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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

1月28日・ファン・コーレンの円周率

2014-01-28 | 科学
1月28日は、作家の小松左京が生まれた日(1931年)だが、16世紀の数学者、ルドルフ・ファン・コーレンの誕生日でもある。
いまとなっては見る影もないが、自分は高校2、3年のころは、数学が比較的得意だった。
とくに2年生のころは、中間・期末テストで百点満点をいく度かとった(満点は、中学のときでも、めったになかった)。
そんな過去の栄光の片鱗もうかがえないありさまとなった昨今、ふと円周率について調べていて、ファン・コーレンのことを知った。彼は16世紀から17世紀にかけて生きた人で、円周率を35ケタまで計算した数学者である。

ルドルフ・ファン・コーレンは、1540年、ドイツのヒルデスハイムで生まれた。後にネーデルランド(オランダ)へ移り、デルフトの街で数学教師となり、同時にフェンシングも教えていた。
50歳前後から円周率の計算に身を入れだし、彼より1700年ばかり先に生まれた古代ギリシアのアルキメデスと同じ計算方法でもって、円周率の、より正確な算出に挑んだ。
56歳で数学書『円について』を出版し、そのなかで彼は小数点以下20ケタまでの円周率を示した。その後さらに研究してそれを35ケタまでのばした。
フェンシングも続けていて、54歳のとき、ライデンにフェンシングの養成学校を創設。
60歳のとき、ライデン大学初の数学教授となり、1610年12月の大晦日にライデンの地で没した。70歳だった。彼の墓碑には、
「3.14159265358979323846264338327950288...」
と、彼が算出した円周率の値が刻まれた。

アルキメデスやファン・コーレンが円周率をどうやって計算したかというと、まず、角の多い正多角形を考える。正三角形、正四角形、正五角形、正六角形……正二十四角形……などと角の数を増やしていくと、しだいにそれは円に限りなく近づいてゆく。
これを利用して、ファン・コーレンは、正4×(2の28乗)角形(=約10億角形)とか、正3×(2の31乗)角形(=約60億角形)などといったものすごい多角形を考えて計算し、そこから、円周率はこの数値とこの数値のあいだにあるはずだ、と、数を割り出していったようだ。ドイツでは円周率のことを「ルドルフ数」とも呼ぶらしい。

スタンリー・キューブリック監督の映画「博士の異常な愛情」に登場するストレンジラブ(異常な愛)博士のモデルと言われる「コンピュータの父」フォン・ノイマンは、1949年にコンピュータを70時間まわしつづけて、円周率を小数点以下2037ケタまで計算した。
現在ではスーパーコンピュータによって小数点以下10兆ケタまで計算されているらしい。

中学一年生のとき、数学の教師が、円周率を黒板に書き並べ、覚え方を教えてくれた。
「産医師異国に婿、産後疫なく(さんいしいこくにむこ、さんごやくなく)」
その授業中に何度かそれを頭のなかで暗唱して以来、微分だとか積分だとかのほかの数学のことはほとんど忘れてしまったくせに、これだけはいまだに忘れないで覚えている。
なにかとりたてて役に立つわけでもないけれど、なぜかひかれる、というものに、生きているとときどき出会う。自分にとっては、円周率がそのひとつである。
(2014年1月28日)




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