心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

【もしも】文学を訳すのはだれだ【もしも】

2006-03-15 13:03:03 | 心理以外

もしも河合隼雄先生や小此木啓吾先生がいなかったら,この業界どうなっていたのでしょうか。行動療法が広がっていた? ノンノン,そもそも心理業界なんて「なくなっていた」かもしれませんよ!

歴史に「もしも」とつけるのは禁物ですが,考えてみたくなりますな~。たとえば,大江健三郎さんの息子さんが知的障害者ではなかったら……少なくとも,大江さんがいまのような作品を残すことはなかったでありましょう。

当事者本は数多くありますが,やっぱ文学者が書いたものは一味も二味も七味も違ってまつ。大江健三郎作品群を「当事者」の枠に入れるのもどうかと思いますが,

 

ピンチランナー調書

新潮社

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なんて面白かった。息子さんのことを描いたシリーズのなかでは,希望にあふれた傑作じゃないかと思います。

最近,知ったのですが,あのパール・バックの娘さんって障害(自閉症?)を抱えていたんですね。
本もあります。

 パール・S. バック (著), Pearl S. Buck (原著), 伊藤 隆二 (翻訳)

母よ嘆くなかれ

法政大学出版局

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これも当事者本でありますね,ある種の。
むこうでは,ロングセラーの一書のようで,パール・バックの代表作の一つに数えられているようです。日本では全然知られてないかもしれませんが。
伊藤先生の訳ですが(初版は松岡久子さんが訳しておりましたが),これは……「文学」ではないですね,専門的なところは「正しい」訳ではありますが…ま,もっともこちとら専門書編集者,読みにくい文章を読みなれているところはありますからね,大して違和感はないのですが,一般の人はどうかな,読みにくいかも。

そういう意味ではプロが手を入れるのが吉かも。なんて言っても英文学者で英訳をよくする人でひどい悪文家はいますけどね。ジョン・×ップダイクの本が面白くないのは訳者のせいじゃないかって思うのはワタシだけか…。ま,自戒を米。書いていたら,悲しくなってきた。いろいろあんだよ,いろいろ。悪いのは訳者だけでなし,編集者だけでなし。共訳にしたからといって名訳になるとは限らない。

よし,英語で読むぞ。一人輪読会だッ!

 

The Child Who Never Grew

Woodbine House

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旧著ばっかりだな。
ではとびっきりの新刊を。

 田中康雄先生の

軽度発達障害のある子のライフサイクルに合わせた理解と対応―「仮に」理解して、「実際に」支援するために

学習研究社

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タイトルに目一杯内容がつまってますが,いい本です。
何せ,田中康雄先生であります。ワタシも田中先生に癒されたい。



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