唐中期以降の名将達 3.張萬福

魏州元城人。明經の家系であったが先祖は官には恵まれなず、萬福は騎射を学び平盧軍
で従軍した。そして淮南節度府で治安を保ち壽州刺史.淮南節度副使となった。
しかし剛直で屈する所がなかったため節度使崔圓に嫌われた［圓が諸将を信用せず、
妻子の人質を求めた時、萬福は老妻なのでお側の役には立たないだろうし皮肉って拒否
したなどの例がある］。昔の平盧軍での仲間である許杲が淮南を荒らした時、これを討伐したが、
圓は萬福を追い払うために、代宗皇帝に転任を推薦したがかえって気に入られて和州刺史
行營防御使になり、杲を滅ぼした。次の韋元甫にも嫌われ吐蕃防衛に派遣された。
元甫没後淮南節度使に推薦されたが辞退した。建中年間、淄青李正己が反し，
大運河の漕運を脅かした。危機を覚えた皇帝は濠州刺史として派遣しにらみをきかさせた。
萬福をよく知る淄青平盧軍士は侵すことができず漕運は再開した。その後泗州刺史となるが、
また節度使杜亞に嫌われ、右金吾將軍に追われた。萬福は誰に対しても強直で屈することがなく、
陽城が宗皇帝を強諫し、帝が激怒して厳しく処罰しようとした時もこれを諫めた。
貞元21年致仕し。其年五月卒，年九十。
敵や部下に畏れかつ愛され、上司に徹底的に嫌われたが、その実力を誰も無視できなかった。

唐中期以降の名将達 2.伊愼

伊慎は兗州人。騎射を良くし、大暦八年，江西節度使路嗣恭に従って、
嶺南で反した哥舒晃を伐ちこれを斬った。
その功により連州長史知當州團練副使となり、江州別駕に転任した。
建中三年、山東節度使梁崇義が反した時、江西牙將として淮西節度李希烈
に従ってこれを伐ち大功があった。希烈はその勇を愛し配下にしようとしたが
愼は従わなかった。四年、李希烈は反し、江西節度嗣曹王皋は愼に舟師を任せた。
希烈は愼が内応していると反間を放ち、朝廷は誅しようとしたが、皐はこれを庇った。
愼は蔡山柵を破り、蘄州を取った。
また黃梅縣で勝ち功績が多く、南充郡王に封ぜられ，蘄州刺史充節度都知兵馬使となった。
さらに淮西将杜少誠、劉戒虛を大破して安州を落とした。
その功により安州刺史兼御史大夫となった。また希烈が死ぬと隋州を帰降させた。
貞元十五年，安黃等州節度管內支度營田觀察等使となり、
淮西節度吳少誠を南方より圧迫し、申州城に破った。
二十一年，安黄に於いて奉義軍節度使檢校右僕射に昇格した。
憲宗皇帝が即位すると、兵権を解かれ右僕射となり、
元和二年，檢校左僕射兼右金吾衛大將軍になったが、
河中節度使となることを求めて宦官の第五從直に贈賄したことがばれ、
右衛將軍に貶せられた。その後檢校尚書右僕射兼右衛上將軍となり、
元和六年68才で卒した。贈太子太保。
安州は子の伊宥が嗣いだが、まもなく郗士美により回収された。
愼は反抗的な淮西節度を南方から牽制することに功績があった。

唐中期以降の名将達 1.高崇文

崇文は渤海人であり營州平盧軍士となり、その南下後は神策軍に入り、韓全義に仕え、
貞元5年には吐蕃を佛堂原に大破した。全義入朝後は長武城使となり、練兵に励んだ。
永貞元年、西川節度使韋皐の没後、その幕僚である劉闢が自立した。
新たに即位した若い憲宗皇帝は、宗皇帝のような姑息な藩鎮慰撫策（通常は内部昇格させていた）
を取らず、断然これを征討することとして將を選んだ。多くの上將のなかから選ばれたのは、宰相杜
黄裳が推薦した無名な崇文であった。
崇文は出師の命を受けるや、即日全軍を上げて進発し、興元に入り、劉闢が制圧した東川節度府［梓
州］を奪還し、東川節度使となった。
そして元和元年には西川に入り、諸城を陥し劉闢を捕らえて平定することに成功した。
その後崇文は西川節度使に任ぜられたが、文盲であることから、大藩である西川節度の複雑な行政に
音を上げて早期の交替を求めた。
元和二年。対吐蕃防衛の最前線である使相を兼ねた邠寧節度使.京西都統に転任した。
その場合も入京して、皇帝に拝謁する礼式を厭い直接の赴任を求めて認められた。
そして三年間、大いに兵備を整えて辺境を防衛し卒した。64才。贈司徒。
彼は徹底して武人であり、政略に関与することはなかった。
子は承簡［兗海・義成・邠寧節度使］、子孫に駢［安南・天平・西川・荊南・鎭海・淮南］がいる。