1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月6日・サラダ記念日の達成

2018-07-06 | 文学
7月6日は、女流画家、フリーダ・カーロが生まれた日(1907年)だが、サラダ記念日でもある。歌人の俵万智は、歌集『サラダ記念日』のなかで、こう歌った。

「この味がいいねと君が言ったから 七月六日はサラダ記念日」(『サラダ記念日』河出書房新社)

『サラダ記念日』が世に出たのが、1987年。
そして、ユーミン(松任谷由実)が「ANNIVERSARY」を歌ったのが、1989年。
以来、日本では純愛ブームとあいまって「○○記念日」と恋人や家族のあいだでマイ記念日を作る人たちが急激に増えた。

『サラダ記念日』が出て間もない、まだそれほど話題になっていないころ、たまたま俳句をやる友人にこの歌集を見せられた。
「これは、すごい」
短歌というと、頭では与謝野晶子のあたりで時間が止まっていたのだけれど、現代に、こんな風に日常のしゃべりことばで、しかもことばの美しさをくずさないで歌う方法があるのだと知らされた。日本語には、まだまだ可能性があったのだ、と。

「吾をさらいエンジンかけた八月の朝をあなたは覚えているか」(同前)

「同じもの見つめていしに吾と君の何かが終ってゆく昼下がり」(同前)

こうした短歌によって、作者の俵万智は角川短歌賞を受賞した。この本は280万部の大ベストセラーになり、高校教師だった俵万智は一気に有名人、人気作家となった。

ちなみに、俵万智が角川短歌賞を受賞したこのとき、次点で、惜しくも賞を逃したのが穂村弘で、こちらも脱帽するしかないすごい短歌のオンパレードである。

「酔ってるの? あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」

「猫なげるぐらいが何よ本気出して怒りゃハミガキしぼりきるわよ」

「海にでも沈めなさいよそんなもの魚がお家にすればいいのよ」(いずれも『シンジケート』沖積舎)

こうしてみると、バブル経済と言われた好況期は、文化の爛熟期で、新しい日本語の達成があちこちでなされていた時期なのかもしれない。
自分にもすてきな歌が歌えたらと思う今日はサラダ記念日。
(2018年7月6日)


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