新しい活性汚泥法
古川 憲治, 橋本 奨, 須藤 隆一
臨床は科学ではなくアートだということはよく言われますが,いわゆる理系の分野ではどうなのでしょうか。たとえば,生活排水(下水)を処理する(浄化する)技術に「活性汚泥法」というのがあり,これがなんともダイナミックなシステムなので,ちょっとご紹介します。
活性汚泥法は,下水の中にいるさまざまな微生物群(これを活性汚泥という)を,曝気(空気ブクブク)したり沈殿させたりたまに薬剤入れたりすることで,活性化させて,その下水そのものをきれいにしてしまうという方法です。簡単に言うと,下水自体の自浄能力を高めてやるということですね。これは,今も下水処理に最も使われているシステムなのですが,面白いのは,活性汚泥がいまだほとんどブラックボックスであるということなんです。ブクブクや沈殿させると良いのが経験的に分かっていても,どの微生物がどのように相互に作用し浄化に至る系を造っているのかは,いわゆる複雑系のようで,頑張って解析を進めているものの,まだまだほとんど分かっていないようです。
当然,処理の現場はマニュアル通りでは上手くいかないのだそうですね。そこで登場するのが海千山千のベテランで,見た目や臭い等で判断して,もっとブクブクしろ,とかの指示をするそうです。心理臨床に限らず,どこでも現場はアートということですかね。しかしこの活性汚泥法のプロセスって,サイコセラピーのそれと何ともそっくりではないですか! やっぱ人間もダイナミックなブラックボックスなんでしょうねえ(って安直?)。
まあ,だからといって,上記の書籍などを読むことなど全くお奨めしません。技術者のための純然たる技術書につき,門外漢には欠片も面白くないですからご用心。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます