釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

抜け出せないブラックホール

2019-12-16 19:10:46 | 社会
11月25日の毎日新聞社説は「税収不足で赤字国債 借金に借金重ねる野放図」と題して、現政権の放漫財政を批判している。実体経済の縮小により税収が減少し、その一方で、財政支出を増やしている。「政府は「景気は緩やかに回復している」との認識を変えていない。ならば、大がかりな景気対策は不要なはずである。」ともっともなことを書いている。「税収不足の主因は、3年前と同じ法人税収の減少である。米中貿易戦争で中国など海外景気が悪化し、日本からの輸出が振るわず、企業の利益も減った。10月からの消費増税による税収でも補えないという。」企業利益が減り、法人税収が減少した。この状態を「回復」と称し、法人税が減少している中で、その法人税をさらに引き下げる検討をしている。これまでも、消費税を増税するたびに法人税を下げて来た。日本の主要大企業の団体である経団連が常に消費税増税を支持して来た理由もそこにある。輸出産業中心に大企業は内部留保を積み上げ、昨年度の内部留保は463兆円にもなっている。トヨタなどは今年も過去最高益を得ている。しかし、勤労者の実質賃金は今年も低下している。大企業は様々な企業会計を駆使して節税し、現在でもわずかな法人税しか実質負担していない。日本のGDPに匹敵するまでの内部留保を有する企業に、さらに減税し、「経済が回復している」にもかかわらず、さらに借金を積み増して「景気対策」を打とうとする。国の税制とは富の再分配である。しかし、これまで日本で行なわれて来たのは、富の再分配の機能不全である。先進国の経済の根幹は消費であり、消費の根幹は勤労者の所得である。所得が一貫して減少すれば、消費も同じく減少し、GDPは伸びようがない。GDPが伸びない原因を放置して、ひたすら何とかGDPを支えて来たのが政府債務の積み上げである。今、世界の主要国の金利は極端に低い。その理由は全て債務にある。債務規模が巨大になり、まともな金利に耐えられなくなっている。中でも、政府債務が巨大な国は、ゼロ金利にさえ耐えられず、マイナス金利と言う、まさに資本主義ではあり得ない異常な金利に依存せざるを得なくなっている。国際競争の厳しさに、企業は自助努力よりも国に頼り、企業からの便宜を受けた官僚や政治家は、企業のための政策と税制を優先して来た。その結果が、膨大な政府債務と実質賃金の低下であり、結局は、日本の経済を崩壊させる道を歩んでいる。異常な超低金利は、貯蓄者を犠牲にして、債務者を助ける。しかし、歴史は、いかなる債務者も、収入以上の速さで債務を積み上げれば、必ず破綻せざるを得ないことを示す。そんな政府債務を、少しでも延命させるために登場したのが黒田日銀である。政府発行の国債の金利(利回り)を上昇させないために、日本銀行は国債を大量に買い込み、経済規模が日本の3倍以上の米国やEUの中央銀行を凌ぐ、578兆円もの資産=負債を抱えた。日本銀行の異常さは、他の中央銀行の2009年以後の資産拡大と比較すれば分かる。米国中央銀行FRBの資産は2009年の8980億ドルから、2019年12月時点で4兆666億ドルまで拡大したが、米国GDPの18.8%である。また、欧州連合EUの中央銀行であるECBの資産は、1.8兆ユーロから4.7兆ユーロへ拡大したが、ユーロ圏GDPの41.6%である。それらに対して、日本銀行は116.3兆円から578.5兆円に拡大し、GDPの103.6%にもなる異常さだ。それだけ国債を中心に債券を買い込んで、金利を押さえ込まねば、政府債務が破綻する。買い込んだ債券や株式が日本銀行の資産である。日本銀行は資産となった株も国債を主とする債券も売ることは出来ない、抜けられないブラックホールに入った。売れば、金利上昇・政府債務不履行、株価暴落を引き起こす。しかし、こうした日本銀行の助けが、むしろ政府を甘くさせ、税収が減る中で、さらに支出を拡大させる放漫体質を許す結果となっている。また、政府債務を日本銀行が延命させればさせるほど、政府債務はさらに積み上がり、日本銀行の資産も積み上がるため、破綻時の衝撃は、全てのバブル崩壊と同じく大きくなる。国債や株価の暴落は日本銀行自体にも巨額の損失を与え、本来ならば、日本銀行の倒産となる。いずれにしても、悲惨な結末を避けることは出来ないところまで来てしまった。

