腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

絶対絶望少女 ~ダンガンロンパ Another Episode~(VITA版)

2022年08月08日 00時48分36秒 | PS VITAゲーム感想文
【ハード】PS VITA
【メーカー】スパイク・チュンソフト
【発売日】2014年9月25日
【定価】7150円(DL版)
【購入価格】0円(PSプラスフリープレイ1612)
【プレー時間】40時間


ダンガンロンパ。2010年にPSPで始まった人気読みゲーシリーズである。去年10周年イベントが開催され、割と盛大に祝われていた。
……俺は正直それを見て「こんなに人気あったの!?」と驚いたのだが。知名度はともかくカルト人気な作品と思ってたので。
俺自身は3年前にPS4版からシリーズに触れた。非常に遅いが、俺の場合いつものことなので気にしない。いや少しは気にしろ。
ビックリするほどグロくて悪趣味ながら、「逆転裁判」を参考にした裁判パートは面白く、「普通に良作」だったと思う。
一度聞いたら忘れられないモノクマのボイスも完全に耳に刻み込まれ、今では氏の名から連想されるのは青猫よりモノクマかも。
翌年には「2」をプレー。1の完全続編で、様々な改良を加えつつ物語は繋がっている。こちらも普通に良作だったと言っていい。
2を境に大山のぶ代氏は認知症が悪化し、現役を退いた。実質氏の声が聞ける最後の作品であろう。その意味でも価値があった。
ただ悪趣味度もパワーアップしていて、只管に「気分の悪い」ゲームだった。面白いのに褒める気にはなれない。うーむ。
あの悪趣味っぷりで多くのファンが付いている現実は正直理解出来ない。お前らほんまにダンガンロンパ好きなの? 正気?
よう分からんけど、俺はプレーを続ける。次はもちろんダンロン3! ……ではなく、外伝を挟む。「絶対絶望少女」である。

「絶対絶望少女 ~ダンガンロンパ Another Episode~」。外伝としてVITAで発売された、シリーズ第3作である。
何が外伝って、まず読みゲーではない。ジャンルはなんとTPS! 雰囲気こそ間違いなくダンロンだが、ゲーム性はまるで違う。
また1も2も行き先の限られた閉鎖空間の中での物語だったが、今作はジャンルの変更もあり、街中をかなり広く探索する。
まぁ厳密に言えば今作も閉鎖空間だが、これだけ広ければ違うと言えよう。そしてここで描かれるのは、「外の世界」である。
1と2は何せ主人公達が完全に閉じ込められていたから、絶望的に崩壊したとされる外部の環境を、実際に見ることはなかった。
だから俺はその辺が悪側のブラフではないかと思っていたくらいだ。今回、それが真実であり現実であることが描かれる。
物語は1と2の繋ぎで、バレも絡むから両方をプレーしてないと楽しめないと思われる。「プレーヤーへの配慮」なんて、ない。
撃ちゲーということで難度が心配になるかもしれんが、易普難の3段階が用意されており、易でも特にデメリットはない。
前2作と同様「誰でもプレーできる」ゲームであろう。……尤もそれは難度面の話で、世界設定・物語は絶対そうではないけどな。


開始。取り敢えずTPS部分だが、主人公は「普通の女子高生」であり、当然戦闘訓練など欠片も受けてない。ど素人だ。
故に銃撃なんか出来るわけない……ので、今作では「機械銃」から「プログラム弾」を「敵ロボ」に撃つスタイルになっている。
プログラムだから発射の衝撃もなく、機械相手だから殺傷もしない。ちなみに人間に撃っても当然ながら何の効果もない。
転がり回避や近接攻撃の要素はなく、極めてシンプル。弾の種類は幾つかあり、攻撃だけでなく仕掛けの起動にも撃ったりする。
しかし、近接攻撃は実はある。今作は主人公二人制で、二人は連れ立って行動する。そのもう一人が近接担当というわけだ。
それは1に登場した腐川冬子、の別人格キャラ「ジェノサイダー翔」である。最強の殺し屋という設定なので、実際に最強だ。
なんせ「敵の攻撃を一切受け付けない」のだ。つまり無敵。テキトーに攻撃ボタンを押すだけでいつの間にやら戦闘は終わる。
それじゃ強すぎるだろ……てことで、翔への交代には制限時間がある。またあくまで近接のみなので、遠い敵には攻撃不可能。
そうして二人を適宜交代させながらゲームを進める。撃ちゲーと言ってもガチでは全くないので、難度も含めて誰にでもやれる。
その意味じゃこのジャンルにした意義をあまり感じなかったが……まぁ現代的な作りとは言えるのかな。うーん。

