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諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

263 幸福をどうするか #15 幸福の棲み処

2025年03月23日 | 幸福をどうするか
雪!の天城山🈡 天城トンネルからバスで修善寺に、伊豆急行で帰路。

前野さんはその研究成果によって幸福の4つの因子を提唱していることを紹介した。
そしてそれは、それまでの幸福学の成果と1500人によるアンケートによる結果を統計
ソフトによって解析した方法論として実証性あるものであることが、哲学や心理学とまったくことなるアプロ―トであるという。
復習すると、

第一因子 「やってみよう!」因子(自己実現の成長の因子)
第二因子 「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
第三因子 「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
第四因子 「あなたらしく!」因子(独立とマイペースの因子)


である。
そして、この因子を初期段階で一般の本に紹介した

前野隆司『幸せのメカニズム』 講談社現代新書

の巻末には「幸福に影響をする要因48項目」という付録がついている。
世界中の研究者がいろいろなところに幸福の「棲み処」を探し回ったことが想像できる。
また、48項目はそれぞれ我がこととしてとらえられ、同時に子どもたちの幸福へのアプローチにつながるように感じる。
長い引用だがわかりやすい。(引用元や年代は省略しました。)

年齢、性別、健康、宗教
①年齢と幸福の関係。さまざまな研究が行われており、たとえば、子供や老年に比べると中年は不幸な傾向がある、若者よりも高齢者のほうが満足度が高い傾向がある、などの結果があります。私のグループの調査では、年齢とともに幸福度が増大する傾向がみられました。
②性別と幸福の関係。こちらも多くの研究が行われています。あまり性差はないという結果と、やや女性の方が幸福という結果があります 。日本での研究では、女性のほうがやや幸福な傾向があるようです。
③身体的健康と幸福の関係に関する研究も多く行われています。その結果、健康は主観的幸福に大きな影響を及ぼすことが知られています。興味深いことに、医師による客観的な健康評価よりも、自己評価による健康(自分で健康だと思っていること)のほうが、幸福感との相関が高いことが知られています。
④対麻患者の主観的幸福は大幅に低下するが、時間が経つにつれて大きく回復するという結果があります。障害を受けた者の幸福度は少なくとも5年は元の水準に戻らないという結果もあります 。
⑤幸福な人は健康であるのみならず長寿である傾向が高いという研究結果もあります。
⑥信仰心が高い人はより高い主観的幸福を感じる傾向があるようです。ただし、アメリカでは信仰と幸福に高い相関がある一方、日本では信仰の幸福への影響が見いだせない、という研究もあります。

結婚、対人関係、社会的比較、感謝、親切
⑦結婚が幸福に影響することについては多くの研究があります。既婚者のほうが主観的幸福が高い傾向がありますが、近年その差は小さくなりつつあるそうです。我々の調査では、離婚した人の幸福度は未婚の人よりも低いですが、伴侶と死別した人の幸福度は結婚している人の幸福度と有意な差がありませんでした。
⑧夫婦の幸福度は子供の誕生後に低下し、子供が独立して家を出るまでそれが続く傾向があるようです。
⑨親密な他者との社会的なつながりの多様性(多様な人と接すること)と接触の頻度が高い人は主観的幸福が高い傾向がありますが、つながりの数(接する人の数)は主観的幸福にあまり関係しないようです。
⑩人は自分と関わりのある他の人々との比較によって、自分の主観的幸福を判断してしまう傾向があります。
⑪ 失業者の幸福度は低い傾向がありますが、同じょうな失業者が周囲にたくさんいる場合はその不幸を痛切には感じないようです。
⑫家族・友人関係の満足度と主観的幸福の相関は、日本のような集団主義的な社会では小さく、アメリカのような個人主義的な社会では大きいようです。
⑬アメリカでは「対人関係の満足度」と「自尊心」との相関が強いですが、日本では弱いようです。
⑭ボランティア活動や慈善行為は幸福度に大きく寄与します。月に一回同好会の集まりに参加するだけで、あるいは、月に一回ボランティア活動に参加するだけで、所得が倍増するのと同じくらい幸福感が高まるそうです。
⑮いざという時に頼れる人がいる、と回答した人の割合が多い国は、人生満足度の高い国であったという13か国国民調査結果もあります。
⑯他人のためにお金を使ったほうが、自分のために使うよりも幸せだという結果があります。
⑰感謝(gratitude)が物欲を低下させ、幸福を高める効果をもたらすことが知られています。
⑱親切心(kindness)に基づく行為を日々カウントすることによって、幸福度は高まるという研究結果があります。

