platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

めぐりあいの大陸

2006-09-23 | ボーイ・フロム・オズ
 『ボーイ・フロム・オズ』は、エンターティンメント性にあふれた作品ですが、胸を締め付けられるような場面もいくつかあります。なかでもピーターの父親の最期の場では、この夏の『ムーヴィン・アウト』でも扱われていた戦争帰還兵の苦しみが、時間と空間をこえて迫ってくるようでした。オーストラリア人である彼が終の棲家として母国ではなくアメリカを選んだのも、無関係ではないと思います。
 ブロードウェイ版CDにボーナストラックとして収録されている”Tenterfield Saddler”で、ピーター・アレンは彼の「父親」を語ります。BW本公演でも東京公演でも歌われなかったこの曲、今年のオーストラリア公演ではどうだったんでしょう。坂本昌行さんの柔かい、温かみのある声で聞けたら、このドラマがより鮮明になり、深みを増すような気がするのですが・・・
 アレンの妻であったライザ・ミネリも「よき父親」とは縁の薄い生涯でした。父親はジーン・ケリーの『雨に唄えば』に並ぶ代表作、『パリのアメリカ人』を監督したヴィンセント・ミネリ。世界に名を馳せたこの大監督は、1930年までに400~500万人が流入したイタリア移民の「誇り」という存在ですが、この父子が生活を共にすることはほとんどなかったそうです。
 サンフランシスコの観光スポットであるチャイナタウンの賑わいを通り過ぎると、ノースビーチと呼ばれるイタリア人街がひろがり、著名なイタリア系アメリカ人の写真が飾られたお店が目に付きます。『キャバレー』のライザ・ミネリの写真はそのなかでもひときわ華やかです。アメリカ芸能界のサラブレッドであるライザはオーストラリアから来た青年に何を感じたのでしょうか。

 人種のるつぼ、という表現そのままに、世界中からひっきりなしに沢山の人たちが移り住み、出会いと別れを繰り返すこの大陸に、14才の青山航士さんが足を踏み入れた日のことを思います。舞踊の女神とこの地で出会ったThe Boy from Japanの物語はまだまだこれからですね。