TPS採用は戦闘よりフィールドの方に意義があったかもしれない。今作にはあちこち歩き回り探索するという遊びがある。
ゲーム進行は一本道だが、落ちてるアイテムや情報ファイルはかなりの数があり、それを集めていくだけでもそこそこ楽しい。
トロフィーネタにもなっているので手抜きは出来ん。アイテムはどれも光ってるから見逃すことはない。……古臭い表現だ。
フィールドはかなり広く、歩き回るのがかったるい面もあるが、今作はOWではなく、章よにり行動可能範囲がどんどん変わる。
まぁこれくらいなら騒ぐほどでもない。逆に「後で行けなくなる場所」がどんどん増えるので、アイテム収集には面倒な仕様だ。
フィールドでは各所に「モノックマン」という緩いパズルがある。プログラム銃と仕掛けでやるピタゴラ装置みたいなもんか。
基本的に考えれば解けるパズルだが、一部かなり意地悪なネタもある。まぁ解けなくても進めるし、リスタートも可能。
……問題は、これが章のクリア評価に大きく絡むこと。基本的に一発突破しないと最高評価を取れない。で、トロフィーも。
仕様は明らかに「試行錯誤して正解を見つけてね」なのに、クリア評価からは一発合格でないと認めないと切り捨てられる。
しかもパズルのくせにオブジェクトのモノクマの動作にランダム性があり、運が悪いと正解なのに失敗扱いになることもある。
基本的には面白い要素だったが、クリア評価のせいで嫌な気分になることが多かった。その点は完全に失敗していたと思う。
今作は1章1章が長いんだから、リスタートくらいは甘めに見るべきだろう。プレーヤーの時間と手間をもっと尊重しろ。はぁ。


と。ゲーム部分は、唐突なジャンル変更にやや戸惑ったものの、一般TPSよりかなり簡素で取っ付きやすかった。特に問題なし。
……しかして今作の特徴は、ゲーム性よりも物語や世界設定にあった。正直、凄かった。こんなゲームは他にないのではないか。
まず今作には明確に「敵」がいる。実はこれ、前2作にはなかった要素だ。両作とも、姿の見えない敵に苦しめられる構図だった。
モノクマという悪役こそ最初からいたが、奴は機械、当然背後で操っている人間がいる。しかしその正体は終盤まで謎だった。
それが今作では序盤から厳然と登場する。で、その正体は「子供」だ。正確な描写はないが、年齢は10~11歳くらいと思われる。
顔と名前の付いた5人の首謀者と、モノクマ型のマスクを被ったモブガキども。端的に言うと、こいつらが大人達に反逆をする。
目指すは「子供だけの楽園」だと。まぁよくある、ドラえもん的な夢想だ。……しかし無論、ダンガンロンパはそんな温くない。
ガキらは別に特殊能力を持たないが、何故かモノクマを意のままに操る。そして今作のモノクマは旧作に登場したものの量産型。
性能は旧作の奴の方が上だが、一般人に対する兵器としては何ら差がない。要するにガキらはモノクマを使い、大人を殺せる。
そしてそれは実行される。大人は数人がかりで武器を使いやっとモノクマ1体を倒せる程度。数百数千の群体相手に勝ち目はない。
街のあちこちで行われる一方的虐殺。ガキ達は罪の意識も良心の呵責もなく、寧ろ狩りゲーとして大人達を殺し続けていく。
実際、フィールドのあちこちにそういった死体の山がある。さすがにシルエット描写にされているが、ショッキングな映像だ。
「子供の悪い方向の妄想を現実にしている」のが今作の世界である。人は死んでも個人だけだった前2作より描写はずっとエグい。

そもそも「子供」は、創作においてタブーなところがある。特にエログロの対象にすることは、Z指定ゲームであっても御法度。
そのため、例えば自由に人を殺せる「アサシンクリード」では、町に子供が一切いなかったりする。理屈より倫理優先なのだ。
今作も子供をエログロの対象にしているわけではないが、明確に人殺しはさせている。それも所謂「ゲーム感覚の殺人」だ。
子供が悪役……ギャグやファンタジーではない現実路線の作品でこれは非常に珍しいのではないか。少なくとも俺は他に知らん。
そしてこの設定は、特異でありつつ俺に強いプレー意欲を起こさせるものであった。何でって? そらお前、ムカつくからよ。
俺はガキでも何でも「調子こいてる奴」が嫌いだ。世の中を舐めてる奴、自身の能力や立場を過大評価してる奴が大嫌いだ。
今作に登場するガキ、特に幹部の5人は、言動や態度だけなら実に子供らしい。それだけなら無論俺も目くじら立てたりしない。
だが奴らはモノクマという圧倒的な力を駆使する。大人達を徹底的に蹂躙し、殺害し、尊厳を奪い、ケラケラと嘲笑する。
ハッキリ言って、俺は今作ほど敵を憎んだゲームはない。多分。「絶対、何としても奴らを殺す」と決意した。超モチベ、だよ。

……しかし、そう上手くは運ばない。ガキ共への苛烈な殺意はゲームを進める強い動機にはなるが、それだけでは保たない。
今作はダンガンロンパ、そしてダンガンロンパの作風と言えば「悪趣味」である。それはもう、全ゲームで見ても屈指だろう。
元より殺人事件を主題にしてるんだから明るい世界になわけはないが、ダンロンはそんな前提を吹っ飛ばす勢いで悪趣味なのだ。
どこまでも主人公達を、そしてプレーヤーを精神的に嫌な気持ちにさせるように事態が動く。「よくもここまで」と心底思う。
冒頭に書いたが、俺はダンロン10周年が祝われてるのを見てかなり驚いた。あの悪趣味さに耐えうる客がこんなにいるのか、と。
それほどに、とにかく、只管に悪趣味なゲーム、ダンガンロンパ。……第三作たる今作は、間違いなくその点で過去一である。
街を歩けばあちこちに積まれてる死体の山。比喩ではない、本当だ。その側でキャッキャとはしゃいでいるモブのガキ共。
落ちているファイルには殺された大人達の怨嗟や嘆きがつらつらと。彼らの成れの果てが側に落ちている惨殺死体なのだろう。
中盤には生きている大人達と合流するが、彼らも自身が生き残ったというだけで、例外なく大切な人々を子供に殺されている。
どうだろうか。単純明快に、気が滅入るのである。このゲームを嬉々としてプレーできる人は結構マジでヤバいと思う。
敵に対する殺意でやる気が湧く一方、あんまりな悪趣味世界にやる気が失せる。こんなゲームが存在する。奥が深い。はぁ。

そして、やる気を削ぐ理由がもう一つ。こっちは純然たるゲーム的な問題だが……今作はテンポが悪い。非常に、非常に悪い。
ゲームはフィールド移動(出てくるモノクマを倒す)→イベント の繰り返しで進んでいく。この点には何も問題はない。
しかし今作は、イベントが毎回いちいち長いのだ。台詞が多く、フルボイスなので聴く時間もかかる。俺はボイスは聴く派だし。
それがポリキャラと2Dバストショットの表情だけでタラタラと続けられる。話の内容が無駄だとは思わんが、とにかく冗長だ。
それが終わり、やっと探索&バトルだと喜んでいても、ちょっと進めばまたイベント。小島監督の監修でも入ってんのかと。
元々が読みゲーだったことの弊害だろうか。表現したいことを全部盛り込んだせいで、ゲームとして太り過ぎに思える。
読みゲーだったらそれに合わせた体裁を整えられるが、今作のジャンルは違う。同じ感覚でイベントを作っちゃいかんだろう。
ちなみにスキップ周りも劣悪で、飛ばすことさえ楽ではない。これは2周目以降がスムーズに進まず非常にイライラさせられた。
イベントのダラ長さにより、沸騰する敵への怒りがどうしても冷めてしまう。実に勿体ない。いちいち尖ったゲームである。


とまぁやる気が激烈に湧いたら急激に萎えてそれでも続けたらウンザリしてきて……と何とも複雑怪奇な道を辿った。
しかしゲーム自体は詰まることなく、プレーしていれば進行する。そうしているうちに悪趣味さや冗長さにも徐々に慣れてきた。
先に進めば敵モノクマの種類が増え、同時に射出するプログラムの種類も増える。……が、撃ちゲー方面での変化はあまりない。
テキトーにやっていればそのうち倒せるし、面倒だったらジェノサイダーにチェンジすればいい。そこに緊張感は感じられない。
世界設定に合わせて難度も高めにしたら、さすがに厳しすぎだろうか。しかしこの調整はちょっと緩すぎだと思う。
2周目のハードも楽だった。まぁそれは引き継ぎありだから楽で当然だったが、「これなら1周目でもやれたな」と感じた。
「モノクマの右目を狙えばクリティカル」という要素があり、成功時は気持ちいいものの、これだけでは淡白である。
プログラム銃が活躍するのは戦闘よりモノックマンのパズルという印象が強い。要するに今作、アクション部分がイマイチだ。
幹部ガキとは当然ながらボス戦になるが、奴らが生身でかかってくるわけがなく、巨大ロボに搭乗する。……ワンパである。
実際どのボスも似たような攻撃と弱点で、せっかくの因縁の戦いが盛り上がらなかった。ボス戦でジェノサイダーは使えないし。
幹部5人は「勇者」「僧侶」等のRPG的職業を二つ名に持っているのだが、搭乗ロボや攻撃にその特徴があるわけではなかった。
せっかくジャンル変更したんだし、俺はそこについては好印象だったから、もっと質を上げてほしかった。……贅沢かのう。


物語。まず今作の主役は「苗木こまる」。本名である。名字で分かるが、1の主人公「苗木誠」の妹である。ピチピチの16歳。
……兄の名前はまともなのに、両親は何を考えて名付けたんだろう。当人が名前に一切不満を持っていないのが実に不思議だ。
彼女は物語開始の1年半ほど前に拉致された。そのままマンションで食事ありの軟禁生活を、理由も知らされず送っていた。
苗木誠以外の生徒達の家族も同様に扱われていたことが後に判明する。これをネタに殺し合いをさせるつもりだったとか。
で、その状況は1の結末によって終了した。現在、兄も所属する「未来機関」が世界を覆った絶望とその残党相手に戦っている。
こまるがいた街にもようやく未来機関がやってきて、彼女らを救い出す。そこで予期せぬガキらのクーデターが勃発。
シリーズの重要キャラである「十神白夜」はこまるを救出し特殊銃を託したものの、自身は連中に捕まり人質となってしまう。
十神を慕う(裏人格のジェノサイダーも同様)腐川冬子は当然救出を目論み、こまるに合流、二人はパーティを組む。
かくしてモノクマの暴れる危険な街からの脱出と十神救出のための冒険が始まった。こまるはただの女子高生なのだが。

そう、苗木こまるは普通の女子高生。尚監禁中にそうなったので、実際に高校に通ったことはない。でもセーラー服似合う。
1年以上マンションに閉じ込められるって相当気が狂いそうな設定だが、それ自体は平然と受け入れていた。結構凄い子かも。
しかし外に出てからはそうはいかない。そこからは、散々書いたように、悪趣味・残酷・絶望の展開が延々続く。
こまるは肉体的にも精神的にも普通の少女である。この異常事態に平然としていられるわけがない。あちこちでショックに蹲る。
何度も泣き、弱音を吐き、「もうやだよぉ……」と絶望する。プレーヤーとしてはもどかしいが、人間として極めて正常である。
一方、腐川冬子は一応異常事態に慣れているのか、十神救出の使命感からか、キャラに反して割と前向きに行動しようとする。
もちろん二人は噛み合わないが、協力を渋っていられる状況ではない。ぎこちないながら力を合わせ、やがて友情を育んでいく
この二人の友情描写は悪趣味オブ悪趣味たる今作で唯一「一般的価値観で美しい」もので、実際見所があった。いいね。
まぁ腐川の十神への恋心がギャグ描写ばかり(かつ現実的に考えて無理)なので、それを軸にした友情はしっくり来ないけどな。
十神が腐川にホンのちょっとだけでもデレる描写があればよかったと思う。少なくとも仲間意識くらいは見せたってもええやん。

