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6月21日・スノーデンの道

2024-06-21 | 歴史と人生
6月21日はフランスの哲学者、ジャン=ポール・サルトルが生まれた日(1905年)だが、合衆国の諜報活動の内部告発者、エドワード・スノーデンの誕生日でもある。

エドワード・ジョセフ・スノーデンは1983年、米国ノースカロライナ州のエリザベスシティで生まれた。父親は沿岸警備隊員で、母親は連邦裁判所の職員だった。
国家公務員の両親は、エドワードが16歳のとき離婚した。
ギリシア神話の愛読者だったスノーデンは、同州ボルチモアの高校を退学したが、大学受験資格を得て、大学に進学し、プログラミングなど計算機科学を専攻した。が、中退した。頭脳優秀な彼はそのころからインターネット上では投稿者として有名人だった。
愛国主義者だったスノーデンは21歳になる年に、米国陸軍に志願して入隊し、そのITに関するスキルを認められて、技術担当の兵士となった。しかし、訓練中に足を骨折し、除隊となった。
治療後、スノーデンはその能力を買われてスカウトされ、国家安全保障局(NSA)や中央情報局(CIA)などに分析官として勤務した。諜報活動の最前線でコンピュータ技術を駆使した情報収集やシステム構築をおこない、スイスのジュネーヴ、日本の横田基地内、米国ハワイのNSAの情報拠点などに在籍した。そうした職務のなかで、米国のネット技術を駆使したセキュリティ、ハッキング、監視、電話盗聴を目の当たりにした。彼は、中国政府が電話やネットを駆使し10億超の全国民を監視する体制に驚き、嫌悪した。また彼は、米国のNSAやCIAが、盗聴して調べあげた個人情報から標的をしぼり、その人物にわなをしかけ、スパイに仕立て上げていく様を知り、母国に幻滅していった。
スノーデンは20代で20万ドル以上の年収をもらう高給取りだったが、お金や身の安全より、みずからの信じる正義にしたがって生きることを決心した。
2012年の暮れ、29歳だったスノーデンは、ジャーナリストと接触を試み、当局の監視の目をうまくかわして接触し、2013年に上海へ渡った。そこで、自分が持ち出した米国の国家機密のデータを渡し、インタビューを受け、合衆国が米国民に敷いている監視体制や謀略をなどを暴露した。逮捕や暗殺の危険をすりぬけて打った大博打だった。
2013年6月、「ガーディアン」誌に最初の記事が載り、内部告発された情報は全世界の知るところとなった。独、仏、日など同盟国の大使館、首相に対する盗聴、日本の防衛システムにマルウェアが仕組まれている事実も暴露された。
米オバマ政権はすぐに犯罪者として彼の逮捕に乗り出し、関係諸国へ彼の身柄の引き渡しを要請した。スノーデンは亡命先を模索し、結局ロシアに受け入れられた。
2022年9月、ロシアのプーチン大統領はスノーデンにロシア国籍を与える大統領令に署名した。以後、スノーデンはロシアで暮らしている。

オリバー・ストーン監督の映画「スノーデン」を観た。スノーデンは知力、行動力、勇気と三拍子そろった傑物である。自分など三つとも乏しく、逆立ちしても、まねできない。ウィキリークスのジュリアン・アサンジもそうだが、命の危険を承知しつつ、真実と正義のために、巨大国家と対決する姿勢にはまったく頭が下がる。(アサンジはスノーデンの逃亡生活を助けたそうだ)
会社など組織のなかで保身に夢中になるあまり、人間性や倫理を見失ってしまった日本人を多く見てきた目には、スノーデンのような人が異星人に見える。
(2024年6月21日)



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