政治に潰されて来た日本の産業

2019-12-14 19:12:52 | 社会
通信が戦争の鍵を握ることを知った米国は、通信技術を死守することの重要性を戦後の産業の基礎とした。日本の戦後の高度経済成長は、自動車産業だけでなく、電気通信産業でも米国を脅かした。特に半導体のシェアが世界の50%まで占めるに至った日本に脅威を感じた。しかし、通信技術だけは譲れない。そこで、米国は「安全保障上の問題がある」として、1986年に日本製半導体の「最低価格」を取り決めるダンピング輸出防止と、日本市場の外国製半導体への開放を柱とする日米半導体協定を日本に飲ませた。それでも日本の半導体の勢いは強く、1991年には、さらに日本国内で生産する半導体規格をアメリカの規格に合わせることや日本市場でのアメリカ半導体のシェアを20%まで引き上げることを要求した「第二次」日米半導体協定を日本に結ばせた。こうした流れの中で、韓国が日本の半導体技術者を高給で迎え、日本の半導体産業が斜陽化していく中で、半導体産業を育て上げて行った。現在、中国に貿易戦争を仕掛け、「安全保障上の問題がある」として中国のファーウェイHUAWEIの5G技術を敵視するのも同じ理由である。通信情報産業はまた未来の産業として生き残ることも出来る。しかし、自動車は新興国に譲っても米国の「安全保障」を揺るがすことはない。日本は米国が譲った自動車産業に頼り、政官財で自動車にしがみ付く。中国や東南アジアで自動車生産が興隆し、対抗せざるを得なくなると、政府が「円安」誘導し、自動車産業は自動車価格を上げ、両者で利益だけは確保して、産業としての存続を図って来た。インターネットの普及と新興国での生産により、多くの物が価格を下げて来た中で、自動車だけは価格を上げて来た。しかし、そんな自動車産業の日本での在り方も、いずれ変わらざるを得ない。電気自動車の登場が、自動車の概念を大きく変えるからだ。運転を楽しむ自動車から、動く部屋に変貌して行く。従来の自動車企業だけでなく、IT産業も参入可能となった。従来の日本の自動車産業は、販売店も含めた系列や国が規制する「日本仕様」で、安い海外の自動車から守られて来た。自動車産業を守るために国民は高い車を買わされて来た。電気自動車による変化はすでに日本でも起き始めている。地方では路線バスに中国製電気バスが導入され始めている。日本の自動車産業はハイブリット車に固執して、電気自動車の開発に遅れをとった。ハイブリット車に使われるリチウムイオン電池の開発に貢献した日本人に今年ノーベル化学賞が与えられたが、リチウムイオン電池は、イオンが電解液の中を移動することで、充電と放電が行われるため、電解液が必要となる。しかし、その電解液が可燃性であるため安全上にも問題があった。オーストラリアのディーキン大学の中国系研究者が、リチウムイオンに弱く結合した固体ポリマー素材を利用した不燃性固体電解質を開発した。しかも、従来のリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度を実現している。現在使われているリチウムイオン電池は最大でも250Wh/kgほどだが、固体ポリマー電解質なら500Wh/kgが可能で、電池の小型化、軽量化、低コスト化まで図れるようになる。固体ポリマーは一般的な産業用ポリマーで可能だ。ITやAIを駆使した自動運転車の開発が進めば、電気自動車の普及は瞬く間だろう。もちろん、いざと言う時には、手動運転も可能な状態ではあって欲しいが。いずれにしろ、日本の産業の未来は明るくは見えない。国が関与して上手く行った産業はほとんどない。国は大きな枠組みだけを決めて、後は民間の活力が自由に伸ばせる環境を作ればいいのだ。国費を使って大赤字ばかりの今の官民ファンドを見れば分かる。政治家や官僚が企てるとろくなことにはならない。いずれ遠からずやって来る巨大な金融危機や実質的な財政破綻で、日本は悲惨な状態を迎えざるを得ないが、その中から活力ある産業を生み出す人が出て来ることを願うのみだ。