二人に友情が芽生え、こまるが事態の解決を前向きに考えるようになっても、悪趣味な現実の勢いは全く止まることはない。
ガキ団は実質のところリーダー「モナカ」のワンマンチームで、他の連中が何だかんだでヘタれてもコイツだけは崩れない。
というのもこいつ、「超高校級の絶望」の信望者だった。5人全員が奴に対面し、訓示と影響を受けまくったという。
……ああ、また出たか。結局ダンガンロンパは奴と戦い続けるシリーズってことなんだな。恐らく「3」でもそうなんだろう。
俺なぁ。あいつのこと引っ張りすぎと「2」の時点で感じてたから、今作でまたそうなっててかなり萎えた。ワンパだろうよ。
まぁ1と2の間である今作でなら悪くないのかもしれんが……いつまでも死んだ人間が影響及ぼしてんなよ。それ希望だろよ。
絶望絶望言いながら気力と体力に溢れてるって設定、ええ加減に改めーや。そんな絶望があるかよ。言葉の定義が違うのか?
しかし、モナカの強烈なキャラは最後まで非常に立っていた。ライターの「人の心への悪趣味さ」が最大限に発揮されていた。
基本可愛い女の子ながら目が狂っていて、子供口調で腐った言葉を吐き、仲間のガキらも実際のとこ駒でしかないと思っている。
そしてただ黒いだけでなく、超有能。実は作中のモノクマら機械はこいつが指揮を取って作ったことが後に判明。アホか!!
当然ながらフィクション故に色々無茶がある今作だが、俺が一番不満を抱いたのはこの点だ。モナカ、10~11歳くらいだろ?
幾ら天才だろうと、そんな歳で大企業のロボット部門責任者とか、漫画の見過ぎじゃボケ!! これはない。呆れちまった。
「超天才が一晩でやってくれました」は創作において非常に便利な手法だからな。でもだからこそ、安易に頼っちゃならんよ。
せっかく超絶悪趣味根性でキャラが立ってたのに、残念である。まぁいずれにせよ、好感など一ミリも抱くことはない奴だが。

ゲームを進めれば、幹部ガキ5人との対決が当然ある。俺が待ち望んでいた瞬間だ。このガキどもに地獄の責め苦を与えてやる。
殺しはしない。そんな楽な結末は与えない。脳だけを生かし、激痛の電気刺激を永遠に与え続けるのだ。何かの小説であったろ。
……無論、そんな望みは叶わなかった。戦いはするが、ロボ越しだし、勝ってもそのままボカーン。痛めつけるなどあり得ない。
まぁ、想像通りだ。どんなに悪人であってもガキはガキ、そして今作は健全ゲーム機VITAのソフト。CEROやら何やらがある。
「死なせる」は可としても「ガキを痛めつける」など絶対不可。そんなことしたら中小メーカースパチュンがブッ壊される。
結局、モナカ含め誰一人として俺の望んだ報いの1/100も与えられなかった。カタルシスが欠片もない。ハッキリ、つまらない。
それどころか、爆散して死んだと思われていたガキ共も、EDにて生存が確認された。再び集まってなにやらやっている模様。
さすがにそれはないだろう。序盤にあれだけ溜め込んだ怒りを全く発散出来ない。ゲームを終えてもちっともスッキリしない。
「感情煽り」に関しては、もしかしたら俺が経験した全ゲームでも最高のものだったのに、最後は消化不良極まりなかった。
……これこそが、今作が描いた「絶望」なのかもね。抱いた感情は発散させられない。溜め込むもの。それが現実、と。はぁ。

そしてシナリオが進むと、所謂「ガキ共の事情」も語られる。当然ながら、悪のガキ共も最初からそうだったわけではない。
それだけ歪む事情があったということだ。言うまでもなく、全員親が原因だった。要するに虐待を受けていたわけである。
その辺の描写も今作ならではの悪趣味とねちっこさ全開で描かれていて、肉体的に精神的、果ては少女売春の強要までも。
非常にえげつなく、「これなら歪んでも仕方ない」と思える内容ばかりだった。……しかし、だ。だからって、許せはしない。
ガキ共のやったことはそんな事情をとうに飛び越えている。情状酌量などない。裁判を経ず、問答無用で残虐刑。それでいい。
現実の日本でも、唯一「外患誘致罪」は確定で死刑になる。それほどの罪は、あるのだ。ガキ共はそれに十分当て嵌まる。
悲惨な事情も、「まだ子供だから」という立場さえも凌駕する罪を奴らは犯した。プレーしたら分かる。そんな次元じゃない。
どんな事情が語られようと、俺は「で?」としか思えんかった。ガキ共が殺した大人達は別にその当事者でもないんだから。
「御託は要らん、罰を受けろ」である。最近の創作では正義の相対化は常識だが、あいつらはそんなんじゃない。「悪」だから。


