心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

統合失調症の本のタネは尽きまじ

2006-11-21 11:49:46 | 精神医学・精神病理学
統合失調症って,ほんと大変な病いです。
今まで散々,手を変え品を変え紹介してきましたが,

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いや,ほんと統合失調症のタネは尽きまじ,って感じであります。


この前,NHKのテレビで,立花隆のやっていた立花隆最前線報告「サイボーグ技術が人類を変える」の再放送を見てしまいまして,いや,ほんと,すごい。
印象的だったのは,マイケル・J・フォックスもかかっているパーキンソン病の患者さんでして,脳のある部分に電気信号を送ることで,パーキンソン病特有の体のゆれがピタッ!と止まるっていう手術でありました。ペースメーカーを入れるようなもんです。実際,胸の辺りに電池(?)があって,「リモコン」(!)で止められる! 止めると,「ゆれ」が再出するんですよ,これが。病気が治るというか,症状を止める仕掛けになっているわけです。つか,説明下手だな,ワタシ。とにかくね,すご!ってなもんでして,とはいえ,手術にはリスクがあるようだし,お金もかかりそうですが,そのうち,パーキンソン病はふつうに治るようになるかもしれませんね,ほんとに。
これと同じで,「うつ病」も治るらしいんですが,ちゃんと患者を取り上げていないんで,判断のしようがありません。どっかに論文転がっているのかな。。

で,このテレビを見て思ったのが,統合失調症のことでありまして,統合失調症もこんな感じで治らないかね,というような妄想であります。一方で,映画『カッコーの巣の上で』を見ればわかるとおり,ロボトミー手術,つまり精神外科的手術には悪名高き歴史があります。

ま,皆さん,知っておられましょうが,原作もあり。

カッコーの巣の上でカッコーの巣の上で
ケン キージー Ken Kesey 岩元 巌

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ただ,この訳者の訳はワタシ,好かんのですが,ハイ,すまんです。

ちなみに,作家の中村真一郎もロボトミー手術を受けているそうで……。しかし,ワタシ,知らんかったんですが,中村真一郎と福永武彦って『モスラ』の原作者なんだ……

ともあれね,そういう過去もあるから,手術は難しいかな,やっぱ。そんな局在的に病理があるような感じもしないし。。。わかんないけど。素人のイメージですので。

で,ま,統合失調症ですが,当然,「薬物」がまずは治療の第一。次が社会的なサポートと心理的なサポートを軸に進めていくわけですが,心理的なものは,やっぱ,「深い」洞察が必要なモノよか,支えになるようなスタイルの方がいいんでしょうね。症状に焦点を当てるなら行動療法的なモノなのか。ともあれね,社会的なサポートにつなげるためにも,本来なら「心理的なサポート」は無視できないと思います。二つを備えた,侵襲性の少ないグループセラピーもよくあります。「陰性症状」もありますから,この部分のケアのためにも,チーム医療が必要になってきますね,マジで。でも,そんな光り溢れる治療を受けられるのは,どのくらいなんでしょうか。

世の中の偏見もありますしね。
とはいえ,小さく前進しつつあるのでしょうか。いい本がこのところ続いていますし,いい本がでれば,世界は変わる(ハズらぁ!)。編集者って楽天家すぎるのか。

NHK「生活ほっとモーニング」統合失調症を生きる―当事者・家族・医療の現場からNHK「生活ほっとモーニング」統合失調症を生きる―当事者・家族・医療の現場から
有村 律子 丹羽 真一 三橋 良子

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なんて本もあり,一般向けのものですが,考えさせられます。GJ!

で,何度も何度も紹介している,

正体不明の声―幻覚妄想体験の治療ガイド正体不明の声―幻覚妄想体験の治療ガイド
原田 誠一

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を出した原田誠一先生の新刊が出ました。
ついつい買いましたョ!

統合失調症の治療―理解・援助・予防の新たな視点統合失調症の治療―理解・援助・予防の新たな視点
原田 誠一

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これは,はっきり言いましょう。

買い!

です。こら,いい本だ。脱毛だ。じゃなかった,脱帽であります。
精神科に勤める心理の皆さんには絶対必要な1冊。しかも,しかもですよ,あの例の「ヴァーチャル・ハルシネーション」のCD-ROMつき。
ヴァーチャル・ハルシネーションって何かつて?
これですがな。→VH

ヴァーチャル・ハルシネーションってほんとは,なんか眼鏡とかして,ヘルメットとか被ってするらしいですが,これはま,その簡易版。時間もわずかですが,でも,へぇという感じであります。

しかも,神田橋條治先生の序文つき! 回収に走れ!


ともあれね,この本,とてもすばらしい出来です。
「なんかウチの病院,アホでさ」と愚痴をはく前に,こういう本を読んで,医者を啓蒙してやれ!(もちろん,逆も可能)

ま,こういういい本が連発しているのも,「精神分裂病」という言葉から,「統合失調症」という言葉に変わり,ガラッと本が変わったからでしょう。昔の名前で出ていたら,古い本になってしまうんで,新しいモノにがらっと変わっている,ということです。そうすることで,治療が変わり,患者さんが変わって,社会が変わってゆく――キボンヌ!


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