英国のEU離脱が決まった

2019-12-13 19:11:17 | 社会
昨日英国で行われた総選挙は、EU離脱強硬派のボリス・ジョンソン首相が率いる与党・保守党の予想以上の圧勝に終わった。EU残留を主調していた野党の労働党は議席をむしろ減らした。これにより英国はいよいよ来年1月末をもって、EUから離脱することが決定的となった。来年末までの「移行期」が残されるが、離脱後の英国とEUとの間の包括的な自由貿易協定(FTA)を協議するにはあまりにも時間が限られている。2016年に国民投票でEU離脱が決まって以来、英国では企業の設備投資が控えられ、海外企業の英国離れも起きている。一部には人口流出も見られる。英国の経済的な存在意義は、これまでロンドンのシティにあった。世界の金融センターの一つである。しかし、EU離脱となれば、確実にロンドンは金融センターとしての機能を失うことになる。昨年10月9日、英国中央銀行イングランド銀行は、EU離脱による経済的な混乱を警告している。英国中央清算機関が取り扱うEU企業の金融派生商品デリバティブ残高は、想定元本ベースで69兆ポンド(約1京300兆円)にも上り、EUの法体系から切り離された場合、既存の契約がどう扱われるか定まっていない。さらに、英国保険会社が提供するEU市民向けの契約のうち、約900万件が合意なし離脱に至った場合に、どのような扱いになるのか。英国経済がそれ自身さらに低迷する可能性が大きくなるばかりか、何より懸念されるのがドイツ銀行である。既に株価が90%以上も暴落しているドイツ銀行は55兆ドルとも75兆ドルとも言われるデリバティブを保有しており、英国のEU離脱問題は、むしろこのドイツ銀行のデリバティブの問題という点で、極めて注目されて来た。これまでEU圏のデリバティブ取引はロンドンで行われて来た。英国のEU離脱は、ドイツ銀行の保有する巨大なデリバティブ爆弾を発火させかねない。現代の金融経済は、デリバティブを含む複雑な金融派生商品を生み出しているため、ドイツ銀行のデリバティブ破綻は世界の金融システムに衝撃を及ぼす。すでに米国では、短期資金の主に銀行間の資金貸借市場、レポ市場で現金枯渇が継続して起きており、米国中央銀行の介入で、一時10%にもなった金利は押さえ込まれては来ているが、先日も金利は4%を超えている。米国巨大銀行で現金不足が9月半ば以来2ヶ月以上続いている。これ自体が異常だが、その上、ドイツ銀行のデリバティが破綻すれば、米国巨大金融機関は間違いなく、窮地に追いやられる。リーマン・ショックの比ではない。中国も中小銀行の倒産、国有化が発生し、巨大国有企業の倒産まで発生しており、どこまで国がさらなる悪化を防げるか注目されている。主要国政府、中央銀行は、何とか現場を維持しようと、水面下では策を捻出しているところだ。政府の財政政策も中央銀行の金融政策も残された余地はあまりにもわずかしかない。いずれもこれまでに極端に発動して来た。日本、米国、中国、EUそれぞれが債務爆弾を抱えており、一国の債務爆弾の炸裂は、全ての主要国にもやはり大きな衝撃を与える。各国はあたかも微妙なバランスをとりながら綱渡りをしているかのようである。

米国の株式バブル

2019-12-12 19:16:02 | 経済
金融経済が主体となった米国では、その金融経済を支えることが米国中央銀行の主要な目的の一つである。まして、米国中央銀行の株主は100%が民間である。米国巨大銀行が名を連ねているだろう。そうした金融機関にとって、資産価格の高騰は好ましい。中央銀行が今年に入り3度も金利を下げ、9月16日からはレポ市場に資金提供を開始し、10月には実質的な量的緩和を再開した。このため、11月には連日株価は市場最高値を更新した。貿易戦争は多少株価を上下させるが、基本的には中央銀行に依存している。10月末時点での米国の株式時価総額は26.3兆ドルで、世界の株式時価総額の54.7%を占め、ダントツの1位である。2位日本の3.9兆ドルで世界では8.0%となり、以下、3位英国2.4兆ドル・5.1%、4位中国1.8兆ドル・3.7%、5位フランス1.6兆ドル・3.3%、6位スイス1.3兆ドル・2.8%、7位ドイツ1.3兆ドル・2.7%・カナダ1.3兆ドル・2.7%と続いている。米国株価の時価総額は、現在さらに増えている。株式の時価総額を見ただけで、いかに米国金融経済が肥大化し、バブル状態か分かる。米国の実体経済はこれほどの規模ではない。IMF国際通貨基金予想の2019年のGDP国民総生産では、米国は世界のGDPの24.4%でしかない。実体の2倍以上のバブル状態ともみなせる。日本の株式はバブル期の6割程度であり、それさえも日本銀行や年金・郵貯などのいわゆる5頭のクジラの買い支えで維持されたものでしかない。米国株式の多くは中央銀行の誘導した低金利による社債発行と言う債務を使った自社株買いが支えている。2014年10月、現政権の意図で、GPIF年金積立金管理運用独立行政法人は、当時の運用資金130兆円の株式運用比率を12%から25%に引き上げた。これにより1万4000円台だった日経平均株価は、半年後には2万円を超えた。日本の株式は「官制相場」と言われている。そんな日本の株式市場も売買代金では、3分の2を外国人投資家が占めている。これら投資家にはヘッジファンドが含まれており、彼らは世界の政府系ファンド、各国年金運用機関、財団、大学基金、ファミリーオフィスなどから資金を預かり、その資金を運用しており、資金量は途方もなく大きい。米国の株式が下落、暴落すれば、それらの資金が一斉に引き上げられる。5頭のクジラは巨大な損失を被ることになる。日本の海外資産1000兆円もやはり同じ運命を辿ることになる。自身億万長者でもある債券王、DoubleLineのジェフリー・ガンドラックJeff Gundlachは、先日のYahoo Financeとのインタビューの中で、2020年代には米国が抱える借金爆弾が次の不況に火をつけるため、社会経済的混乱が起きる可能性がある、と述べている。2027年までに負債の利子費用が1.25%から少なくとも3%に上昇し、GDPは2%から2.5%の打撃を受けるため、2020年代は失われた時代になる可能性があるとしている。まさに、日本が既に見て来た時代だ。米国の債務問題が深刻であるからこそ、現代金融理論MMTのような極端な考えが議員にも支持されているのだ、と述べている。MMTは、インフレにならない限り、自国通貨で発行された国債はいくらでも発行可能とする考えだ。つまり、インフレにならなければ、政府はいくらでも借金が可能だと言うのだ。ガンドラックは、金融危機が重なれば、実際に、中央銀行や議員はこれを政策処方とするかも知れないとまで考えているようだ。米国は大いに日本を参考にしている。
紀ノ国のミカン

