釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

山野草の季節

2018-05-19 19:19:58 | 自然
緑が深くなった5月は、山の春でもある。平地よりも少し気温が低く、日当たりも平地より少ない山の環境は植物の開花を平地より遅くする。その開花の時期は、たとえ平地で育ってもDNAに刻まれているため、変わらない。我が家の庭では鉢植えの山野草が次々に花を開かせている。小さな鉢で、冬には土だけになって、もう芽は出ないだろうと思っていたものまでが、芽を出し、大きく育って来る。それが一つや二つではないので、あらためて山野草と言う自然界に自生する植物の強さを感じる。鉢底の小さな穴から細い根を伸ばし、その下の地中にまで入り込んでいるものもある。中には鉢の中で育たないで、鉢の外の根から芽を出し、そのまま成長したものまである。そんな植物も動物と同じく水だけは欠かせない。細胞自体や土の中から栄養を吸収するためには水分の補給が必要だ。自然界だと雨水だが、庭では雨水だけでなく、水道水も使わざるを得ない。カルキの入った水道水は気がかりではあるが、そのまま使っている。睡蓮や布袋葵の花を見たいがために、それ用の少し大きい水鉢を庭に置き、中へは金魚も何匹か入れている。最初はメダカも入れたが、いつの間にかメダカはいなくなった。ひょっとすると金魚に食べられたのかも知れない。さすがにメダカや金魚を入れるために、水鉢の水はカルキ抜きを最初にやっておいた。旧居にいた時に手に入れた2000年前のハスを蘇らせた大賀ハスは一度だけ咲いて、ダメになった。仕方なく、昨年、また手に入れて庭においておいたが、ハスの葉が枯れて、これももうダメだと思っていた。冬が去って、春がやってきた頃、その専用の水鉢をよく見てみると、水中に小さく巻かれたハスの葉がいくつか見えた。今はもう丸い葉が水面に浮かんでいる。これから葉も大きく育って来るのだろうが、花を咲かせるまでに成長してくれるのか、まだ心配だ。赤い蕾を膨らませて来た山芍薬は、今朝見ると雨で花びらを一つ落としてしまったようだ。残念ながら白の山芍薬は今年は蕾を出していない。これからの楽しみは野生蘭の王者と言われる敦盛草だ。住田町産と少し色の濃い北海道の武徳産の2種類が葉を伸ばして来ている。山では敦盛草は草むらの中で自生しているらしく、日中の日射しを受け過ぎないように気を付けなければいけないようなので、白根葵の大きな葉陰において、雨にもあまり打たれないようにしてある。庭の山野草では最も貴重な山野草でもあるので、さすがに他の山野草より気を使ってしまう。釜石は広い岩手県でも沿岸部にある意味で孤立した小さな街で、都会のような文化的な施設はなく、地元の人は何もない街だと言うが、自然の豊かさに気付いていない。無精者でも植物はちゃんと育ってくれている。しかも、他では見られない山野草と言う可憐な花まで見ることが出来るのだ。
山野の落葉樹の側で咲くサルメンエビネ

