心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

ア,ア,アソパソマソ,や~さしい君は~,彼女と並んで歩く時には車道側~♪

2007-10-17 13:51:49 | 精神医学・精神病理学
というわけで,今日も今日とて無様にエントリアップ晒すわけですが,今日のお題は,暴力,ということでいきたいと思います。なぜかは聞かないでくれ。

暴力つーのは,なんかよくわからないけど,建前的には「ダメ,絶対」なんですけど,まあ妙に人をひきつけるところがあるわけで,だからといって肯定する必要などないですが,肯定する必要はないけど,その存在をないことにはできないすね。必要悪なんて言葉がありますが,暴力それ自体が必要悪だなんてことはありませんが,必要悪ってのはしばしば暴力的でありますが,でも実は,必要悪における暴力ってのは社会的な目的と落としどころを持つって意味では(まあ金というかね),そんなに暴力的なイメージではないわけですね。暴力的でない,とはいいませんが。

まあ手段的な暴力といいますかね,そういうのってよくないはよくないけど,けど現実には溢れかえってるわけで,その利害に巻き込まれない限りにおいては,嫌悪感ってのはあんまりない。たとえば戦争を経験してないと,戦争に対する嫌悪感は,嫌悪してる人に比べて薄くなるのは当然なのであります,などときわめて当然のことをもったいぶって話しちゃってごめんなさい。

まあでも今日,暴力,ということで語られるのは,家庭内暴力(DV)とかいじめとかか。関係ないけど,校内暴力って最近あんまり言わないけど,いじめなんて校内暴力ですよね。教室内暴力とかでもいいけど,もっと暴力ってイメージをだして嫌悪感を呼び起こしたほうがいいですよね。閑話休題。

なんつうか,たとえ他人事でも,校内とか家庭内とか相撲部屋とか,プライヴェートというかドメスティックというか閉鎖的というか,そんなところで展開される暴力のほうが,現実味がある分,嫌悪感も強いわけですよね。

あと宣戦布告して行なわれる戦争より,無差別テロのほうがなぜか嫌悪感あるわけで,でもどっちも人をブッ殺しまくる意味では同じはずなのに,そして戦争のほうがはるかに死ぬ人が多いにもかかわらず,無差別テロのほうが嫌悪感が強いのはなんででしょうね。まあなんでってこともないんですけどね。

また,よく言われますけど,殺人事件と交通事故,どうなんでしょうか。どっちも人が死んでますけど,まあ交通事故はしょうがないところもあるんでしょうが,しょうがないで人が死んでいいわけもなく,被害者および被害者家族の無念は同じでしょう。猟奇殺人と金目的の殺人も同じですけど,よく猟奇殺人が現代社会のひずみみたいな捉え方でニュースになったりしますけど,猟奇目的であれ,金目的であれ,殺されるのは同じだし,どっちも納得いかないですよ。納得なんていってたまるかよ。どっちもダメに決まってる。

計画的か否か,とかもね,まあ犯罪性だとか更正可能性だとか,おもに予防的な意味合いがあるんでしょうけど,計画的だからとにかく許せないとか,衝動的だから仕方ないとか,そんなふうに思えるわけもなく,まあ犯罪者も許容できるのが文化的な社会だとは思いますが,はじめから許容ありきだから,そこらへんズレちゃって困っちゃいますねえ。

罪を憎んで人を憎まず,なんて,もう大嘘でして,日本では(という言い方は好きじゃないけど),罪を憎まず人をとことん憎む,みたいな感じがあって,法律で決められてる刑期を終えても,その後の社会的な制裁が待ってるわけで,まともに暮らしていけるわけもなく,そっちのほうがよっぽど再犯率に影響してると思うのですが,いわば近視眼的に人を憎まず,長期的に人を憎む結果になってると思うんですけど,どうでしょう,そこんところ。量の問題ではないのかもしれないけど,しっかり罪を憎まないと,そのツケが人にいってる気がして,まあどのみち,憎しみはなかなか消えませんけどね。

…………

などと,きわめて俗物的で居酒屋的なアリ・キタリの暴力論・犯罪論,無様に晒してしまったわけですが,聞いてください! 最初はこういうの書くつもりじゃなかったんです!

というわけで,そろそろ本題に入りたいと思うわけですが,あとひとつだけ気になるのは,テレビ,ゲーム,マンガの暴力映像を子どもに見せるのは悪影響である,という説ですね。社会心理学の研究であったのかな。欧米では~,こういうところ大変厳しく,規制が強いですね。ドラゴンボールとかさ,暴力性が強すぎて年齢規制がかかったりするらしいス。

でも日本人的にいえば,ドラゴンボール,確かにいわれてみれば暴力的なんだけど,イメージ的には暴力的という感じはあんまりないですよね(僕だけか?)。じゃあ日本人が欧米の人に比べてすっごく暴力的かというと……よくわかりません……。僕なんか,暴力映像規制しつつ軍備増強,なんてどういうこっちゃいと思っちゃいますけど,あんまりそういうことを言ってる人もみませんね。まあ第三者的な視点はどうしてももてないけど,でもどう考えても,われら家畜人ヤプーですよ,比較対象の問題ですけどね。まあでもあれか,暴力映像規制は,訴訟対策みたいなとこもあるのかね。