中央銀行は制御し切れるか

2019-12-11 19:13:07 | 経済
製造業で日本とドイツに敗れた米国は、基軸通貨ドルの地位を利用すべく金融経済に活路を開いた。金融工学なる手法を取り入れ、マネーゲームである金融派生商品を開発し、世界から投資資金を米国に向かわせるよう誘導した。2008年の米国発の金融危機では、日本とEUを巻き込み、それぞれの中央銀行が足並みを揃えて、異常なまでの金融緩和に出て、資金枯渇した金融機関に資金を注入し、倒れるべき金融機関を救済した。金利を下げたために、借金に寛容な米国では、民間までも債務はうなぎ上りとなり、債務による株式、不動産、債券などの金融資産が高騰した。まさに米国では「Everything Bubble」であり、金融緩和の行き過ぎがバブルを生むと言う日本の先例があるにもかかわらず、米国金融機関を救済せんがために、異常な金融緩和を続けた。しかし、さすがに米国中央銀行は、その弊害を知っており、他の中央銀行に異常な金融緩和の継続を任せて、金融緩和の縮小に入ろうとした。わずかずつの金利引き上げである。しかし、金融緩和で高騰した金融資産は、特に、株式市場はその中央銀行の姿勢で、反落した。それが昨年末である。慌てた米国中央銀行FRBは、金利引き上げを中止し、今年に入り、再び金融緩和に逆戻りせざるを得なくなっている。政府債務が膨大な日本や政府債務を大きく抱える国のあるEUの中央銀行は、あくまで極端な金融緩和を続けざるを得なく、金利もマイナス圏にまで引き下げ続けなければならない。先進国では、わずかでも他国より金利を上げておくことで、米国は先進国からの投資を誘導し、世界から投資資金が米国に集まる状態を維持し、それによりドル高をも維持させている。基軸通貨としてのドルを米国金融機関は高くしておきたい。自分たちが保有する通貨がまさにドルであるからだ。大量印刷された通貨は、印刷すればするほど価値をうしなう。国際取引にドルを使うため、米国内のドルだけでなく、世界のためのドルまで印刷しなければならない。これだけ大量に印刷すれば、本来であれば、ドルの価値は下がっている。しかし、そうさせないために、世界中がドルを買って、米国に投資する構造を維持している。その構造をこれまでは何とか維持出来て来たが、現在の米国の巨大なバブルガ弾ければ、世界は少しでも損失を減らすために、米国に投じた資金を引き上げる。この際、ドルを売って、自国通貨に変える。日本の海外資産1000兆円の7割は米国に投じられたものだ。米国バブルが弾ければ、年金基金も含めた日本の米国投資資金は手痛い打撃を受ける。それでも米国から引き上げざるを得ない。どこまで資産価格が落ちるかわからないからだ。膨らんだ風船が弾ける時は、膨らみが大きければ大きいほど、衝撃は大きくなる。米国中央銀行の金融緩和再開は、そのバブルをさらに膨らませているのだ。先に連日株価が史上最高値を更新し続けたのがそれである。3度金利を下げただけでなく、9月16日からは、金融機関同士の資金貸し借り市場であるレポ市場にまで、中央銀行は資金提供するようになった。レポ市場の資金枯渇の原因をIMF国際通貨基金は、米国4大金融機関が、国債保有に偏り過ぎて、貸付に回す現金が不足していることが原因だと報じている。現金を一時的に借りたい金融機関や投資家が債券を担保に出しても、現金を貸せないのだ。このため、少なくなっている貸せる現金を10%の金利なら貸すと言う、高金利状態が瞬間的に生じた。慌てた中央銀行FRBが、自ら現金の貸し手として、レポ市場に介入せざるを得なくなった。しかし、この状態が、その後、現在も続く異常な状態である。どこかで継続した資金不足があると言うことだ。金融危機につながるブラックスワンが既に飛び立っているのかも知れない。

