12月6日は、俳優、鶴田浩二が生まれた日(1924年)だが、米コミュニティー史上の巨人キャスリーン・キンケイド(愛称キャット)の誕生日でもある。米ヴァージニア州にある「ツイン・オークス・コミュニティー」の創設者である。
キャット・キンケイドは1930年、米ワシントン州シアトル生まれ。
彼女が生まれた家庭は貧しく、ばらばらだった。彼女が小さいときに父親が亡くなり、母親はべつの男と再婚した。再婚相手のその義父によって、キャットとその妹は性的虐待を受け、そのかどで義父は刑務所に入れられた。それからキャットはおばに預けられたが、おばはこの姪に冷たく、つねに批判的だったという。
17歳になったキャットは、こういう信条をもっていた。
「人間は誰でも、この世界にあるいいものや利点、それから不備などの悪い点をも含めて、すべてを平等に分けた自分の分け前を受けとる権利をもっている」
そして、彼女は終生この信条をもちつづけた。
キャットは35歳のころには、カリフォルニア州アズーサの町で、会社の事務仕事をしてひとり娘を養う母子家庭の母親となっていた。キャットは退屈さと無意味さをしか見出せない街の仕事に別れを告げ、娘を連れて、仲間をつのり、ワシントンDCで都市型コミュニティー「ウォールデン・ハウス」を立ち上げた。やがてそこの運営にゆきづまると、今度は、ミシガン州アナーバーでのコミュニティー会議に集まった人々と手と手をとりあって、ヴァージニア州ルイザの地にツイン・オークス・コミュニティーを創設した。
このツイン・オークスは現代でもつづいていて、農場を経営し、家畜を飼い、ハンモックを編んで出荷し、また豆腐を作って売りながら、百人ほどの住人たちが、この上なく自由で愉快な人生を謳歌している。ツイン・オークスは、おそらく現在ある世界にあるコミュニティーのうちで、もっとも有名な団体のひとつだろう。
彼女が書いた本を自分は邦訳、出版した。それが『ツイン・オークス・コミュニティー建設記』である。ツイン・オークスについては、この本と、それから拙著『コミュニティー 世界の共同生活体』をご参照いただきたい。
ツイン・オークスの存在や、彼女の著書が、世界のコミュニティーの関係者に与えた影響ははかりしれない。その多くが短命に終わる運命にあるコミュニティーのなかで、ツイン・オークスは希有な成功例といえる。コミュニティーの世界では、キャットは偉大な成果をなし遂げ、数えきれない多くの人々に影響を与えた偉人である。
キャットは2008年7月3日、ツイン・オークスの自室で静かに息をひきとった。
その数カ月前に会ったとき、彼女は言っていた。
「ガンでなければ、もう3年くらいは生きられるでしょうが、わたしはもう長く生きられない」
キャットのことばにこういうものがある。
「成功するためには、夢を現実にすり合わせる必要がある、けっして夢をあきらめることなく」
(2015年12月6日)
●おすすめの電子書籍!
『コミュニティー 世界の共同生活体』(金原義明)
ドキュメント。ツイン・オークス、ガナス、ヨーガヴィル、ロス・オルコネスなど、世界各国にある共同生活体「コミュニティー」を実際に訪ねた経験をもとに、その仕組みと生活ぶりを具体的に紹介する海外コミュニティー探訪記。人と人が暮らすとは、どういうことか?
『ツイン・オークス・コミュニティー建設記』(キャスリーン・キンケイド著、金原義明訳)
米国ヴァージニア州にあるコミュニティー「ツイン・オークス」の創成期を、創立者自身が語る苦闘と希望のドキュメント。彼女のたくましい生きざまが伝わってくる好著。原題は『ウォールデン2の実験』。B・F・スキナーの小説『ウォールデン2』に刺激を受けた著者は、仲間を集め、小説中のコミュニティーを現実に作って見せたのである。
●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.com
キャット・キンケイドは1930年、米ワシントン州シアトル生まれ。
彼女が生まれた家庭は貧しく、ばらばらだった。彼女が小さいときに父親が亡くなり、母親はべつの男と再婚した。再婚相手のその義父によって、キャットとその妹は性的虐待を受け、そのかどで義父は刑務所に入れられた。それからキャットはおばに預けられたが、おばはこの姪に冷たく、つねに批判的だったという。
17歳になったキャットは、こういう信条をもっていた。
「人間は誰でも、この世界にあるいいものや利点、それから不備などの悪い点をも含めて、すべてを平等に分けた自分の分け前を受けとる権利をもっている」
そして、彼女は終生この信条をもちつづけた。
キャットは35歳のころには、カリフォルニア州アズーサの町で、会社の事務仕事をしてひとり娘を養う母子家庭の母親となっていた。キャットは退屈さと無意味さをしか見出せない街の仕事に別れを告げ、娘を連れて、仲間をつのり、ワシントンDCで都市型コミュニティー「ウォールデン・ハウス」を立ち上げた。やがてそこの運営にゆきづまると、今度は、ミシガン州アナーバーでのコミュニティー会議に集まった人々と手と手をとりあって、ヴァージニア州ルイザの地にツイン・オークス・コミュニティーを創設した。
このツイン・オークスは現代でもつづいていて、農場を経営し、家畜を飼い、ハンモックを編んで出荷し、また豆腐を作って売りながら、百人ほどの住人たちが、この上なく自由で愉快な人生を謳歌している。ツイン・オークスは、おそらく現在ある世界にあるコミュニティーのうちで、もっとも有名な団体のひとつだろう。
彼女が書いた本を自分は邦訳、出版した。それが『ツイン・オークス・コミュニティー建設記』である。ツイン・オークスについては、この本と、それから拙著『コミュニティー 世界の共同生活体』をご参照いただきたい。
ツイン・オークスの存在や、彼女の著書が、世界のコミュニティーの関係者に与えた影響ははかりしれない。その多くが短命に終わる運命にあるコミュニティーのなかで、ツイン・オークスは希有な成功例といえる。コミュニティーの世界では、キャットは偉大な成果をなし遂げ、数えきれない多くの人々に影響を与えた偉人である。
キャットは2008年7月3日、ツイン・オークスの自室で静かに息をひきとった。
その数カ月前に会ったとき、彼女は言っていた。
「ガンでなければ、もう3年くらいは生きられるでしょうが、わたしはもう長く生きられない」
キャットのことばにこういうものがある。
「成功するためには、夢を現実にすり合わせる必要がある、けっして夢をあきらめることなく」
(2015年12月6日)
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『コミュニティー 世界の共同生活体』(金原義明)
ドキュメント。ツイン・オークス、ガナス、ヨーガヴィル、ロス・オルコネスなど、世界各国にある共同生活体「コミュニティー」を実際に訪ねた経験をもとに、その仕組みと生活ぶりを具体的に紹介する海外コミュニティー探訪記。人と人が暮らすとは、どういうことか?
『ツイン・オークス・コミュニティー建設記』(キャスリーン・キンケイド著、金原義明訳)
米国ヴァージニア州にあるコミュニティー「ツイン・オークス」の創成期を、創立者自身が語る苦闘と希望のドキュメント。彼女のたくましい生きざまが伝わってくる好著。原題は『ウォールデン2の実験』。B・F・スキナーの小説『ウォールデン2』に刺激を受けた著者は、仲間を集め、小説中のコミュニティーを現実に作って見せたのである。
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