「空中庭園」
 「好きだ、」

「ボルベール<帰郷>」

2007-07-01 18:01:51 | 映画(は行)


2006年度作品。スペイン映画。
ある日、父にレイプされそうになったライムンダの娘パウラは、勢いで父を刺殺してしまう。ライムンダは冷蔵庫に夫の死体をかくして娘をかばうことに。同じころ、ライムンダの姉が火事で死んだはずの母親と再会をする。
監督は「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドバル。
出演は「オール・アバウト・マイ・マザー」のペネロペ・クルス。カルメン・マウラ ら。


本作で印象に残ったのは俳優たちの存在感だ。
顔も胸の谷間もゴージャスなペネロペ・クルスはもちろんのこと、母、姉、娘、そして隣人役の女優陣が実にいい演技をしている。
基本的にここに出てくる女性たちは男性関係では不幸な面が多いのだけど、そういうものを越えた、生き生きとしたたくましさを画面から感じることができた。それを表現しえた女優たちの演技力に素直に感嘆するばかりである。
去年のカンヌでこの映画の女優陣に主演女優賞が贈られたと聞くが(全員という辺りが何とも粋!)、それも納得の出来だ。
この女優陣の演技を味わうだけでも本作は見る価値があるだろう。

物語はミステリアスな手法で組み立てられている。しかしそれをシリアスに描くのではなく、とぼけた、ときに笑いを誘うような流れでつむぎ出しているのが印象深い。
だが話の核となる母娘の和解には、正直それほど心は動かされなかった。せいぜい伏線の回収がおもしろかったという程度の感想しか心に浮かばなかったのが残念という他ない。
一応カンヌの脚本賞を取っているが、女優たちの演技に比べると、脚本からは観客を組み伏せる力を感じることはできなかった。僕が男ということも関係しているのかもしれない。

そういうわけでトータル的に不満は残る。だが本作が良作であることはまちがいないだろう。一見の価値あり、だ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「プレステージ」

2007-06-10 17:49:37 | 映画(は行)


2006年度作品。アメリカ=イギリス映画。
19世紀末のロンドン、二人の奇術師アンジャーとボーデンは互いに腕を競い合っていた。そんなときアンジャーの恋人が脱出トリックの事故で死亡する。その原因がボーデンにあると思ったアンジャーは彼を憎み、二人の確執は激しくなる。
監督は「メメント」のクリストファー・ノーラン。
出演は「X-MEN」のヒュー・ジャックマン。「バットマン・ビギンズ」のクリスチャン・ベール ら。


冒頭にこの作品の結末を誰にも話さないでください、と掲げるだけあり、どんでん返しの結末が待っている。
個人的には、その結末に意外性を感じたというより、何だよそれ、って思ったというのが正直なところだ。
だが、その結末に不満を持たなかったのは見せ方が単純にうまかったからだろうと思う。伏線をしっかり張って見せていく形は実に様になっているのだ。
たとえば本作に実にトンデモな設定もあり、若干引いてしまう部分もあるのだが、そのトンデモ設定をうまく生かし、落ちに利用するのは実にうまい。
フェアな設定で、何とか観客をだましてやろうという監督の野心も伝わってくる。

マジックとマジシャンというガジェット、過去のロンドンの舞台設定も良くて、雰囲気もいい。
いくつか不満はあるものの、エンタメとしては充分楽しむことができる、そんな作品である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・クリスチャン・ベール出演作
 「ニュー・ワールド」
・スカーレット・ヨハンソン出演作
 「ブラック・ダリア」
 「マッチポイント」
 「理想の女」
・マイケル・ケイン出演作
 「トゥモロー・ワールド」

「バベル」

2007-05-11 20:57:18 | 映画(は行)


2006年度作品。フランス=アメリカ=メキシコ映画。
一発の銃弾がモロッコで観光バスに乗っていた一人のアメリカ人女性の肩を撃ち抜く。モロッコ、アメリカ、メキシコ、日本を舞台に、その事件から巻き起こるそれぞれの人間模様を描いた群像劇。
第59回カンヌ国際映画祭最優秀監督賞受賞。
監督は「アモーレス・ペロス」「21グラム」のアレハンドロ・ゴンサレス・イリャニトゥ。
出演は「セブン」「トロイ」のブラッド・ピット。「エリザベス」のケイト・ブランシェット ら。


