和州独案内あるいは野菜大全

第一回奈良観光ソムリエであり、野菜のソムリエ(笑)でもある者の備忘録のようなもの。文章力をつける為の練習帳に

Raphanus sativs

2009年02月20日 | 野菜大全
 大根の学名はRaphanus sativs ラファナスはラーパつまりカブの事をさすらしいが、割れるもしくは早く割れるという意味だと言う話もある。割れるという意味なら初生皮層の剥皮現象(本葉3~4枚目頃に芯部が肥大して外皮が縦に裂ける)を指しているのかもしれないが、そうするとBrassica属のカブも同じく剥皮するので、やはりここは「早く割れる」の意味のほうが通る気がする。
 では「早く割れる」とはどういう意味なのかというと、やはり種の発芽が早いということになる。アブラナ科の中でもかなり早い部類に入り、うちの畑ではルコラ、ミズナ、小松菜などの漬け菜類、キャベツ類の順に発芽して、大根はミズナとほぼ同じと見ている。発芽の早さと種の大きさには関係があって、小さい種ほど発芽は早くなる。小さな種ほど貯蔵物質が少なくもしくは無いために、光合成を早く始めたほうが有利という訳らしい。弁当を持ってるかいないかみたいな話。
 では大根の種はというとアブラナ科では異例というくらいとても大きい、ルコラは芥子粒ほどしかないが大根は米粒より大きいくらいか。それでいてミズナこれもかなり細かい、と同等の発芽スピードは大根の特性として昔の人が認識してもおかしくは無いでしょう。 もしかして大根の種はあのなりで貯蔵物質をもっていないのか?その辺はまたにしておきます。

 カブを差し置いて最も地方の在来品種の多い大根ですが、大和においてはこれと言った品種は報告されていません。ただ白上がり大根という細身の正月大根はあります。土壌の性質からすると聖護院のような丸大根や、田辺大根のような短系種があってもよさそうなのに残念です。それらの有名な大根以上に特徴のある大根が生まれなかったのでしょう。
 古くは古事記にも登場し、仁徳天皇から磐媛に送った歌に詠まれています。おおかた嫉妬深い磐姫をなだめる歌なんでしょう。 生駒の聖天さんこと宝山寺の寺紋って言うのでしょうか?あれは確か「二つ大根」ですね、違ったかな。本尊ではなく守護仏と言うらしいが完全に母屋を乗っ取った感じです。

 大根はカブと何が違うのか?と言う問いは素朴さゆえに実に難しい質問です。アブラナ科のラファナス属とブラシカ属の違いは現在はDNAレベルでの違いとして分類がなされてるはずですから、カブは同じブラシカ属のキャベツやアブラナに近く大根は遠いことになる。でも同じ科なので両者を掛け合わせた品種は既に市場に出回っています。絶対量が少ないのでもし見かけた方はラッキーですね。
 農家としては種の大きさが全然違うのでそこが決定的な差異といえる。葉の姿からカブは広葉で大根は鋸歯葉だから違うと言うのは、辛味大根系で広葉があり、天王寺かぶに切れ葉があるため十分条件ではない。 大根は主に根部が肥大するのに対して、カブは胚軸部(茎と根の中間)が肥大すると言うのも、二十日大根は胚軸が肥大して日野菜は根部も肥大しており十分とはいえない。やはり種子の大きさの違いは単純だが決定的な違いといえそうですね。

 それはそうとして春大根ですがかなり困った事になりました。一部で葉色が違うと思っていたらやはり薄くなった辺りトウが立ち始めているようです。一応トンネルをして25度以上を確保していたつもりだったし、一部だけが春化出来ないなんてことは思いもよりませんでした。最初はモザイクウイルスにでもやられたか微量要素障害かとも考えましたが、追肥と潅水不足がトウ立ちを早めたのだと考えています。まだス入りが有るわけでもないので十分に肥大しきってないが早めに出荷しようかと、異変があって気付いていたにもかかわらず対応しなかった落ち度は自分に有るのでどうしようもないですね。

  
                     右手の大根の葉色が抜けている

 
 それに加えて更なる問題、ハタネズミの野郎が大根を齧っていました。本当に頭にきましたので宣戦布告します。土中が齧られているならモグラの可能性も考慮に入れなければなりませんが、地際が齧られているのでネズミで確定でしょう。モグラ穴をネズミが利用する負の連鎖は今のところ無いけど、エサが少ないからか冬のほうが活発に動き回り、暗黙の了解(畑には入らない)を易々と破ってくれる。これはもう狩らないといけないかもしれません。