唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

涕泣

2006-10-10 18:02:16 | Weblog
「おい、見てみろ、泣いているぜ」

居並ぶ官僚達は居すくんでざわめいていた。

則天皇帝が廃されて上陽宮に移される日

宰相姚元之は人目もかまわず独り泣いていた。

元之とともに廃位に働いた桓彦範や張柬之達は近づき

「あなたも廃位に協力したんじゃないか」

「こんな時に泣くと、あなたに禍が及びますよ」

「黙って見送るのが臣下の態度です」

元之は答えた。

「理屈はそうなんだがね」

「私は則天様に起用されて、いままで引き立てられてきた」

「臣下の道として、唐再興のために起義したのだ」

「しかし人としての道は違うのだ、禍が及ぶことになっても悲しいものは悲しいのだ」

彦範達は憮然として立ち去った。

数日後元之は宰相を解任され、州刺史として出されることになった。
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