詰み将棋となった政府債務

2019-12-10 19:14:23 | 社会
第二次世界大戦後、世界は製造業の回復で経済成長し、その製造業も安い賃金と優秀な技術で推進された。最初に先頭にいた米国がドイツ、日本に追いつかれ、人口の多かった日本が米国に迫り、その日本に脅威を感じた米国は、現在の中国同様に、本音では日本を敵視するようになり、1985年のプラザ合意を日本に飲ませた。打撃を受けた日本は、現在と同じ金融緩和で経済を回復させようとし、行き過ぎた金融緩和でバブルを生み出してしまった。バブルであることも気付かず、日本は「奢れる者」になってしまい、まさに今、「久しからず」状態に落ち込んでいる。バブル崩壊後、日本銀行の金融緩和だけでなく、政府の財政出動も行わざるを得ず、政府債務を積み始めた。2008年のリーマン・ショック後は、先進主要国に合わせて金融緩和を行なったが、現政権が成立してからは、金融緩和も財政出動も極端になった。日本の政府債務はデフォルト(債務不履行)危機となったイタリア、スペイン、ギリシャよりも対GDP比で遥かに高い。日本のメディアは政権に睨まれるのを避けるためもあって、この政府債務問題をほとんど取り上げないばかりか、取り上げても心配ないと言った論調である。米国の債券運用会社PIMCOは、世界各国の中央銀行や、公益法人、財団、公的年金、私的年金、年金基金などを顧客として、資産を運用する、その世界ではよく知られた企業だ。そのPIMCOのマネージング・ディレクターで、アナリストのジャミル・バズJamil Baz氏が、すでに2016年8月31日のブルームバーグ Bloombergで、「Pimco’s Baz Says Japan In a Bind as Total Debt Tops 600% of GDP」と題した記事で、日本の財政問題には打つ手がほとんどないと論じている。極めて高い債務対GDP比率であれば二者択一になるとしている。一つはデフォルトか高インフレかによる債務解消、もう一つは貯蓄を増やして返済する。どちらを選択しても経済の成長のリスクとなる。日本はG7の中で、最も財政従属(財政を維持するために金融政策が実施される状態)に近い国だと指摘する。世界の7大リスクの一つが日本の政府債務であり、日本国債のマイナス利回りの反動が起これば、財政従属からハイパーインフレ、政府のデフォルトのいずれかになる、とする。日本の政府の債務は、日本の経済の問題でもあり、日本の現在の経済は、政府の債務と言う財政支出と日本銀行による株式の買い支えがなければ、維持出来ない状態になっている。これらがなければ、経済成長は確実にマイナス圏である。本来ならば、活気ある経済成長で、税収を増やし、それにより政府債務を減らせるのだが、経済成長が民間企業で望めないために政府債務による財政出動で、とりあえずわずかばかりの経済成長を維持しているように見せかけている。ある意味で、産業構造の転換が日本の根本問題だとも言える。しかし、今となっては、これも人口問題と同じく何も対策が取られておらず、結局はいずれ遠からずバズ氏の言うごとく、極端な結末を迎えることになるのだろう。政府のデフォルトであれ、ハイパーインフレであれ、国民にとっては通貨価値の消失であり、生活が直撃される。間近に迫るいずれかの主要国発の金融危機が、その引き金になることだけは間違いないだろう。