バベルの塔建設がきっかけで世界の言語が分かれ、互いの意思疎通ができなくなったという聖書の逸話をメタファーとして掲げた作品である。
メタファーからわかることだが、この映画を一言で語るならば、愛のすれ違いを描いた作品と言えるだろう。
映画の中で悪いことなどしていない、愚かなことをしただけだ、といったニュアンスのセリフをメキシコ人の家政婦が口にしているが、そのセリフが映画全体を象徴しているように思う。その愚かしい、言うなれば、強情な意地から、夫婦や親子や兄弟の愛のすれ違いが生まれているという印象を受けたからだ。

たとえばブラッド・ピットらアメリカ人夫婦の場合、
赤ん坊だった息子の死をきっかけに溝が入った二人がバスの中で手を握るシーンがあるのだが、そのシーンの二人の手の握り方が、二人の関係性を象徴していて、切なくのっけから引き込まれてしまった。
その後、妻が銃で撃たれてからの展開がやるせないが、同時に感動的でもある。
自分の身を守るために(理解できなくはないけれど)バスの中の観光客は夫婦を見捨て、異国の辺鄙な土地で二人を置き去りにしていく。しかしそんな他人の冷たい仕打ちがあるからこそ、夫婦という小さな単位が絆を取り戻そうとしているのが説得力を持って伝わってくる。
そして、ラスト近くの子供との会話で涙を流すシーンが実にすばらしい。あの涙は妻が死ぬかもしれないという恐れから来るものだと思うし、その涙の中に愛が存在するのを感じることができ、素直に感動できた。

モロッコでは兄弟の関係が描かれている。
くだらないことでケンカをし合うのは兄弟ならよくあることだ。だが弟は決して兄のことが嫌いなわけではない。
ラストの弟の行動には思わず涙ぐみそうになってしまった。徹底的に反抗しまくる弟は兄が瀕死の重傷を負ったことで、過ちに気付き投降する。遅きに失するといえばそれまでだけど、その中には兄弟愛がある(強風の中に手を広げる兄弟の映像のなんと美しいことだろう)。
確かに弟の行動は愚かかもしれない(わざとらしいエピソードだとも言えるかもしれない)。しかし過ちを悔いて、誰かのために行動することができる。そんなことをモロッコのパートでは思った。

日本のパートでは菊地凛子演じる女子高生が愛に飢えている様が描かれている(ところで菊地凛子は女子高生には見えない)。
彼女は母親の自殺をうまく受け止めていない。ちゃんと自分の話を聞いてくれていたと思っていた母の死に、多分彼女は裏切られた思いでいたのだろう。その愛に対する飢えと、心の傷を男にセックスアピールすることで埋めてもらおうとしている。
さすがにアカデミー賞にノミネートされるだけあり、菊池凛子演じるチエコの孤独が丹念に伝わってくるのが印象深い。だが個人的にはテーマの描き込みが言葉足らずという印象があり、ラストの親子で抱き合うシーンもさして心には響いて来なかった。
それにエピソードとしても、この日本編だけ浮いている。聾の少女の孤独の描写は良かったが、脚本段階で思い切って削除してしまう勇気もほしかったところだ。

本作には構成や物語の作り方にいろいろと問題点はあると思う。しかし、愛のすれちがいを丁寧に描いており、感動的な余韻を残していると思う。
人によって好き嫌いは分かれそうな気がするが、個人的には大好きな作品だ。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)


ところで、以前、「ディパーテッド」アカデミー賞受賞は疑問だという意見を書いたが、全てのノミネート作品を見た後では、その受賞の理由も何となく納得できる。
「バベル」では構成のまずさがマイナス点になりそうだ。
「クィーン」は良作だが地味。
「リトル・ミス・サンシャイン」はおもしろいが、積極的に推しきれる作品ではない。
「硫黄島からの手紙」は傑作なれど、イーストウッドに3つ目の作品賞というのもあげすぎな気もしなくはない。
まとまっていて重厚な作品は、そうなると「ディパーテッド」になる。しかも監督は無冠のスコセッシ。気に食わないが、消去法で考えるなら妥当なところだろう。


制作者・出演者の関連作品感想:
・ブラッド・ピット出演作
 「Mr.&Mrs.スミス」
・役所広司出演作
 「THE 有頂天ホテル」
 「叫」
 「SAYURI」
 「それでもボクはやってない」