通貨発行と債務

2018-05-18 19:14:28 | 経済
一国の通貨は中央銀行が発行する。政府自身ではない。日本ではお札は日本銀行が発行しており、硬貨だけは政府が発行している。従って、硬貨は政府貨幣である。何故、政府自身が紙幣も発行しないのか。仮に政府が紙幣をも発行するとなると、政府は都合のいいように紙幣を発行する恐れがある。そこで、政府の都合ではなく、国の安定した経済のために紙幣発行の役割を中央銀行と言う政府から独立した機関に負わせることにした。とはいえ、中央銀行にも一定の歯止めを持たせるために当初は金本位制を導入した。つまり中央銀行と言えども、無制限に通貨を発行出来ないように、一定の金準備の範囲で通貨を発行することが中央銀行への歯止めであった。しかし、自国通貨ドルが国際取引の基軸通貨であった米国にとって、他国に必要な準備通貨まで発行しなければならない。それだけのドルを発行するのに見合った金(Gold)を保有していなければならない。ドルの発行量が増えるにつれて、不安を抱いたフランスをはじめとする欧州はドルと金との交換を米国に求めた。はじめは米国もそれに応じていたが、次第に保有する金が減少し、ついには1971年にドルー金交換を停止した。これにより、ドルはその裏付けであり、歯止めでもあるものを無くした。そしてこの時からドルにとっては金は敵となった。金価格の上昇はドルの価値低下と同義になるからである。歯止めをなくしたドルは際限なく発行出来るようになり、他国から大量に輸入しても、その代金であるドルを次々に発行し、諸外国に膨大な債務を積み重ねている。国外だけでなく、国内でも政府債務、企業債務、消費者債務何れもがすでに2008年のリーマン・ショック直前をはるかに超えてしまっている。これほどまでに大量に通貨を発行すれば、本来はベネズエラやアルゼンチンのような強烈なインフレに見舞われれているはずである。しかし、少なくとも現在はそうはなっていない。そうなっていないのはドルが基軸通貨と言うことで、他国がドルを買ってくれるために、ドルが実際以上に価値を高めているからである。では、今後も際限なくドルの発行を続けられるのだろうか。米国はこれまで他国に対しては何度もドルの切り下げという形で、対外債務を踏み倒して来た。ほぼ4回もドルを1/2に切り下げて来ている。このために米国一辺倒の日本が一番被害を受けて来た。今、日本はおおよそ1000兆円の対外資産を有するが、その半分以上は米国である。いずれまたドル切り下げが行われれば、何百兆円かが失われる。借金大国米国は当然国内的にも問題を抱える。膨大に膨らんだ借金は、「金利」がとても重要である。米国の政府や企業、消費者は低金利の長い期間に債務を膨らませて来た。しかし、今その金利が上がり始めている。長期金利の指標である10年もの国債の金利(利回り)が3%を超えた。国債の金利が上がるのは、国債を買う人よりも売る人が増えているためである。米国の政府債務は21兆ドル、消費者債務は3.873兆ドル、非金融の企業債務は2017年末で14.5兆ドルとなっている。何れもが米国の歴史上最大の債務額である。非金融の企業債務は、生産的な投資のための債務ではない。多くが自社株購入のための債務である。投資銀行のゴールドマン・サックスは2018年度は650億ドルの自社株買いを予想している。2007年の記録589億ドルを上回る。株価の上昇はストックオプションにより役員報酬の増加と、上位20%の資産家の資産増をもたらすだけで、経済成長の要因である一般の消費とはほとんど無縁である。あまりにも際限のない米国のドル発行は、しかし、いずれどこかでドルへの信認を失う。自らの切り下げではなく、他国からのドルへの信用を失う。その時、米国は今のベネズエラやアルゼンチンを笑えなくなるかも知れない。そして、GDP比で世界最大の政府債務を抱える日本も同じである。債務とは過剰な通貨の発行でもあるのだ。未来を先取りしたものだから、現在の必要量よりも多く通貨を発行することになる。
牡丹

社会的動物

2018-05-17 19:16:05 | 文化
岩手に来て日々自然と接するようになり、その自然と触れ合っていると、つくづく人間は動物であると感じるようになった。そして、現代人はそのことを忘れ、そのためのしっぺ返しを多く受けているように思えるようになった。生物学者の早稲田大学池田清彦教授は、「人間の寿命は野生動物の基準からすると40年そこそこ。40歳過ぎた人は、本来ならいつ死んでもおかしくないような年齢を生きている」のだと言われる。「哺乳類の寿命は、体の大きさと比例していて、例えば陸上にいる哺乳類で一番長生きするゾウは、人間と同じくらい生きる。海の生物で言えば、シロナガスクジラは120年くらい生きる。人間はサイズから考えると、40年が限度だろうから、今みたいに100歳近くまで生きるなんて、生物としてタガが外れている」そうだ。社会の変化についても「昔の人は働くって自分で食べ物を獲ることだったけど、今はお金を得ることと同義でしょ。それに日本では農家や漁師が少なくなって、ほとんどが製造業とサービス業になった。そういう意味では、職種のバラエティが少なくなったと言える。仕事の選択肢は増えても、コミュニケーション能力を求められるような職業ばかりで、そうじゃない職業は本当に少なくなった。昔は、職人の仕事がたくさんあって、あまり人と話すのが得意じゃない人でも、生きる道が結構あった。」と言われている。また「直感は、意外と外遊びと関係があるんだよ。子どものころに外遊びした人と、家のなかだけで遊んでいた人とでは、能力が違う。人間、外で遊ばないとダメだよ。なぜかというと、外では予測不能なことが起こるから。その場で考えて、解決策を自分で捻り出さないといけないし、答えが最初からあるわけでもない。」とも言われる。これらは基本的に、人間の動物としての存在の希薄化に関連しているだろう。人の寿命は確かに伸びたが、その一方であまりにも多くの病が増えており、「健康長寿」の増加とは言えない。人間は動物ではあるが、ただ他の動物とは異なり、社会的な存在でもある。孤立して生きるよりも集団で生きることが効率がいいことを知って、その道を選んで来た歴史がある。その集団の作り方も動物と同じく強いリーダーの下で集団を作ることから始まった。そして、そこに人間固有の知恵が働き、「自由・平等」概念が生まれて来た。池田教授も自ら「自由人」だと言われている。そして、その「自由」は「他人の恣意性の権利を侵食しない限り、人は何をするのも自由である。」と言うものである。人が動物であることを認識した上で、自由人である池田教授は、現在の日本の状態へも目を向け、「国家予算を湯水のように使い」日本は「東京オリンピックで潰れる」と唱え、「アメリカに追従するだけ」の政権を批判される。日本の悲惨さは、しかし、政権の在り方だけではないだろう。それを許す野党、さらには国民の在り方、あまりにも政官財の凋落ぶりが酷い。戦後の経済成長で、経済大国になった驕りがそのまま維持され続けて、その底にある米国依存がアジアの一員であることをも忘れさせている。しかも、19世紀は英国、20世紀は米国の時代であったが、21世紀はアジア(中国・インド)の時代になるのだ。
朴の木の花

