1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月26日・カール・ユングの夢

2018-07-26 | 科学
7月26日は、劇作家、バーナード・ショーが生まれた日(1856年)だが、心理学者、カール・ユングの誕生日でもある。

カール・グスタフ・ユングは、1875年、スイス、ボーデン湖畔のケスヴィルで生まれた。父親はプロテスタントの牧師だった。
バーゼル大学の医学部に進んだカールは、ゲーテ、カント、ニーチェなど著作を読みふける学生だった。彼は精神医学を専攻し、チューリッヒ大学のブルクヘルツリ精神病院の助手になり、27歳のころ『いわゆるオカルト現象の心理と病理』を出版。
病院の精神科医局長だった31歳のとき、当時、批判の的だったジクムント・フロイトを弁護する論文を発表し、学者たちから非難されたが、これをきっかけにフロイトとの文通がはじまった。
その後、ユングはフロイトといっしょにアメリカ旅行をする親しい間柄となったが、やがてユングはフロイトの学説に異を唱えだし、37歳で『リビドーの変容と象徴』を出版。精神病の原因を性欲に求めるフロイトの解釈を、原因の一部にすぎないと批判。
38歳のとき、ユングはフロイトから訣別状を受けとり、二人の決裂は決定的となった。
ユングは精神病者の妄想と神話との類似性を比較し、アフリカを旅行し、易や道教など中国の思想に触れ、ヨーロッパ以外の文化に触れることで、無意識の領域について研究を深めていった。スイス連邦工業大学やバーゼル大学の教授を務め、ハーバード大学やジュネーヴ大学の名誉博士号を受け、1961年6月、チューリッヒで没した。85歳だった。

フロイトはそれまで意味がないとされていた夢を検討し、無意識の世界に光をあてたが、ユングはそれを発展させ、無意識の領域を広げた。ユングによれば、わたしたちは無意識の領域で、人類の太古の記憶や未来ともつながっているという。

「グレート・マザー」「シンクロニシティ」など、ユングが提議した問題には興味深いものが多いけれど、読んだなかでは、つぎのエピソードがいちばん強く印象に残っている。

「私の同僚の医師の場合です。彼は私よりもすこし年上で、たまに一緒になると、きまって私の『夢判断』をからかっておりました。ある日街で出会いますと、彼は私にこう話しかけました『やあ、お元気ですか。相変らず夢判断ですか。ときに、ぼくはこの間馬鹿馬鹿しい夢を見ましたよ。こいつもなにかの意味があるんですかな。』彼が見た夢は次のようなものでした。『私は高山の険しい雪渓の上を登っていた。だんだん上へ登ってゆく。すばらしい快晴だ。登るにつれて、いよいよ気分がよくなる。こうしていつまでも登りつづけられたらなあ、と私は思った。頂上へへたどりついたときの幸福感と優越感は実に大したもので、天まで登れそうな気がしてきた。事実、私は空中を登っていった。わたしは完全な恍惚感の中で目がさめた。』
 私は彼にこう答えました。『困りましたね。あなたはどうやら登山は止められないようです。今後独りでゆくことだけは、ぜひとも止めて下さいよ。ゆくときには、案内人を二人連れていって下さい。案内人には絶対服従を誓うことですね。』彼は笑い出して、『むずかしい相談ですね。』といって別れました。」(カール・グスターフ・ユング著、江野専次郎訳『ユング著作集3 こころの構造』日本教文社)
同僚は、ユングから忠告を受けた三カ月後、案内人を連れずに登山して転落死した。
(2018年7月26日)



●おすすめの電子書籍!

『おひつじ座生まれの本』~『うお座生まれの本』(天野たかし)
おひつじ座からうお座まで、誕生星座ごとに占う星占いの本。「星占い」シリーズ全12巻。人生テーマ、ミッション、恋愛運、仕事運、金運、対人運、幸運のヒントなどを網羅。最新の開運占星術。


●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.com

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする