心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

文才とは

2005-09-28 13:26:23 | 心理療法一般
自然流精神療法のすすめ―精神療法、カウンセリングをめざす人のために
自然流精神療法のすすめ―精神療法、カウンセリングをめざす人のために
岡野 憲一郎


 臨床心理学・精神医学関連の書籍のなかで,文章の巧拙と臨床は相関はないと思うのですが,重厚であれ,軽妙であれ,びっくりさせるものであれ,誠実であれ,ウェットであれ,クールであれ,確実に「文才」というものを感じさせる本があります。現実として,内容の良さ(これが最も大事なことはいうまでもないことです)に加えて,文章力というのは,マスとのコミュニケーションという面において大変重要であります。
 この岡野先生も確実に文章が上手い部類に入ると思うのですが,本(連載ものをまとめた)の性質もあると思うのですが,面白いのはタイトルの付け方です。たとえば,

第六章 療法家が「自然に」ふるまうこと
読者の皆さんにはこのテーマがピンと来ないかもしれない /しかし最低限に「自然に」ふるまえない人もまた多い /歴史的に見て、精神療法家はやはり「不自然」だった /療法家も結構どうふるまっていいかわからずに悩んでいる /ある若い女性の療法家の体験 /自然の反応は表層の反応でもある―私の分析家のこと /発想を転換した /最後に―「自然」であることは不可能である。でもそれを求める気持ちも無理のないことである

 こういう抽象化は,簡単に出来そうでなかなか出来ない,したがってあまりお目にかからない,ある程度の技巧を要するのだと思います。また非常に誠実な感じも受けるのですが,あさっての方向を向いてもあくまで誠実さを貫く真面目さが,そこはかとないユーモアとして,われわれに感じられるのでしょう。すなわち,文章の上手さが,虚飾あるいは演技的(それは“信者”を生むに必須のものでもありますが)にはならず,そういう意味でも「自然流」なのでしょうねえ。


気弱な精神科医のアメリカ奮闘記
気弱な精神科医のアメリカ奮闘記
岡野 憲一郎

 最近出たのはこちら。まだ未読ですが。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (カカ)
2005-09-28 17:31:48
はじめまして。

すごいブログですね…!

読んでいるだけで面白くて、ご紹介の本をみんな読みたくてたまらなくなり、困ります。

これだけ安定したクオリティを維持するエネルギーも凄い。

私も心理系ブックレビューのブログに挑戦し数ヶ月経ちましたが、崩壊寸前です。

これからも是非よろしくお願いします、

楽しみにしています!
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ありがとうございます (psy-pub)
2005-09-29 09:39:02
 どうもはじめまして。コメントありがとうございます! カカさん初め,専門家の方々のブログはいつも拝見しております。谷岡ヤスジも良いのですが,9月26日の「脳をこえた記憶システムについて」などは大変興味深い記事ですね。これからも楽しみです。「もうだめかも」なんて言わずに,頑張って下さいね。

 個々の書評のクオリティは,専門家に比べるまでもなく(私どもの方が低い),ドンキホーテもしくはダイソー的な「物量」のみが売りです。

 今後とも,どうぞよろしくです。
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Unknown (カカ)
2005-09-29 13:41:02
>専門家に比べるまでもなく(私どもの方



専門ではないにもかかわらず、

この読みこなしぶりは…!



う~ん…すごいな

psy-pubさんて一体どんな人なんだろう

「ども」ということは、複数いらっしゃるのか

ミステリアスだ



>これからも楽しみです。「もうだめかも」なんて言わずに,頑張って下さいね。



ありがとうございます、ちょっとガッツ出ました。

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いえいえ (psy-pub)
2005-09-30 12:47:52
>カカさん



過分なお褒めの言葉ありがとうございます。



>psy-pubさんて一体どんな人なんだろう

>「ども」ということは、複数いらっしゃるのか

>ミステリアスだ



われら心編研は,ミステリアス・ガール揃いです(嘘です)。



「エピソード記述入門」のTB,およびリンク貼らせて頂きました。今後ともどうぞヨロシク。
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