米国と心中する日本

2018-05-16 19:11:04 | 経済
太平洋戦争後の日本はずっと米国依存でやって来た。その代表は外務省で、国内では外務省による米国依存が主導して来た。政治も経済も全てである。同じ敗戦国ドイツもしばらくは米国依存であったが、経済成長と1993年のEU(欧州連合)成立とともに米国依存から脱して行った。特に、ドイツは現在ではEUの中心的存在であり、外貨準備でもドルは日本よりずっと少なくなっている。米国は名目GDPでは世界一を維持しているが、購買力平価で見たGDPではすでに中国に追い越されている。名目でも時間の問題だ。国の経済力は政治的な力にも大きく影響する。世界は今大きく変化している。米国にとって、中国とロシアの存在感が強く、同じ同盟国であってもEUの中心であるドイツやフランスをかってほどには頼れなくなっている。英国も自国に利がある時でなければ米国とは同調しない。要するに米国にとって、日本の存在感は薄くなっている。しかし、日本はあくまで盲目的に米国に追従し続けている。その米国は日本と同様に政府債務を膨らませ続けている。米国は約200年かけて1981年歴史上初めて政府債務が1兆ドルを超えた。そして、1981年10月22日から2018年3月15日までの37年間で一気にさらに20兆ドルの債務を積み上げた。1日平均1.5億ドル(日本円では大雑把にこの100倍)のペースになる。政府債務が20兆ドルから21兆ドルになるのに214日しかかかっていない。1981年にはGDPの31%に過ぎなかった国家債務は、今や105%になっている。米国政府自身の予測でも2025年までに国家債務が30兆ドルを超えるとしている。米国政府は社会保障とメディケアだけで予算の半分を費やしており、軍事費と政府債務に対する利子だけで税収全体よりも多くを費やしている。数年前は米国の10年国債は1.5%未満の利払いであったが、今はその倍になっている。現在、米国の中央銀行であるFRBは少しずつ金利を上げて来ており、今後も金利は上昇することが予想されている。歴史上、無謀な支出を賄うために記録的な額の借金をして繁栄した国はない。今の米国は「財政的な死のスパイラル financial death spiral」に入っていると言われる。国家債務がGDPの240%に達する日本では、まさに「いわんや日本をや」と言うことになるだろう。その日本は、先進国中最低の金利で、そのため国内のお金が収益を求めて金利の高い米国に流れ出している。国民の負担した年金保険料を運用している年金積立金管理運用独立行政法人GPIFの運用する140兆円のうち半分は米国の株や債券に投じられている。ここでも米国経済を頼り切る姿が見られる。しかし、いずれ間も無く、米国では2008年のリーマン・ショックをはるかに超える経済危機が訪れるだろう。その時、日本の株式や債券なども無論、無事ではすまない。積み立てられた年金基金も多くが失われてしまうだろう。さらに前後して日本政府も財政危機に見舞われるだろう。日米ともに政府債務があまりにも巨額になり過ぎて、誰ももうそれを真剣に見なくなってしまっている。政治家は特に、かえって放漫になっている。彼らはすでにもはや返済が不可能であることを知って、ある意味で、投げやりになっているのかも知れない。
ツツジ

