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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月12日・ヘンリー・ソローの夢

2018-07-12 | 歴史と人生
7月12日は、デザイナー、石岡瑛子が生まれた日(1938年)だが、米国の思想家、ヘンリー・ソローの誕生日でもある。

ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、1817年、米国マサチューセッツ州のコンコードで生まれた。ハーヴァード大学を卒業した後、教師になったが、当時の生徒に体罰を与えるやり方に反発して辞職した。彼は鉛筆製造人、紙やすり製造人、測量、大工、ペンキ塗りなど、お金が必要になると、その都度いろいろな職についた。
28歳になる年の独立記念日(7月4日)に、彼はコンコードの町から南へ2キロメートルほど行ったウォルーデン池のほとりの森に小屋を建て、それから2年2カ月のあいだひとりで暮らした。そのときの生活記録が『ウォールデン(森の生活)』で、彼が37歳のとき、出版されると、この本はベストセラーとなり、米国が世界に誇る古典となった。
有名になったソローには、原稿の依頼や、講演の依頼が舞い込んだ。
ソローは、ラルフ・エマーソンや、ブロンスン・オルコットといった超絶主義者の仲間たちと親交を結んだ。そして彼は奴隷制に反対し、奴隷制や戦争に反対して税金の納付を拒否して投獄された。
生涯独身を通したソローは、南北戦争中の1862年5月、結核のためコンコードで没した。44歳だった。翌年、リンカーン大統領が奴隷解放宣言をおこなった。

ソローが『ウォールデン』を書いた約百年後、行動主義心理学者のB・F・スキナーが理想のコミュニティーを描いた小説『ウォールデン2』を書いた。
その小説を読んだキャスリーン・キンケイドたちが、ヴァージニア州にツイン・オークス・コミュニティーを創設し、彼女はコミュニティーの初期の実録である『ウォールデン2の実験--ツイン・オークス・コミュニティーの最初の5年間』を書いた。
その邦訳が『ツイン・オークス・コミュニティー建設記』であり、こうしたコミュニティー運動について書かれたのが『コミュニティー 世界の共同生活体』である。

友人のエマーソンは、ソローについてこう書いている。
「彼は、ロンドン一帯から収集されたニュースや名文句をいらいらしながら聞き、自分ではいくら慇懃であろうと努めても、こういう小話のたぐいは彼を疲労させました。そういう連中はすべてたがいに真似をし合っているだけで、しかも雛型はちっぽけなものでした。どうして彼らはできるだけはなれて生き、ひとりびとり自立した人間になることができないのでしょう。」(酒本雅之訳「ソーロウ」『エマソン論文集』岩波文庫)

ウォールデンの森での独り暮らしを総括して、ソローは言っている。
「わたしはわたしの実験によって少なくともこういうことをまなんだ──もし人が自分の夢の方向に自信をもって進み、そして自分が想像した生活を生きようとつとめるならば、彼は平生には予想できなかったほどの成功に出あうであろう。彼は何物かを置去りにし、眼に見えない境界線を越えるであろう。新しい、普遍的な、より自由な法則が、彼の周囲と彼の打ちに確立されはじめるであろう。」(神吉三郎訳『森の生活』岩波文庫)
ソローたち超越論主義者たちは、他人の気がしない。
(2018年7月12日)


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『コミュニティー 世界の共同生活体』(金原義明)
ドキュメント。ツイン・オークス、ガナス、ヨーガヴィル、ロス・オルコネスなど、世界各国にある共同生活体「コミュニティー」を実際に訪ねた経験をもとに、その仕組みと生活ぶりを具体的に紹介する海外コミュニティー探訪記。人と人が暮らすとは、どういうことか?


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