ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

幸運を招く力をいかに呼び込むか──日野原重明

2016-07-21 18:17:14 | 知恵の情報
東京大学名誉教授の小柴昌俊さん、島津製作所の田中耕一さんノーベル賞受賞は、
久しぶりに聞く明るいニュースでした。2000年度から3年連続となった自然科学の
分野での日本人受賞者の「発見」「発明」にいたるストーリーは、いずれも痛快で、
どことなくユーモラスで、心をひかれます。

2000年度受賞者の白川英樹さんの発見は、触媒の濃度をまちがえた失敗作から
生まれたといいます。その翌年度の野依良治さんの場合は、専門とは別の分野の
実験中に起きた偶然の発見であったそうですし、「寝耳に水」の受賞とおっしゃった
田中耕一さんも、専門家からは非常識とされる研究を失敗のうえに失敗を重ねた
末に大発見できたと聞きました。

いずれも偶然の賜物です。大発見につながる偶然に出会えたのは、受賞者たちが
だれにもまして運がよかったからでしょうか。もちろん運も大いに味方したでしょうが、
彼らには「セレンディピティ」(serendipity)があったのです。

セレンディピティとは、「求めずして思いがけない発見をする能力」とか「掘り出しもの
上手」のことです。英米では以前から知識人のあいだで使われていたことばですが、
最近は、日本でも科学者たちの談話のなかに聞く機会が多くなりました。

セレンディピティは、古くペルシャに伝わる「セレンディップの三王子」の物語を読んだ
18世紀の英国の作家ホレス・ウォルポール(1717~97)が、「予期せぬ幸運」を
言い表すのにつかい始めたことばとされています。セレンディップとは長らくセイロン
と呼ばれた現在のスリランカの国の名で、この童話は、セレンディップの王子たちが
旅をしながら、偶然と彼らの明敏さによってさまざまな困難を乗り越え、多くの発見を
し、船出の時には予想もしなかった貴重な体験を載せて帰国したというストーリー
です。

科学の大発見の裏には、いつもセレンディピティが隠されています。

ペニシリンという抗生物質は、実験中に培養基に混入した青カビに、英国の細菌
学者フレミング(1881~1955)がふっと目を留めたからこその発見でした。カビ
の生えた培養基はおそらく彼が目に留めるまで、実験の失敗の一つとして多くの
研究者によって、またフレミング自身によっても数知れずただ洗い流されていたこと
でしょう。

また、ニュートン(1642~1727)の発見にしても、リンゴが木から落ちる様子を
目撃した人は数え切れないはずですが、そこから万有引力の法則を導きだせたのは
彼だけです。

フランスの細菌学者パスツール(1822~95)が
「幸福は備えある人にだけ恵む」
と言っているように、準備のないところに幸運な偶然は現れません。「ひらめき」
ということばや、「棚からぼた餅」ということわざの裏には、大事な偶然を見逃さない
アンテナとそれを待ち受ける受け皿であるレセプターの用意が欠かせないという
メッセージが実は隠されているのです。幸運な偶然を招き寄せる力には、やはり
周到な準備が必要なのです。

─『続生き方上手』日野原重明著 ユーリーグ株式会社刊より

「予期せぬ幸運」は科学者だけでなく、ごく普通の人にもあると思う。
そんな、大げさなことではなくとも、自分にはっとする出来事だ。
自分がわからなかった、考え方がふっとわかるときがきたり、あのときに人に
迷惑をかけていたことがどうしてか、ふっとわかったり。日野原先生は、周到な
準備が必要、とおっしゃっているが、生き方がやはり、大事だと思う。
人生に対して真摯な生き方をしていなくてはならないだろう・・・

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