というわけで,実はようやく前フリに入れるわけですが(ェェェエエエェェェ),psy-pub的感性,すなわち90年代野郎Hチーム的なものを中心に,暴力をテーマにした映画・作品をここらで紹介していきましょうか。今日性があんまりないと思いますが,そこはおっさんだからでFA。ちなみに,僕的な勝手なイメージとしては,暴力描写=サブカルみたいな印象がありましてね,なんか90年代はある種,イメージとしての暴力を崇拝するような雰囲気,ありましたよねえ。

で,


時計じかけのオレンジ時計じかけのオレンジ
マルコム・マクドウェル パトリック・マギー スタンリー・キューブリック

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いきなりベタでごめんなさいだけど,というか,1970年の映画なんですけど,高校時代に初めて見て,もうそれはセリフ丸暗記するほど,好きでしたね。友達が家にきたら「チャイ飲みます?」って必ず言ってたほど,好きでしたねえ。チャイなんて飲んだこともないのに。

JKTに「超暴力(アルトラ)」と書いてあって想像力を喚起させられるけど,実際はただの胸糞悪い暴力描写のオンパレードという感じ。それでもジョン・ウォーターズ的な悪趣味の極限の果てのスタイリッシュ,とは違った,スタイリッシュな悪趣味,ですね(映像は今見てもカッコイイです)。

むしろとんでもなく間違った古典的条件づけのほうが,よっぽどアルトラかね。P-Fスタディも出てくるし,心理学映画といってもいいのに,そういう文脈ではあんまり出てこないすね。

リアリズムの人,キューブリックの作品としては,かなりテンポよく進むので,観やすいと思うし,観たことないなら,観たほうがいいです。ウォルター(現在はウェンディ)・カーロスのシンセもカッコイイ。ベートーヴェンの第九の使い方という意味では,エヴァより百枚くらい上手です。個人的にはキューブリックだと『バリーリンドン』が最高ですが,あまりお勧めしません。閑話休題。



ソナチネソナチネ
ビートたけし 国舞亜矢 渡辺哲

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静けさと暴力のシンメトリー。いま言葉にすると陳腐すぎますけど,確かにそれを表現しきった人はいなかった。3作目にして,キタノ映画の到達点であります。非常にバランスがよい。まあ正直,これが好きか嫌いか,だと思いますよ。


バトル・ロワイアルバトル・ロワイアル
藤原竜也 前田亜季 山本太郎

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過大評価された小説の商業主義的映画化,というイメージかもしれませんが,確かにストーリー展開がメロドラマ化してる面も否めないですけど,時々すごい映像(教室で皆がうずくまってるシーン,密室で女生徒が殺しあうシーンなど)が混じるので,油断できません。深作最高。個人的には深作だと『忠臣蔵外伝 四谷怪談』がすばらしすぎるのですが,例によって,お勧めできません。暴力というかレーザービームというか……。


鉄男~TETSUO THE IRON MAN~鉄男~TETSUO THE IRON MAN~
田口トモロヲ 塚本晋也

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まあやっぱこれははずせないですね。『殺し屋1』もそうですけど,抽象的な暴力=メタ化した暴力じゃなく,身体的というか,皮膚感覚の暴力というか,そういう感じでやーな感じ。痛いというか痛々しいというか。でもともかく傑作。石立,ではありませんよ,薄汚ねえシンデレラ! 個人的には『双生児~GEMINI~ 特別版』好きですが,今日は割愛。


PinkPink
岡崎 京子

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この人の暴力描写はとにかくリアル。絵がリアルということじゃなく,そこに至る過程がとんでもなくリアリティ。特にこれの描写が個人的に一番すごいと思ってます。岡崎京子は普遍的だと思うと同時に,時代のアイコンでもあったわけで,そこらへんのミックス具合という意味でも,これが好きですね。まさにここがボーダーライン。


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ケアリー・エルウェズ ダニー・グローヴァー モニカ・ポッター

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まあこれ暴力メインじゃないですけど(まあそれは上掲も必ずしもそうじゃないですけど),なんかこの抑圧された感じというかドメスティックな感じというか,暴力のイヤ~ンな感じがよく出てると思うのです。映画としてはかなりよいです。ブレアウィッチのガッカリ感もない。さしずめ,自主制作版の『呪怨』同様のスマッシュヒット。

…………

まあ要はメタ暴力の時代は終わった,これからはメタボ力(←老人力を意識して)の時代ですね。OREのHARAを見よ! なーんつって,タハハ,ハイみんな,笑って,笑って~(俺は心で泣いて!)。

ま,以上,抽象的に暴力を語ってみたわけですけど,臨床心理学・精神医学の領域だと,セラピストの暴力は論外ですが,患者/クライエントの暴力ってのをどう考えるのか,てのはでかいテーマとしてありますよね。そして誰もが中井先生のように対応できるわけでもない。ということでようやく(!)本の紹介なんですね。



HCR-20 第2版―暴力のリスク・アセスメントHCR-20 第2版―暴力のリスク・アセスメント
Christopher D. Webster Kevin S. Douglas Derek Evans

星和書店 2007-06
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精神科,司法臨床におけるってことですけど,尺度とマニュアルですね。ここまで抽象的に語っておいて,無味乾燥に思えるかもしれませんけど,結局,多かれ少なかれ,こうした言語化および現実的な対処の積み重ねしかないんですよね,キレイゴトではなくね。教条的になっちゃったらしょうがないけどね。暴力には意味と文脈があるわけですから,一概に論ずることはできないけど,一概に論ずることができないからこそ,逆説的にこうした尺度の存在意義があると思ったりもしますね。


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