チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「ラ・フォリア/コレッリ没後300年」

2013年01月08日 00時49分51秒 | 説くクラ音ばサラサーデまで(クラ音全般
[「武蔵野のおもかげはわずかに入間郡に残コレリ」
と自分は文政年間にできた地図で見たことがある]
という一文は国木田独歩の小説「武蔵野」の書き出しである。
今日、1月8日は、
Arcangelo Corelli(アルカーンジェロ・コレーッリ、1653-1713)
が死んで300年にあたる日である。
コレッリといえば「ラ・フォリア」、
と言えば、
コレッリといえば「ラ・フォリア」、
とオウム返しな答えが返ってくるほど、
後世のラフマーニノフがコレッリ固有のものと誤解したほど、
「ラ・フォリア」はコレッリの代表作である。いうまでもなく、
「ラ・フォリア」は舞曲の名称である。
スペイン発祥ともサラバンドとも関係がありそうともいわれてるが、
その起源や語義は今では不確かとなってしまってる。一説には、
「狂気」を表すともいわれてるが、その根拠は示されてない。
私見では……
英語のfoolと同源の仏語に"folie(フォリ)"という語がある。
エドゥアル・マネの晩年の大傑作「フォリ=ベルジェルの酒場」の
"Folies(フォリ)"である。
(cf;「フォリー=ベルジェールのバー/マネによるキュビスムの萌芽」
http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/c037e2612965b6281c70b37166fff531)
座興の「道化踊り」は、宮廷道化師によって踊られた。
"folie(フォリ)"の原義はラテン語の"fol[l]is(フォリス)"、つまり、
「革袋」「鞴」である。フイゴ附きのミニ・バグパイプ
musette(ミュゼット)とmidget(ミジェット)が同一視された
……のである(※)。ともあれ、
古い舞曲のパターンのご多分にもれず、
そのバス進行が定型となって、それをもとに
主題が変奏される形になったものもある。そのひとつが、
このコレッリの「ヴァイオリンと通奏低音のための12曲のソナタ」の
第12曲「ラ・フォリア」である。ともあれ、
スペイン語での「フォ・リー・ア」の発音と同様に、
奇数小節の第2拍にアクセントが置かれる。

[Adagio、3/4拍子、2♭(ニ短調)]
♪ラーーー・ラーーー・ー<シー│>♯ソーーー・ーーーー・♯ソーーー│
<ラーーー・ラ(tr)ーーー・ーー>ソ<ラ│<シーーー・ーーーー・シーーー│
<ドーーー・ドーーー・ーー<レー│>シーーー・ーーーー・シーーー│
>ラー>♯ソー・<ラーーー・ーー<シー│>♯ソーーー・ーーーー・♯ソーーー♪

バスが、
♪ラーーー・ーーーー・ーーーー│>ミーーー・ーーーー・ーーーー│
<ラーーー・ーーーー・ーーーー│>ソーーー・ーーーー・ーーーー│
<ドーーー・ーーーー・ーーーー│>ソーーー・ーーーー・(<♯ソーーー)│
<ラーーー・(>ファーーー・ーーーー)│>ミーーー・ーーーー・ーーーー♪
となってる。

この定型低音進行を、ベートーヴェンはその
「交響曲第5番」の第2楽章(変奏曲)
[Andante con moto、3/8拍子、4♭(変イ長調)]
に引用して「ラ・フォリアのコスプレ」に興じてる。
167小節(166小節第3拍)からの
実質変イ短調部分である。
チェロ+(オクターヴ下の)コントラバスが、
♪(ラーーー)│
ラーーー・ラーーー・ラーーー│<ミーーー・ミーーー・ミーーー│
<ラーーー・ラーーー・ラーーー│>ソーーー・ソーーー・ソーーー│
<ドーーー・ドーーー・ドーーー│>ソーーー・ソーーー・ソーーー│
<ラーーー・ラーーー・ラーーー)│>ミーーー・ミー(>ラー)♪
と「ラ・フォリア定番低音」をピッツィカってる上で、
♪ミーッ●<ラッ│
<ドーーー、・ドーッ●>シッ・>ラーッ●<ドッ│>♯ソーーー・ーーーー、・<ラーッ●<シッ│
<ドーーー、・ドーッ●>シッ・>ラーッ●<ドッ│<レーーー・ーーーー、・>ドーッ●<レッ│
<ミーーー、ミーッ●>レッ・>ドーッ●<ミッ│>レーーー・ーーーー、・<ミーッ●>レッ│
>ドーーー、・ドーッ●>シッ・>ラーッ●<ドッ│>シーーー・ーー(<ドー・>ラー<ドー)♪
とフルート1管+(オクターヴ下の)クラリネット1管+(さらにオクターヴ下の)ファゴット1管
が短化された主要主題をスタッカってる。
どことなく都の空のかなたで木管の響がする、のである。
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