性格、気質
⑲主観的幸福の基本水準は遺伝的な気質によって先天的に決定されているというショッキングな研究結果があります。人格特性や主観的幸福の50%程度は遺伝により説明できるという研究もあります。
⑳多くの研究で「外向的な人ほど幸福」な傾向が確認されています。
㉑幸福度の高い人はよい出来事を思い出しやすく、出来事をポジティブに解釈する傾向があります。
㉒日常生活の平凡な経験も「満喫する」態度を持つようにすると満足度が高まることが知られています。
㉓人は、良いことが起きると自分の手柄に、悪いことが起きると他人のせいにする、厄介で勝手な傾向を持っています。これは「ポジティブ幻想」と呼ばれています。
㉔神経症傾向の強い人は幸福感・人生の満足度が低い傾向があることが知られています。
㉕自己統制感(自分で自分を統制しているという感覚)の高い人は低所得でもあまり不幸を感じないことが知られています。
㉖オートテリック(自己目的的)な人ほどフローを体験しやすいことが知られています 。なお、フローとは、内発的に動機付けられた、時間感覚を失うほどの高い集中力、楽しさ、自己の没入感覚で言い表されるような意識の状態あるいは体験だといわれています。

目標、教育、学習、成長
㉗目標達成は幸福感に影響します。
㉘日常的目標と人生の目標の間に一貫性がある人は、人生満足度が高い傾向があります。
㉙教育と主観的幸福の間には有意な相関が見出せないと言われています。
㉚成績と幸福感には正の相関がありますが、非常に幸せな人は、もう少し幸福度が低い人よりも少し成績が低い頃向があるようです。
㉛ポジティブな気分になると記憶力は落ちる傾向があります。また、ポジティブな気分は「関係性への着目」を促す一方、ネガティブな気分は「個別要素への着目」を促す傾向があります。
㉜「抽象的な視点を促す群(学校の成績はおおざっぱにいいか悪いか)」と「はっきりとした基準を促す群(学校の成績の平均は何コンマ何点か)」を比較すると、前者の方が幸福感が高い傾向があります。
㉝多様な選択肢がある場合に「常に最良の選択を追求する人」よりも「そこそこで満足する人」のほうが幸福な傾向があります。また「最良を追求する人」の場合、選択し得られたことの幸福感よりも、選択から外したものを得られなかったことへの失望を強く感じてしまう傾向があります。

収入、雇用、消費、生活、趣味
㉞収入と幸福の関係については多くの研究があります。たとえば、「生活満足度」は年収と比例する傾向があるのに対し、「感情的幸福」は、年収75000ドルまでは収入に比例して増大するものの、75000ドルを超えると比例しなくなるという結果があります。同様に、長期的に見れば、収入と幸福の相関は弱く、収入が増大しても主観的幸福感は高まらない傾向があります。これを「快楽のランニングマシン」(人は快楽を求めて常にランニングマシンの上を走り続けるが、きりがない)と呼びます。
㉟多くの研究で、失業が不幸につながることが知られています。失業はその所得損失以上に幸福度を低下させるようです。研究者によっては、離婚や別居などの他のどの要因よりも失業は幸福を抑制するといいます。
㊱ものを購入する際に「あらゆる情報を仕入れ細かく吟味派」と「ある程度適当でOK派」を比較すると、前者の方がうつ傾向が高く、後者の方が幸福感が高い傾向があります 。
㊲ものを購入することは幸福感とあまり関係がないようです。
㊳テレビや映画を見ることよりも、運動、園芸、スポーツのほうが高い満足感をもたらします。
㊴テレビや服などの物質的満費よりも、コンサートや旅行などの体験的な満費のほうが、幸福感に強く影響します。
㊵音楽、絵画、ダンス、陶芸などの美しいものを見るよりも、それらを創造するほうが主観的幸福度が高い傾向があるようです。自分の顔を美しくする化粧も幸福と正の相関がありますが、整形は負の相関があります。
㊶スポーツ活動、社交クラブ、音楽・演劇団体、スポーツチームへの参加といったグループ活動は主観的幸福と相関があり、抑うつや不安を低減するといわれています。
㊷幸福度が最も高い上位10~12%の人々は、彼らよりもわずかに幸福度が低い人たちほどには高収入ではないし政治参加も積極的ではありません。
㊸アメリカの中高生への調査の結果、労働者階級の子供たちのほうが中上流階級の子供たちよりも幸福感が高いという結果もあります。

政治、安全、文化、その他
㊹直接民主制(政治プロセスへの参加)は人々の生活満足度を高めます。
㊺冷戦後、情勢不安のあったロシアや、イラクの侵攻危機下にあったクウェートでは、生活満足度は低かったことが知られています。
㊻東洋の集団主義文化においては、満足度と強い相関があるのは、「自尊心」よりも「調和」であることが知られています。
㊼アジア系の人は将来の目標達成につながる活動に幸福を抱き、欧米系はより刺那的なものに幸福を感じる傾向があります。
㊽幸福感の高い人は、左脳前頭葉部の活動が右脳前頭薬部の活動よりも活発だということが知られています。なお、チベットの仏教僧は、左脳前頭葉部の活動が右脳前頭葉部の活動よりも活発だそうです。また、瞑想の訓練を行っている人は、行っていない人よりも、左脳前頭葉部の活動が活発です。よって、左脳前頭薬部の活動は幸福や穏やかな心とかかわっているようです。

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