債務国日本を世界は注視している

2019-12-09 19:18:38 | 社会
5日の日本経済新聞は、「経済対策、事業規模26兆円 政府が閣議決定」と題する記事を載せた。国や地方からの財政支出が13.2兆円で、民間の支出も加えた事業規模は26兆円となる。2016年にも、国や地方からの財政支出13.5兆円、事業規模は28.1兆円と言う同様の経済対策を行っている。1990年代初頭にバブルが崩壊してから、日本銀行は金融緩和を開始したが、1998年に日本長期信用銀行、日本債権信用銀行などが破綻する金融危機が発生し、翌年から、「ゼロ金利」を開始せざるを得なくなった。しかし、これも効果は芳しくなく、経済低迷は続き、2008年のリーマン・ショックでは、米欧まで日本銀行に倣い極端な金融緩和を始めた。これにさらに輪をかけるように日本銀行は2013年からさらに異常な金融緩和をとった。それまでにも金融緩和は実体経済への有効性を失っていることが明らかであったにもかかわらず、一度決めたことは途中で止められないのだ。これだけ異常な金融緩和もやはり実体経済へは効果がなく、結局は政府が債務に債務を積み重ねて、財政支出を拡大した。しかし、これも実体経済へはわずかな効果しかなかった。経済低迷の根本原因を分かっていないからだ。斜陽産業を保護し、先端産業を政府自ら潰して来た。産業構造の転換をせず、生産労働人口の減少にも歯止めをかけず、就労者の実質賃金の低下を放置して来た。財政政策も旧態依然とした土木建設事業が主体である。教育・研究の軽視は先進国としてはあまりにも無残だ。これだけ無策が続いて来ても、過去の遺産で、政府債務は何とか持ち応えて来た。しかし、現在の世界的な景気減速の中で、世界のどこかで金融危機が発生すれば、その衝撃はリーマン・ショックを遥かに超え、異常な金融緩和で脆弱となっている日本の金融機関をなぎ倒し、政府債務ももはや破綻状態を免れなくなる。かっては、日本は米国に迫る経済大国として、米国に脅威と見做されるまでの規模に成長したが、今では、米国をはじめ世界の先進国から、債務負担にどこまで耐えられるか注視される惨めな国になってしまった。人口減少・高齢化、経済の低成長、膨大な政府債務、マイナス金利の異常な金融緩和と中央銀行の株と国債の購入など、全てが先進国の先頭に位置し、他の先進国が注視している。しかも、再び長い金融緩和が、オリンピックもあって、都心部で不動産バブルを生み出している。4日の日本経済新聞がその実態を報じている。「マンション価格、年収の10倍超え続く 18年の都内 」と言う見出しで、「平均年収に対する倍率は新築で13.3倍、中古で10.49倍だった。新築は7年連続、中古は6年連続で上昇しここ10年で最高を更新した。一般世帯にはますます手が届きにくくなっている。」と書いている。実体経済の指標が悪化している中で、超低金利が再びバブル時代の再現を見せている。10月の消費は消費税の増税で落ち込んだことが明らかになり、政府は慌てたのだろう。ここぞとばかりに、利権がらみの「経済対策」を打ち出した。放漫財政も行き着く所まで来ている。

賃金が抑えられた30年

2019-12-07 19:18:22 | 経済
米国や日本は、経済成長を消費が支えている。ドイツはまだ輸出依存だ。米国や日本で景気が悪化するとは、消費が落ち込んでいることを表す。従って、「失われた30年」は、この消費が増えなかったことが原因であるとも言える。消費が増えるためには、先ず、賃金が増えなければならない。しかし、日本では、非正規雇用の拡大や海外からの「研修生」により、賃金の上昇が抑えられて来た。賃金を抑えることで、大企業はコスト削減を図り、利益を上げ、史上最高益を上げる企業まで出ている。日本では実質賃金が上昇しないだけでなく、将来への不安もあるため、なお、消費が伸びない。生産労働年齢では賃金が上昇せず、退職者では年金の減額が見えている。消費を極力控えようとするのは当然だ。そんな状況で、中央銀行がいくら金利を下げて、市中金融機関が貸付金利を下げても、お金を借りてまで物を買おうとする人はいない。つまり、日本銀行の金融緩和は、経済の成長には役に立たない環境になっているのが、現在の日本である。かっては、1985年のプラザ合意で、ドルの切り下げで、日本は大きな損失を飲まされた。このため、景気は悪化し、日本銀行はやはり金融緩和を行い、金利を下げた。この金利引き下げがその後の日本のバブルを生み出した。この時代は、「Japan as Nomber one 」と言われただけあって、将来への不安などない時代であった。政府債務もずっと少なかった。将来の不安がない時は、金利が低ければ、お金を借りて、物を買う人も増える。まして、賃金が上がることも予想出来た時代であればなおのこと。日本の企業がバブル崩壊から立ち直るのに10年を要したが、この10年は長く、企業にトラウマを残した。それがコスト削減と企業貯蓄である。まして、新興国の追い上げに対抗するためには、安い賃金は企業にとり重要要件であった。現政権下で拡大した雇用の8割は非正規雇用である。経済成長の原動力である消費の源の賃金が抑えられれば、経済成長も抑えられるのはごく自然なことだ。民間消費を少しでも肩代わりして、経済成長を維持しようとしたのが、政府債務の急拡大となった。辛うじて1%前後の成長率を維持して来たのは、政府の債務である。中央銀行の金融緩和も、政府の債務を背景とした財政支出も、過去30年が示すように、効果は極めて薄い、とても非効率なものだ。米国も日本も経済的黄金期は、中間層の厚い時である。非正規雇用の拡大で、その中間層を没落させて来た。さらには富裕層に有利な長引く超低金利で、格差拡大を助長した。企業も容易には賃金を上げないだろうし、中央銀行も容易には金融緩和から抜け出せない。となると、これからの日本経済に希望が持てないのは容易に分かると言うものだ。世界のどこかで金融崩壊でも起きれば、希望が持てないどころではなく、悲惨な経済状態が蔓延しかねないだろう。