続く小地震

2018-05-15 19:18:16 | 科学
連休の頃から曇天や小雨が続いていたが、昨日の午後からようやく晴れて来た。昨夜は久しぶりに星がたくさん見えた。周辺はもうすっかり新緑の5月になった。鶯の声も毎日聴こえて来る。昨日のウォーキング時にはツグミの姿を見た。まだ北へ移動していないようだ。職場の隣の醤油工場の裏の山に朴の木があるが、その木も大きくなって来て、昨年あたりから花を咲かせるようになったが、今年は蕾の数も増え、日当たりのいいところから花が開いて来ている。 釜石ではここ数日毎日のように小さな地震が続く。何ヶ月か前からちょうど震災前のように小さい地震が頻発するようになっている。岩手県沖や宮城県沖が震源地であることが多い。12日には長野県でM5.2の地震があったが、これは日本を分断する糸魚川-静岡構造線上である。そしてこの構造線の延長に南海トラフに続く駿河トラフがある。今年2月9日政府の地震調査委員会は、南海トラフでM8~9級の大地震が今後30年以内に起きる確率を70%程度から70~80%へ引き上げた。東北大学災害科学国際研究所の遠田晋次教授は、東日本と西日本で発生する内陸地震を、それぞれ前者は東日本大震災以降に活発化した「ポスト東日本大震災」、後者は南海トラフ地震に向け活発化している「プレ南海トラフ地震」と見るとしている。東日本は大震災の影響で内陸地震が各地で起きており、中でも首都直下地震は大震災以前の1.5~2倍のペースで発生していると言われる。同教授は「地震の統計では、小さな地震が増えると、大きな地震が起こりやすくなるという傾向があり、首都直下地震は要注意です。」とする。「近畿、中部は活断層密集地でありながら、近年大地震が起きておらず、要注意」とも言われる。一方、昨日、九州南部の霧島連山の新燃岳は噴煙を4500mまで上げる噴火を起こしている。武蔵野学院大学島村英紀特任教授によれば、東京ドームは124万立方mあるが、その東京ドームで数えると250杯分以上だったものを「大噴火」と言い、実に3億立方mという途方もない量で、日本では過去にこの「大噴火」が度々起きている。記録に残る17世紀以後で見ると、各世紀に4~6回も「大噴火」が起きている。ところが1914年に起きた鹿児島桜島の噴火と1929年の北海道駒ケ岳の噴火の2つ以外にはその後「大噴火」は起きていない。つまりここ100年近く「大噴火」が起きていない「異常な時代」なのだと言われる。静穏な時期は地下でそれだけ多くマグマが溜まる。そして、その「異常な時代」の終わりを告げたのが2011年の東北地方太平洋沖地震だった可能性がある。巨大地震は日本の地下にある基盤岩を一挙に動かしてしまった。震源に近い牡鹿半島では5mを超えて動き、首都圏や富士・箱根の地下でも30~40cm動いている。世界ではこれまでM9クラスの地震が7回起きているが、いずれもその地震の後で巨大噴火を伴っており、現在まで東北地方太平洋沖地震だけがその噴火を伴っていない。日本には活火山が110あり、その何れもが大噴火を起こし得る。中でも首都圏に大きな影響を与える富士山や箱根は、それぞれ1707年の富士山の宝永大噴火、1200年前の箱根大噴火を最後に噴火が見られていない。平安時代や江戸時代には東北地方太平洋沖地震と同じ規模の巨大地震と巨大噴火が続いて発生していた。自然は時期はずれても必ず同じことを繰り返すものだ。
朴の木の花