グラフィックは、「ポリはもう一つだけど2D絵は綺麗」といういつものVITA仕様だった。まぁ今作はPS4版もあるけどさ。
背景をもう少し描き込んでほしかったと思う。どこもかしこもハリボテっぽく、臨場感が薄かった。望みすぎかね。
ムービーはかなり多く、恒例のお仕置きネタある。……まぁ知り合ったばかりの仲間がいきなり殺される超悪趣味ムービーだが。
演出面への熱意は大いに感じられるのだが、前述のようにそれがいちいち長く、スキップの反応も悪いのが頂けない。
個性的が過ぎるキャラばかりのシリーズにおいて、苗木こまるを「ごく普通の美少女」にしたことは、英断だったと言える。
正直こまるたん、可愛い。変人しかいない本編キャラよりずっと気に入った。「お兄ちゃん」もいい。……名前だけが、なぁ。

音楽はとにかく「絶対絶望少女」なる今作のテーマ曲があちこちで流れるので、こればかり目立っていた印象。いいこと、か?
あとはモノックマンのテーマもしょっちゅう対面するから耳に残った。レトロゲーリスペクツなクリアテーマも良かったな。
あ、それとガキ5人のテーマ。メルヘンチックで子供らしいメロディに残酷さが感じられるというバッチリな出来だった。
それ以外はシリーズ曲のアレンジで固められていた印象。シリーズ曲は好きなので文句はない。初代の校舎のテーマ、好きやわ。
ダンロンはシリーズ全てスポッチにサントラが置いてあるので、ありがたく聴かせて頂いている。……ええんかこれ。うーん。
今作はとにかくイベントが多く長く、ほぼフルボイスなので、声優さんの熱演っぷりも凄い。大変な仕事だったことだろう。
その分、聴き応えは十分。長すぎてダレることは正直あったが、演技面での不満は一切ない。見事なもんだったと思う。
こまるの普通さ、腐川の相変わらずっぷり、そしてモナカ役の平野綾がまた素晴らしく、キャラ立てに一役も二役も買っていた。
久しぶりに触れた平野綾の渾身の仕事が、この上なくムカつく殺したいキャラってのは、何か皮肉やのう。あの頃が懐かしい。
あ、モノクマのボイスは多いけど一言ものばかりで、旧作から摘出したものと思って間違いない。新録は皆無だろう。
もうあの声を新たに聴くことは永遠にないのだ。今は施設で穏やかに過ごしてるのかな。少しだけ、そう祈っておく。


一周クリアーすればトロコン狙い開始。今作はコン難度が低いが、ファイル集めや周回プレーに配慮がないから、面倒臭い。
とにかくキッチリ(解答を見ながら)ネタを潰しておかないと、一個でも忘れたらまた章の最初からやり直す羽目になる。
はい、俺はそうなりました。自分が悪いだけに文句は言えんが、もうちょいスキップが快適ならなぁ。言ってるやんけ。
能力引き継ぎでハードモードもやってみたが、大して変わらなかった。これなら素で始めても何とかなったと思う。
さほど苦労なくプラチナトロフィーゲット。むっふっふ、良い。いいね! 何度やってもこの時だけはいつも笑みが溢れる。
しかしこのシリーズの担当者がトロ好きに対してその悪趣味さを向けてこないのは、今更ながらありがたい話だね。
「徹底的に苦しむネタを入れてやろう、どうせこんなの狙うのは一般ユーザーじゃないし」と考えるスタッフがいたら……ひぃ。
悪趣味なのはあくまで生み出すシナリオやキャラだけ、か。現実ではきっといい人なんだよ。……だといいね。知らんけど。