政府債務を支えるための金融緩和

2019-12-06 19:15:44 | 経済
昨日ほどではないが、今朝も一時小雪が舞った。やはり庭の水槽はみんな凍っていた。昼には青空も広がり、気温は6度まで上がった。内陸は既に雪が積もったようだが、いつものように釜石は雪が積もらない。今日、職場の方から、このブログを時々見るが、難しくて、と言われた。極力説明を付けるようにはしているが、その説明も分かりにくいのかも知れない。ただ基本は、自分の頭に浮かぶままを書いており、ある種の自己満足のためのブログとして出発しているので、ある程度はご了承いただきたい。こんなブログでもここ数日続けて500人以上の方に訪問いただいており、昨日は558人の方に訪問いただいたようだ。訪問いただく方が多いと、どうしても訪問数の多いブログ内容に関連した内容を書き綴る傾向がある。また、実際にも、世の中は、とても重要な転換点に差し掛かってもおり、知り得ることを書いておきたい気持ちもある。 日本はバブル崩壊後の1990年代末から、世界に先駆けて大幅な金融緩和を開始した。2008年のリーマン・ショック後は、米国も欧州も日本を追って大々的な金融緩和に入り、日本もさらに金融緩和を深めた。中央銀行は景気刺激策としての金融緩和と主張し続けて来たが、特に、リーマン・ショック後、ドイツ以外の先進各国は、政府債務を急増させており、表向きの景気刺激策としての金融緩和の効果は芳しくない。言い方を変えれば、金融緩和による景気刺激効果が弱いために、政府が財政出動せざるを得なくなり、債務が急増したと見ることが出来る。そして、今では金融緩和は、景気刺激よりも政府債務の軽減が主な目的になっている。日本銀行などは早くからこの目的に変えている。日本の2018年の税収は60兆円であった。バブル期に並ぶ過去最高である。しかし、政府の債務は1280兆円ある。国だけでも1040兆円である。単純化すると、年間所得60万円の人が、1040万円の借金を抱えていることになる。年収の17倍である。市中銀行であれば、決して、これだけの収入しかない人にはお金を貸すことはない。明らかに返済不可能だからだ。通常は年収の7倍が限度である。しかも、この人は毎年さらに30万円の新規の借金を積み増している。借金が膨大になっているにもかかわらず、何年も金利分の額は変わっていない。日本銀行が金利を異常なまでに無理やり下げているからだ。毎年、概ね金利分は10兆円ほどで推移している。金利が1%でも上がれば、政府は大変である。経済対策のために財政出動しなくとも、年金や医療の政府負担は年々増え続ける。どうあがこうと日本の政府債務は決して返済出来ない。日本銀行も保有する480兆円を超える国債を売ることは出来ない。日本銀行が割高で買った国債など、損を覚悟で誰も買いたがらない。売るに売れない国債を、日本銀行は今後もさらに買い続けるしかない。日本銀行が買うのをやめれば、国債価格は下がり、金利が上昇する。これは日本銀行が買った株式(ETF)についても同様だ。日本銀行が保有する株式を売れば、株価は下落する。つまり、日本銀行はいつまでも延々と、国債と株式を買い続けるしかない。金融緩和をやめて、正常な状態に戻す時期を「出口」と称しているが、日本銀行の金融緩和には、決して出口がない。日本銀行の異常な金融緩和なくして、今の日本の政府債務や株価は維持出来ないからだ。米国も多小の違いはあるが、やはり中央銀行の金融緩和なくして、今の株価も政府債務も維持出来ない。「Everything Bubble 」状態の米国のバブルが弾ければ、日米欧の中央銀行は、さらに大きく金融緩和を深めるしかない。政府発行の国債を大量に買い、マイナス金利をさらに下げる、米国もマイナス金利圏に突入する。実体経済へはもはや金融緩和は有効性を失っているため、バブル崩壊後は、さらに債務を積み増して、政府が大規模な財政出動をするしかない。その債務のための国債を誰が信用するだろうか、たとえ中央銀行が買い取っても。中央銀行はすべての発行済み国債を買い取ることなどは出来ない。中央銀行以外が保有する国債は間違いなく暴落する。日米欧は一蓮托生であり、中国もインドも確実に巻き込まれる。

