た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

K氏の夏

2016年08月19日 | うた

 

 夢とうつつを引き裂いてミンミン蝉が鳴いています。

 アスファルトが煮えたぎり 人の足元すくいます。

 暮れに妻を亡くしました。

 死因は一言で言えません。

 彼岸花の咲く坂道を

 かつてあなたと歩いたこの坂道を

 癒(い)エヌ疲労ニ打チヒシガレテ

 私は一人歩みます。

 

 身内の遺骸を餌として働きアリが引き摺ります。

 日輪は白く燃え盛り 頭上に留まり動きません。

 社会に妻を殺されました。

 それが隠れた死因です。

 彼岸花の咲く坂道を

 かつてあなたと歩いたこの坂道を

 静カナ怒リニ体ヲ震ワセ

 私は一人歩みます。

 

 記憶の重みに耐えかねて繋がれた犬が鳴いています。

 車がときおり走り去り むせた臭いを残します。

 私が妻を殺しました。

 ほとんどそれが真実です。

 彼岸花の咲く坂道を

 かつてあなたと歩いたこの坂道を

 無限ノ悔悟ニ苛(さいな)マレナガラ

 私は一人歩みます。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 暑中お見舞い申し上げます | トップ | leave me alone »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おひさしぶりです。 (N.Matsunaga)
2016-08-24 07:26:45
ブログ主の近況を良く知らないまま、
うたと現実の境目を理解できず、
おろおろしている凡人です。
このうたの内容は、ブログ主本人の事なのですか?
ブログ主のご家族は皆、息災ですよね?

返信する
N.M様 (阿是)
2016-08-25 08:16:38
お久しぶりです。ご愛顧ありがとうございます。このたびは動揺させてすみません。あくまでも「K氏」の夏であって、私自身の夏ではありませんので、ご安心ください。

私の家族は息災かと問われれば、皆息災です。私自身は、煮干しのような顔つきになりながらもなんとかこの夏を乗り切っています。
返信する

コメントを投稿

うた」カテゴリの最新記事