2010年度作品。日本映画。
首相の凱旋パレードが行われているそのすぐ近くで青柳は、大学時代の友人・森田と久しぶりに再会していた。様子がおかしい森田。そして爆発音。首相を狙った爆弾テロが行われたのだ。「逃げろ!オズワルドにされるぞ」。銃を構えた警官たちから、反射的に逃げ出す青柳。本人の知らない“証拠映像”が次々に現れ、青柳は自分を犯人に仕立てる巧妙な計画が立てられていた事を知る。青柳は大学時代の友人たちに助けを求めるが…。(ゴールデンスランバー - goo 映画より)
監督は「アヒルと鴨のコインロッカー」の中村義洋。
出演は堺雅人、竹内結子 ら。
まさしくエンタテイメントな作品である。
プロットにはうねりがあって盛り上がりもあるし、舞台設定はハデで、楽しませることに徹している。実際、ラストはハラハラさせられる。
また適度な笑いもあるし、いい話だな、と思えるような感動ポイントも用意されている。
これはエンタメ以外の何ものでもない。
もちろん、つっこみどころは腐るほどにある。
この文章を書いている最中に、ふり返ってみても、腑に落ちない箇所は思った以上に多かった。その多さにちょっと愕然としてしまう面は否定できない(どこがどうとは言わんけど)。
だが、観客を意識したつくりゆえに、欠点はあれど、おもしろいということ自体は事実なのだ。
伊坂幸太郎が原作ということもあり、伏線の張り方は綿密である。
原作は未読だけど、その物語展開の妙はいかにも伊坂的。
花火の使い方といい、アイドル救出の話を最後に生かすところといい、細かなピースが後半できっちり生きてくるところはさすが、つうか上手い。
物語の組み立ての上手さもあり、細かなところを気にしても仕様がないかな、という気にさせられる。
プロット以外の部分としては、友情の描き方というか、人とのつながりの描き方が、個人的には気に入った。
映画を見ていると、大学時代の友人たちの存在が結果的に、主人公である逃亡者の青柳を支えていると言える。その描き方は悪くない。
カズは青柳を救いきれなかったのだけど、彼を思い心配していることは明白だし、元カノの樋口も可能な限り、青柳の力になろうと行動している。
青柳のために行動しようと思うみんなの間には、確かな友情があるのだ。
友人たちだけでなく、親だって、息子を信じている。
父親が息子に語りかえる言葉は実にまっすぐであり、あまりに温かい。
また、元同僚も男気があって、すてきである。
都合よく周りが手を貸しすぎている面もあるのだけど、好意的に深読みするなら、それも青柳の人徳と言えるのだろう。
その友情なり愛情が、ベタなのだけど、胸に響いてならない。
ラストに当人にしかわからないエピソードを送りあうところも、個人的には感動できる。それは当人たち同士、親しい結びつきがあった証拠でもあるのだから。
その様がほのかに美しく、映画の余韻をすてきなものにしている。
いろいろ問題点は多いのだけど、その楽しませようとする姿勢と、まっすぐな世界はなんとも心地よい。
個人的には好きな一品である。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
制作者・出演者の関連作品感想
・中村義洋監督作
「アヒルと鴨のコインロッカー」
「フィッシュストーリー」
・堺雅人出演作
「アフタースクール」
「南極料理人」
「ハチミツとクローバー」
・劇団ひとり出演作
「嫌われ松子の一生」
「どろろ」
「パコと魔法の絵本」
・香川照之出演作
「キサラギ」
「嫌われ松子の一生」
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「ザ・マジックアワー」
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「花よりもなほ」
「HERO」
「ゆれる」