経済覇権の翳り

2019-12-05 19:12:16 | 経済
1920年代の米国は、現在と同じく格差が拡大していた。そんな中で、1929年にニューヨークで株式の大暴落が起きた。その影響は都市部だけでなく、農村地帯へも波及し、時同じくして発生した砂嵐もあって、多くの農地が耕作不能となり、農村部から流民が多数発生した。この状況を描いたのがスタインベックの『怒りの葡萄』である。米国政府は経済学者ケインズの理論に従い、落ち込んでいる民間資本に代わり、国費を使ったニューディール政策を実行することで、経済回復を狙った。しかし、結局は、第二次世界大戦と言う戦争が米国経済を回復させた。戦場にならなかった米国本土で、欧州向けの軍需物資を生産し、欧州に供給した。大戦で大きな戦費を費やした大英帝国は、大戦が終わると見る影もなく没落し、米国が世界の覇者となった。1950年代から1960年代初めまでは、ある意味で、米国の黄金時代であった。しかし、それ以後、敗戦国である日本やドイツが工業力を回復し、安く良質の製品を米国に輸出し、米国民はそれを大量に消費した。当然、この過程で米国製造業は斜陽化して行った。製造業に従事していた米国民は職を奪われ、その怒りを黄色人種である日本の製品にぶっつけた。トヨタの自動車が標的となった。こうした事態が発生した1980年代、米国は産業構造を製造業から金融業へ大きくシフトした。戦後の黄金期に世界最大の資本が蓄積されており、その資本をさらに拡大するためには、もはや国内製造業への投資は無駄であり、新たに金融工学を利用した金融経済を発展させ、海外に資本の自由化を迫ることで、海外の安い賃金を利用した現地生産に巨大資本を投じる道を開いた。「グローバル化」や「新自由主義」はまさにこのための美名である。対米従属一辺倒の日本は、まさに格好の標的となり、米国に言われるままに門戸を開き、民営化で世界最大の日本郵政の資金が米国金融へ投じられ、バブル崩壊後の安い株式がこぞって米国資本に買われた。米国国内では、金融経済が主流となり、株式や債券だけでなく、デリバティブなどの金融派生商品を生み出し、これらの金融資産が上昇するよう、世界から資金を吸い寄せる金融政策が採られ、日本にも当然ながら協力が強いられた。日本の金融政策は政府債務と米国金融のための政策となっている。日本銀行の「異次元」の金融緩和はまさに米国金融市場を支える一助でもあった。同じ敗戦国であってもドイツは、しっかり我が道を行っている。ドイツ主導でEUを結成したのも、新しい通貨ユーロによりドル離れすることが一つの目的でもあった(但し、EUの中央銀行ECBはドイツより米国寄りである)。共産国中国も、自国の経済発展のために、一定範囲で経済開放し、大きく経済成長して来たが、科学技術で米国に迫るまでになったため、米国は脅威を感じ始めた。最先端技術を抑える目的の貿易戦争であるが、アップルなどの米国企業も既に中国に製造を依存しており、強硬姿勢は米国が自ら首を絞めかねない。欧州の一部と日本の大きな政府債務もあって、米国は欧州と日本に金融緩和の名で米国以上に金利を引き下げさせ、相対的に米国金利を高くすることで、欧州と日本から米国金融市場に資金が流れるようにした。こうして米国自身を含む各国金融緩和が米国金融市場の上昇を支えて来た。今では米国金融市場は実体経済の利益率を超えるバブル状態となっている。富裕層や巨大企業から投資資金を集める投資家は、大学の研究者以上に、実経済の流れを深く読む。一つ間違えれば、破産しかねないからだ。それら投資家の中でも世界の三大投資家と言われるジョージ・ソロス、ウォーレン・パフェット、ジム・ロジャーズいずれもが、今、現金保持を強めている。いずれ近いうちに金融市場の暴落があると見て、暴落時に安くなった金融資産を買い込む準備をしている。彼らはこうして巨万の富を築いて来た。ジョージ・ソロスなどは、1990年代後半に、英国中央銀行イングランド銀行相手に戦い、この戦いに勝って、さらに富を積み上げた。巨大な投資家には一国をも翻弄するだけの資金力がある。債券王と称されるダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラックは、今月2日のYahoo Financeのインタビューで、「過去数四半期の景気拡大のすべては債務によるものだ。・・・国家債務と財政赤字の対GDP比率の水準は、歴史的に景気後退の深さと連動する。」「次に景気後退に入ると、米市場がクラッシュし、今試し続けている最高値に戻ることはないだろう。おそらく、私の残りのキャリアの間は。」「次の景気後退では、米国の債務問題からドルが下落するだろう。投資家は次の景気後退に対処するため、米市場でなく外国市場に投資した方がよい。」と語っている。