た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

K氏の夏

2016年08月19日 | うた

 

 夢とうつつを引き裂いてミンミン蝉が鳴いています。

 アスファルトが煮えたぎり 人の足元すくいます。

 暮れに妻を亡くしました。

 死因は一言で言えません。

 彼岸花の咲く坂道を

 かつてあなたと歩いたこの坂道を

 癒(い)エヌ疲労ニ打チヒシガレテ

 私は一人歩みます。

 

 身内の遺骸を餌として働きアリが引き摺ります。

 日輪は白く燃え盛り 頭上に留まり動きません。

 社会に妻を殺されました。

 それが隠れた死因です。

 彼岸花の咲く坂道を

 かつてあなたと歩いたこの坂道を

 静カナ怒リニ体ヲ震ワセ

 私は一人歩みます。

 

 記憶の重みに耐えかねて繋がれた犬が鳴いています。

 車がときおり走り去り むせた臭いを残します。

 私が妻を殺しました。

 ほとんどそれが真実です。

 彼岸花の咲く坂道を

 かつてあなたと歩いたこの坂道を

 無限ノ悔悟ニ苛(さいな)マレナガラ

 私は一人歩みます。

コメント (2)
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