昨日の日本経済新聞は「株、米最高値はむしろ過熱警戒に 「大幅調整」の予兆シグナルも 」と題する記事を載せた。記事の中で、りそな銀行の市場分析者の「現在の米国の株価水準は企業業績では正当化できない」、「米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を受けた流動性相場の色が濃い」との見解を載せ、「東京市場ではむしろ過熱を警戒する雰囲気を強め、足元の日本株の上値を抑えている面がある。」と書いている。日本国債の利回り(金利)もわずかずつ上がって来ている。米国でも日本でも格差が拡大している中で、特に米国の株価を始め資産価格が危ういほどに上昇している。同じ27日の東洋経済にノーベル経済学賞を受賞した米国のジョセフ・E・スティグリッツJoseph Eugene Stiglitzコロンビア大学教授の寄稿文が載せられている。「なぜ「資本主義」は輝きを失ってしまったのか」と題されている。「現在、アメリカなどの先進国で事態がいい方向へ進んでいないというが、それどころではない。世界中に不満が蔓延している。」「2008年の金融危機により、資本主義がかつて思われていたほど完全ではないことが明らかになった。資本主義は効率的でもなければ、安定しているわけでもなかった。その後の相次ぐ調査により、過去四半世紀の成長の恩恵を主に受けていたのは、最上層にいる人たちだということがわかった。」、「レーガン政権時代から、最上層の人々に有利な市場の再編が始まった。」と書いている。そして、40年前から「憂慮すべき2つの変化」が見られるようになったとして、「成長の鈍化と、大多数の国民の所得の停滞または減少」を上げている。「大多数の市民が望みながらも、手の届かないものになってしまっていた「中流階級」の生活を市民に提供する、より人間味のある経済」を実現させるために、「適切に設計され、十分に規制された市場と、政府や市民社会のさまざまな機関とが力を合わせるしか、新たな世界を切り開く方法はない。」とする。教授も「政治的には必ずしも簡単ではないかもしれないが」と書かれているように、現実には、こうした改革は容易ではない。結局は、かなり極端な衝撃が訪れることでしか、改革の気運は生まれてこないだろう。政府も中央銀行も、現在の歪みのある経済を、何とかクラッシュさせずに延命させようと懸命だ。しかし、その延命処置自体がさらに歪みを増強させている。そして、それが限界に達した時は、その反動はより激しくなる。経済はおそらく打ちのめされるだろう。改革が可能だとすれば、むしろその時だろう。ただ、衝撃があまりにも大きくなるため、経済の低迷は長期的になる可能性が強い。チェコ共和国プラハの、世界の経済、 政治、科学、文化の論考や分析を世界のメディアに配信している国際的なNPO、プロジェクト・シンジケートProject Syndicateが、23日に「The Crisis of 2020(2020年の危機)」と題した米国投資銀行モルガン・スタンレーのアジア部門の元会長であったスティーブン・ローチ Stephen S. Roach氏の記事を載せている。いずれの危機でも、それを予想したヒーローはいるが、危機の予想は至難の業だと先ず述べている。その上で、現代の世界には3つの脆弱性があるといい、「私が最も心配する脆弱性の源泉は過度に伸び切った中央銀行のバランスシートだ。」、「新たな固有のショック、または予想外のインフレ再加速と関係する金利上昇は、割高な米国株市場の急激な調整の可能性を高めるだろう。」、「失速速度に近づきつつある弱い実体経済」を上げている。この脆弱性の解決を、保護主義とポピュリズム、政治の機能不全が阻んでいるため、「実体経済、金融資産の価格、誤った金融政策。この3つのミックスにショックが加われば、2020年に危機がすぐやってくるだろう。」と警告している。
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大陸から飛来したホオジロガモ(雄)