映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「This is England」

2008年01月03日 | 映画~た~
イギリスに来るときに、飛行機の中で見た映画の中の一本です。日本では、公開されるのかなぁ?


サッチャー政権、失業率上昇、生活の不安定、紛争…誰もが鬱憤を抱えて暮らしていた80年代のイギリス郊外の町の話。Drマーチンのブーツにチェックのシャツ、サスペンダーに坊主頭。スキンヘッズのグループに入った12歳のショーンが主人公。

自分よりも年上のスキンヘッズたちのグループに入り、少し大人びた気分でいただけならよかったのだが・・・。


生活の不安定さから湧き上がる強い怒りややり場のない憤りは、一部のものをイングランド至上主義、人種差別へと走らせてしまう。その強い主義を持った大人たちがターゲットにするのは、感性のまだやわらかい若者や子供たち。

主人公ショーンの変わり様は、子供だからこその残忍性がありありと表現され、見るものに不快感を与えるほど衝撃的。


一般の大人は、たとえば人種差別や至上主義のような強烈な主張を持っていながら、実はどこかに社会通念のような分別をわずかでも持っていることができるとする。逆に子供は、「何かがおかしい」と感じるよりも先に、教えられたことを「それが当然のこと」であるという洗脳が何よりも勝ってしまう。大人にはいろいろな事柄を比べるだけの経験もあるし、事例も知っている。子供には経験も知識もない。自分を取り囲む世界が限られているゆえに、また自分で環境を選べないがゆえに、「自分がいる社会=正しい」という認識になってしまってもおかしくない。

しかしこの映画でも描かれているが、極端な主義・主張は社会や人間性のひずみから生まれるものであり、その中にもろさや矛盾を併せ持っている。まっとうな筋が通っていないから、考え方に偏りがあり一貫性がない。時に彼らの思う強さ(暴力)のみで強引に突き進もうとする。


イギリス英語やファッション、若者文化を楽しむだけでは終われない。見る側に問題を投げかけ、苦しめる映画だ。



お勧め度:☆☆☆☆