10月18日は、「ジョニー・B・グッド」を書いた米国のギタリスト、チャック・ベリーが生まれた日(1926年)だが、哲学者、アンリ・ベルクソンの誕生日でもある。
アンリ=ルイ・ベルクソンは、1859年、仏国のパリで生まれた。父親はポーランド系ユダヤ人の音楽家だった。
18歳のとき、全国数学コンクールで一位を獲得した秀才だったアンリは、22歳のときに教授資格試験に合格し、30歳のときには『時間と自由』を書き、博士号を取得。
32歳のとき、ルイーズ・ヌービュルジェと結婚した。ルイーズは、『失われた時を求めて』を書いた作家、マルセル・プルーストのいとこで、結婚式では花嫁の付き添い役をプルーストが務めたという。
フランスの学問・教育の頂点のひとつを担う国立の高等教育機関、コレージュ・ド・フランスの講師を務めた後、41歳のとき、同校の哲学教授に就任した。
学校での講義以外にも、イタリアや英国など海外のさまざまな場に招かれ、さまざまなテーマについて講演をおこなった。
その国際的名声をたのまれ、58歳のときには、米国に第一次世界大戦への参戦をうながすための使節として派遣され、63歳で、国際連盟の国際知的協力委員会の議長となり、68歳のとき、ノーベル文学賞を受賞した。
60代なかばからリューマチをわずらっていたベルクソンは、第二次世界大戦中の1941年1月、ドイツ占領下のパリで気管支炎により没した。81歳だった。
著作に『物質と記憶』『笑いについて』『創造的進化』『精神のエネルギー』『持続と同時性』『道徳と宗教の二源泉』などがある。
ベルクソンは科学をはみ出した人で、彼は心霊研究会の集まりに顔を出した。失語症の研究から、精神と肉体は完全には照合しないことを発見した。
ベルクソンこそ、20世紀最大の哲学的問題だった。そして、いまだにベルクソンの問題は解決されていない。
たとえば、これは小林秀雄が講演で言っていたことだけれど、科学が仮定しているところによれば、人間の頭脳を細部にわたって精密に分析していけば、そのメカニズムを観察することによって、その人がどういう気持ちでいるかとか、自由についてどんな考えをもっているかとかが、わかるはずだ、というのが科学の確信である。なぜなら、科学は、肉体と精神は完全に並行しているという仮定に立って研究を進めている学問だからで、その大前提としている仮定が正しいかどうかは、科学者の知ったことではない。それは哲学の問題になる。その哲学の問題を、ほとんどの哲学者が引き受けなかったところ、ベルクソンは引き受けた。だから、ベルクソンの哲学は科学の領域を軽くはみだして、霊とか魂とかの分野にも平気で踏み入っていく。ベルクソンというのは、そういう大きな構えの思想家だった。ベルクソンは言っている。
「どこまで行けるか、確める方法は唯一つ。すぐにでも、出発して、歩き始めることだ。」
(2017年10月18日)
●おすすめの電子書籍!
『思想家たちの生と生の解釈』(金原義明)
古今東西の思想家のとらえた「生」の実像に迫る哲学評論。ベルクソン、ブッダ、道元、ルター、デカルト、カント、ニーチェ、ベルクソン、ウィトゲンシュタイン、フーコー、スウェーデンボルグ、シュタイナー、オーロビンド、クリシュナムルティ、マキャヴェリ、ルソー、マックス・ヴェーバー、トインビー、ブローデル、丸山眞男などなど。生、死、霊魂、世界、存在、認識などについて考えていきます。わたしたちはなぜ生きているのか。生きることに意味はあるのか。人生の根本問題をさぐる究極の思想書。
●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.com
アンリ=ルイ・ベルクソンは、1859年、仏国のパリで生まれた。父親はポーランド系ユダヤ人の音楽家だった。
18歳のとき、全国数学コンクールで一位を獲得した秀才だったアンリは、22歳のときに教授資格試験に合格し、30歳のときには『時間と自由』を書き、博士号を取得。
32歳のとき、ルイーズ・ヌービュルジェと結婚した。ルイーズは、『失われた時を求めて』を書いた作家、マルセル・プルーストのいとこで、結婚式では花嫁の付き添い役をプルーストが務めたという。
フランスの学問・教育の頂点のひとつを担う国立の高等教育機関、コレージュ・ド・フランスの講師を務めた後、41歳のとき、同校の哲学教授に就任した。
学校での講義以外にも、イタリアや英国など海外のさまざまな場に招かれ、さまざまなテーマについて講演をおこなった。
その国際的名声をたのまれ、58歳のときには、米国に第一次世界大戦への参戦をうながすための使節として派遣され、63歳で、国際連盟の国際知的協力委員会の議長となり、68歳のとき、ノーベル文学賞を受賞した。
60代なかばからリューマチをわずらっていたベルクソンは、第二次世界大戦中の1941年1月、ドイツ占領下のパリで気管支炎により没した。81歳だった。
著作に『物質と記憶』『笑いについて』『創造的進化』『精神のエネルギー』『持続と同時性』『道徳と宗教の二源泉』などがある。
ベルクソンは科学をはみ出した人で、彼は心霊研究会の集まりに顔を出した。失語症の研究から、精神と肉体は完全には照合しないことを発見した。
ベルクソンこそ、20世紀最大の哲学的問題だった。そして、いまだにベルクソンの問題は解決されていない。
たとえば、これは小林秀雄が講演で言っていたことだけれど、科学が仮定しているところによれば、人間の頭脳を細部にわたって精密に分析していけば、そのメカニズムを観察することによって、その人がどういう気持ちでいるかとか、自由についてどんな考えをもっているかとかが、わかるはずだ、というのが科学の確信である。なぜなら、科学は、肉体と精神は完全に並行しているという仮定に立って研究を進めている学問だからで、その大前提としている仮定が正しいかどうかは、科学者の知ったことではない。それは哲学の問題になる。その哲学の問題を、ほとんどの哲学者が引き受けなかったところ、ベルクソンは引き受けた。だから、ベルクソンの哲学は科学の領域を軽くはみだして、霊とか魂とかの分野にも平気で踏み入っていく。ベルクソンというのは、そういう大きな構えの思想家だった。ベルクソンは言っている。
「どこまで行けるか、確める方法は唯一つ。すぐにでも、出発して、歩き始めることだ。」
(2017年10月18日)
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古今東西の思想家のとらえた「生」の実像に迫る哲学評論。ベルクソン、ブッダ、道元、ルター、デカルト、カント、ニーチェ、ベルクソン、ウィトゲンシュタイン、フーコー、スウェーデンボルグ、シュタイナー、オーロビンド、クリシュナムルティ、マキャヴェリ、ルソー、マックス・ヴェーバー、トインビー、ブローデル、丸山眞男などなど。生、死、霊魂、世界、存在、認識などについて考えていきます。わたしたちはなぜ生きているのか。生きることに意味はあるのか。人生の根本問題をさぐる究極の思想書。
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