映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「バスキア ~Basquiat~」

2008年12月18日 | 映画~は~
1996年 アメリカ映画

学生のときにDVDでみて、すごく楽しんで心躍った覚えがあるのだけど、久しぶりに見てみたら・・・あれ?全然感覚が違う。ここまで違うのも珍しいくらい。

フランス出身のバスキアはNYでアーティストとして成功しようと夢見る。公園にダンボールを置いてその中で眠り、なじみのカフェではソースをテーブルにぶちまけてスプーンや手を使って絵を描く。そこで出会ったジーナと恋人同士になるが、成功を手に入れていくにつれてジーナとの間に溝ができ(完全にバスキアが悪いんだけど)、自分の作品をめぐって人々が利権を争うようになり、信頼を寄せていたアンディー・ウォーホルが亡くなり、そして自分もオーバードースが原因で早死。

実在の芸術家の自伝映画です。このバスキア役の俳優さん(ジェフリー・ライト)が、抜群なのよ。そのものなの。いや、バスキア本人のことは知りませんけど、「演じている」と言う空気が無いの。この人、先日見た『007 慰めの報酬』に出ているらしいんだけど、いたっけ?・・・いや、いたっけ、というより映画の内容もほとんど覚えていないので思い出しようがないんだけど(殴)。恋人であるジーナ(クレア・フォーラニー)のきれいなこと。当時のNYだって人種差別はあっただろうから、バスキア(黒人)とジーナ(白人)カップルってそれだけで珍しかったんじゃないかと思う。

アーティスティックと言えば聞こえは良いけど、要は変わってるのよ、バスキア。だってテーブルにソースを塗りたくって、そこに指で絵を書くのよ。しかもまだ無名のとき、普通の人に受け入れられるわけが無いでしょ?でもジーナは受け入れてくれるのね。彼女がすごく魅力的なのよ。包み込むような優しさがあって、だからといって母親と息子のような関係ではなく、若いんだけど精神が成熟していると言うか。でもバスキアは自由奔放(+ジャンキー)で、ジーナを傷つけてしまうのね。そら離れていくわよ。


前回見て私がものすごく楽しめたのは、たぶんバソキアが生み出す絵に心うたれたんだと思うのよ。私の中には存在しない絵ばかりで、「こんな才能がいたの!?」と言う衝撃だったんだと思う。だから物語の内容は全然覚えてなかったんだけど(あ、毎度のことですが…)、バソキアのたたずまいとかアートが楽しくて新鮮だったんだと思う。10年後の今見てみると、自分の好きな芸術の傾向が前とは違うのね。それに自分の世界に無いあらゆるもの、例えば薬物だったりモダン・アートが生まれてくると言うその現場だったり、バスキアのむちゃくちゃだけどかわいらしさのある人柄だったり、そういうものを世の中の一部として吸収したかったんじゃないかと思う。それはドラッグを認めるという意味ではなく、「世の中にはそういう人もいる」というケースを自分の中に蓄積していく時期で、知らない世界を知りたくて仕方が無かったんだと思う。『バスキア』は私の知らない世界の話で、どう近所を探してみたって見つからない環境、出来事、状況だったから、学生だった私はそれが楽しかったんじゃないかと。


あらためて作品を見てびっくりしたんだけど、出演者がすごく豪華なの。
アンディー・ウォーホル役がデヴィッド・ボウイ。これがまた胡散臭いのよ。そこがいいんだけど。アンディーのマネージャーがデニス・ホッパー。バスキアのバイトの同僚が、ウィレム・デフォー。この映画の中でウィレム・デフォーに一番びっくりしたかもしれない。『プラトーン』の嫌な奴の役とか、マドンナと共演した『ボディーヒート』という3流映画とか。灰汁が強くてクセのある映画の出演が多いイメージなんだけど(バスキアも十分クセはあると思うけど)、この中のウィレム・デフォーはさわやかなの!たぶん映画の中で誰よりもさわやか。しかもちょっと髪が長めなのね。そしてアーティストの卵だったりするのよ。いやー、驚いたわ。ほかに、親友役にベニチオ・デル・トロ、ゲイリー・オールドマンやコートニー・ラブとか。この人はそのままの役だったけど。


・・・と長々と書きながら、実はちょっと退屈でした。映画の中に入り込むのが難しかったです。でバスキアという芸術家の存在や、現代アートへのとっかかり、それを取り巻く人間模様を知るにはいい映画かとおもいます。


おすすめ度:☆☆★




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