ふぅ。「この上なく敵を憎む」という、ゲームプレーにおいて実は得難い感情を提供してくれた稀有な一本だった。
その憎しみがきちんと消化されていれば文句なく神ゲーになっただろうが、残念ながらそれはなく。商業ゲームの限界かのう。
後はとにかく、悪趣味。しつこいくらい悪趣味。幾ら言っても言い尽くせない。それに当てられ、気持ちが沈むゲームである。
なんて複雑なエンターテインメントだ。つくづくこのゲームが人気を得ているのが信じられん。皆、感性大丈夫か?
そうは言いつつ、もちろん俺もファンを続ける。ここまで来たらもう引き返せないというのもあるが。最後まで見てやんよ。
そう、「ダンガンロンパV3」である。Vの意味は多分ない。既にPS4のDL版を購入済みである。そのうち、やる。
3では当初のメインキャラが完全に刷新されている。それ以外は調べてないが、まぁ次はどれほど悪趣味なのか、覚悟しておこう。
3の発売からもう結構経つが、以後続編は出ていない。てことは完結作か? 遂にヘドロな絶望を振り払うことが出来るのか?
自分の目で確かめよう。比類なき絶望を乗り越えていくゲーム・ダンガンロンパの最後に残る希望を求めて終わり。
大丈夫さ。3のラストでは、きっと海辺に歴代キャラ勢揃いで朝焼けを眺めるのさ。それくらい臭いことをやって、やっと報われる。
意外とありだと思うよ。作り手も暗い絶望ばかり描いてきて疲れてるだろうからね。明るい未来を、皆で掴んで幸せに。

……で、その海辺のシーンの直後に地球爆発させてスタッフロールを入れるのがこのシリーズの悪趣味さなんだよな。
これも十分あり得ると思う。ゲーム性はともかく、シナリオにおいてダンロン作者を信用すんな。もう十分学んだだろ?
なんだかんだで結構影響受けちまってるな。絶望。絶望、か。望みが絶たれた状態。望むな。信じるな。もう絶たれてるのだ。
はぁ。







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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2022-08-20 03:40:16
3の評判は調べずともネットを普通にみてゲーム系の話題に触れてれば絶対目にしててもおかしくないレベルだったのに、ネタバレまったく知らないまま3できるのうらやましすぎる
ぜひ先入観のないままプレイして感想を聞きたい
返信する
Unknown (ota)
2022-08-20 22:14:14
お、おう……? ディスられてる? まいいや。
やりますよそのうち~。
返信する
Unknown (mochi)
2022-09-14 22:19:33
連コメします、mochiです。
vita買った2016年ぐらいにリロードを買い、無事5~6年ぐらいシリーズのファンです。リロードはトロコンしましたがあまりにもテンポの悪い絶望少女は一周で終えてしまいました。TPSとして結構面白く、最終盤のモナカの足に関する部屋選択と自分の足で腐川を助けに行くところは、「ゲームをやっていて良かった」と感じるところです。うまく言えませんが。
現実にはいない突飛な性格の女の子キャラが好きで、1は腐川2は澪田V3は入間が好きです。V3のVの意味は最後までやって確かみてみろ!(現物は知らないゲーメストネタ)
ちなみに1~2~絶望少女のお話の完結編としてアニメ3(未来編/絶望編。同時に並行して放映されたため、作中のネタの開示の関係上、未来編1話→絶望編1話→未来編2話→絶望編2話→……という順序で観ることが推奨されている)がありますが評価があんまりなので途中で視聴中断中です。V3は全てを刷新した新シリーズです(ということになってます)のでアニメは観なくても別に構いません。V3の悪趣味度も半端ではないのでどうかご期待を(?)
返信する
Unknown (ota)
2022-09-18 00:50:05
>最終盤のモナカの足に関する部屋選択と自分の足で腐川を助けに行くところは、「ゲームをやっていて良かった」と感じるところです。うまく言えませんが。
あそこ、いきなり妙な選択肢を選ばされて少々面食らいました。仕掛けとしては面白かったですね。

>1は腐川2は澪田V3は入間が好きです。V3のVの意味は最後までやって確かみてみろ!(現物は知らないゲーメストネタ)
Vに意味があるんですかw 仮面ライダーの無意味パロだと思ってました。俺は腐川は好きじゃないですが、キャラはかなり面白いと思います。

>ちなみに1~2~絶望少女のお話の完結編としてアニメ3
以前mochiさんがダンガンロンパのアニメについて教えてくれたんですよね。初代を何話か観たんですが、それで止まってます。
ゲームをやり遂げたら他メディアもチェックしていきたいですね。……V3も極悪趣味なんですか。そっかー……嗚呼。
返信する

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