1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

3月11日・ルパート・マードックと感性

2021-03-11 | ビジネス
3月11日は、2011年には東日本大震災があった日だが、オーストラリア出身のメディア王、ルパート・マードックの誕生日でもある。

キース・ルパート・マードックは、1931年、オーストラリア南東部の街、メルボルンで生まれた。英国、アイルランド、スコットランドの血を引いていて、父親は地方紙の経営者だった。ルパートには、3人のきょうだいがいたが、いずれも女子だったため、彼は小さいころから、父親の跡継ぎとして育てられた。
マードックが英国のオクスフォード大学在学中の21歳のとき、父親が没した。彼は父親のビジネスを引き継ぐため、急きょオーストラリアへ帰国。父から受け継いだ夕刊紙「アデレード・ニューズ」紙の売り上げを伸ばして成功させると、ライバル紙だった「アドバタイザー」を合併吸収、南西部の街パースの日曜紙「サンデー・タイムズ」を買収、シドニーのタブロイド紙「ミラー」を買収と、拡大路線をひた走り、「ミラー」をセンセーショナルな紙面作りで、シドニー最大の大衆紙に育て上げた。
オーストラリアでの成功を踏まえ、マードックは、学生時代を過ごした英国に進出。
37歳の年に、ロンドンの大衆日曜紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」を、翌年に夕刊紙「サン」を買収。「サン」の第三面に、毎日、トップレスの女性のヌード写真を掲載するという手法で、経営不振にあえいでいたこのタブロイド紙を復活させた。
英国の高級紙「タイムズ」、ケーブルテレビ「スカイ・テレビ」の買収をへて、米国に進出し、米国の「21世紀フォックス」を買収。マードックは54歳のとき、米国国籍を取得して「フォックス・テレビ」を開始し、インターネットにも進出した。マードックのニューズコーポレーションは、新聞、テレビ、インターネットなどのメディアを傘下に置くマルチメディア・コングロマリットとなった。

1996年に、マードックがソフトバンクの孫正義と組んで、テレビ朝日の株式を大量に買い取り、同社の筆頭株主に躍り出て、世間を騒がせたことがあった。下品、わいせつ、スキャンダル、売れるものならなんでもOK、という大衆路線で成功を収めてきたマードックが、吉本やジャニーズなど大手芸能プロの遊び場と化し、すでに下がりきった感のある日本のテレビ・レベルを、これ以上どう下げてくるか、見てみたかった気もするが、彼らの資本参加撤退により、それは見られずじまいとなった。

世界のメディア分野では、かなり寡占化が進んでいて、タイム・ワーナー、ディズニー、バイアコムなど、マードックのグループよりも規模が大きいグループもある。
われわれは知らぬ間に、すでにかなりの部分、誰かの色めがねを通してものを見るようになっている、ということだろう。たとえば、ディズニーを筆頭とするハリウッドのファンタジー映画やアクション映画を、無批判に抵抗感なく楽しめる感性は、すでに異常である。

マードックは言っている。
「強い企業を築くことはできない、いちいち会議や役員会にはかっているようでは。経営者が自分自身で決定できるようにしなくてはならない。(You can't build a strong corporation with a lot of committees and a board that has to be consulted every turn.You have to be able to make decisions on your own.)」
(2021年3月11日)


●おすすめの電子書籍!

『ビッグショッツ』(ぱぴろう)
伝記読み物。ビジネス界の大物たち「ビッグショッツ」の人生から、生き方や成功のヒントを学ぶ。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、ソフトバンクの孫正義から、デュポン財閥のエルテール・デュポン、ファッション・ブランドのココ・シャネル、金融のJ・P・モルガンまで、古今東西のビッグショッツ30人を収録。大物たちのドラマティックな生きざまが躍動する。


●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.jp


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3月10日・ビズ・ストーンのつ... | トップ | 3月12日・ニジンスキーの跳躍 »

コメントを投稿

ビジネス」カテゴリの最新記事