単騎、千里を走る。

映画 『単騎、千里を走る。』 を もとにノベライズされた・・・

『単騎、千里を走る。』 著者 ： 白川 道

男鹿半島で暮らす漁師の高田剛一は、息子・健一との間に、長年の確執によって
生じた親子のわだかまりを抱えていた。その健一が ガンに冒されたことを知った高
田は、中国古来からの文化である仮面劇の研究をしていた健一の代わりに 「単騎、
千里を走る。」 を ビデオに収めるため、単身 中国の奥地・雲南省麗江を訪れる。

“健一のために、たったひとつできること―” その旅は高田にとって、親子の埋める
ことのできない心の溝を埋めるための旅でもあった。
言葉のわからない地で次々と降りかかる難題。そのコミュニケーションギャップが、
健一との疎遠な関係と重なる。

だが、高田の誠実で一途な想いが 周囲の人々の心を動かし、高田自身も 多くの
素朴な心情に触れ、（彼らの生きる姿には 人を疑う心というものがなかった）人の
優しさ・自分が過去に見失ってしまった家族の意味を少しずつ取り戻していく・・・。

人の心は言葉によって通じるのではなく目に見えない感情の交流によって伝わる。

健一が最後に こう言い遺してくれた・・・。
“僕が仮面劇に惹かれたのは・・・仮面の下に隠れた素顔に 僕自身を発見した・・・、
笑い転げる陰で歯をくいしばる自分を・・・、怒って踊りながら涙を流す自分を心の底
では感じていたんです・・・。父さんと僕が、お互い仮面を被って 素顔を隠してきたと
いうことではないでしょうか・・・。会いましょう、父さんと素顔で話がしたいです。”

高田にとって 「単騎、千里を走る。」 は、健一との心の繋がりを呼び戻す役割を担
ってくれた大切なものになった。

今、薄れつつある？家族・親子の感情の交流・・・そんな、家族が持つ問題を切々と
語りかけられてる気がした。