夢とうつつを引き裂いてミンミン蝉が鳴いています。
アスファルトが煮えたぎり 人の足元すくいます。
暮れに妻を亡くしました。
死因は一言で言えません。
彼岸花の咲く坂道を
かつてあなたと歩いたこの坂道を
癒(い)エヌ疲労ニ打チヒシガレテ
私は一人歩みます。
身内の遺骸を餌として働きアリが引き摺ります。
日輪は白く燃え盛り 頭上に留まり動きません。
社会に妻を殺されました。
それが隠れた死因です。
彼岸花の咲く坂道を
かつてあなたと歩いたこの坂道を
静カナ怒リニ体ヲ震ワセ
私は一人歩みます。
記憶の重みに耐えかねて繋がれた犬が鳴いています。
車がときおり走り去り むせた臭いを残します。
私が妻を殺しました。
ほとんどそれが真実です。
彼岸花の咲く坂道を
かつてあなたと歩いたこの坂道を
無限ノ悔悟ニ苛(さいな)マレナガラ
私は一人歩みます。