朴の木の葉

いつまでも続く中東の混迷

2018-05-14 19:12:59 | 社会
米国の中東への関与は全て石油や天然ガスの利権と関係している。1990年の湾岸戦争も石油会社を経営していたブッシュ家が関与しており、ヒラリー・クリントンも石油・天然ガス事業者とのつながりがある。そして米国の巨大財閥であるロックフェラーは石油で財を成している。国家としても米国はオイル・ダラーとして維持することが通貨ドルの価値の維持のために必要であった。2010年に米国地質調査所は地中海東側に大規模な天然ガスと石油が埋蔵されていることを発表した。シリアでは国内第二の港湾都市であるタルトゥース沖にあたる。しかし、内戦の影響でシリアは発掘の余裕がなく、米国企業が進出したイスラエルがその発掘で利を得ている。中東はイスラム教であるが、同じイスラム教でもスンニー派とシーア派に分裂している。イスラム教の開祖はムハンマドであるが、その後継者をムハンマドの血類であるアリーの子孫とするのがシーア派(シーア・アリー/アリーに従え)で、話し合いで選ぶべきとするのがスンニー派(ムハンマドの教えであるスンナ/慣行を守る)である。世界のイスラム教徒16億人の9割がスンニ派であるが、東南アジアやアフリカはスンニ派であり、中東に限ると面責的には両派に差がない。同じ国の中に両派が混在しており、数の上でどちらかに傾く。イランはシーア派が多く、シリアのアサド政権はシーア派の分派であるアラウィー派である。こうした宗教的な対立に、欧米の利権が絡まり、中東での争いが絶えない。テロ組織であるイスラム国ISはもともとアルカイダの後裔であり、そのアルカイダは旧ソ連のアフガニスタン侵攻に対して、米国のCIAが育てたものだ。イスラム国が財力と武器を維持出来ているのも何らかの形で米国の一部が関与しているためだと思われる。米国には第二次大戦後アイゼンハワー元大統領が警告した通り、軍産複合体が巨大となっており、軍産複合体とって、世界の何処かの紛争に米国が関与する必要がある。シリアは内戦で、多くの人が難民として国外へ脱出したが、それは必ずしもアサド政権に批判的であった人だけではない。政権への態度とは関係なく、命を守るために脱出している。米国は「正義」や「民主主義」を振りかざして他国に侵攻して来た。しかし、その裏には、常に武力紛争が必要な軍産複合体と石油や天然ガスの利権を求める存在がある。教育より宗教が勝る中東は彼らの格好の餌食となっている。日米のメディアはそうした利権集団のプロパガンダに乗っているだけである。先のシリアの化学兵器使用なども英国の杜撰な「調査」による決めつけであり、悪名高い白ヘルメット集団がここでも登場していた。米国の現大統領は日米のメディアから傍若無尽のとんでもない大統領として報じられるが、従来からのウォール街の金融産業や軍産複合体からの圧力の元で、むしろそれらの思惑を何とかかわそうとしているように見える。極端な言動により、それらにかえって尻込みさせるようにしている。軍産複合体もさすがにシリアやイランの背後にいるロシアや中国とはまともにはぶつかりたくはない。またもにぶつかれば、まさに世界最終戦争となる。
浜茄子の花

未来への無策

2018-05-12 19:14:16 | 社会
2017年の国別の自動車販売台数は中国がトップで、2570万台で米国を800万台上回っている。日本は3位だが中国の5分の1である。中国は2010年に米国を追い越して、世界最大の自動車市場となった。昨年4月中国は2025年までの自動車産業の育成計画である「自動車産業の中長期発展計画」を発表している。中国自動車市場の規模を2020年には3000万台、2025年には3500万台とし、10年間を掛けてコア技術、部品供給、ブランド力、新業態の創出、自動車の輸出、環境保護などの面で中国を「自動車強国」に躍進させ、コア技術としてパワートレイン、トランスミッションシステム、電池、モーターなどの分野で2020年に世界の先端レベルに達するよう競争力のある部品メーカーを育成し、部品メーカーとしても2025年には世界のトップ10に入ることを目指している。海外では米国、ブラジル、ハンガリー、フランス、エクアドルに工場を新設し、南アフリカにも大規模な工場を作ろうとしている。中国の自動車企業はボルボをすでに傘下にしており、PSAプジョー・シトロエン・グループによる独オペルの買収にも背後に中国企業がいると言われており、3社が欧州市場に進出を加速していると言う。日本のリーディング・カンパニーであった家電産業は中国や韓国の進出で、すでに負け組となっているが、この10年で自動車も確実に負け組になってしまうだろう。自動車産業は日本独自の「安全規制」と車検制度により政府保護を受けており、その上、販売台数が伸びない中で、やはり「円安」と言う保護で最高益を受けた。日本は1995年をピークに、15歳から65歳未満の生産年齢人口が減少し続ける中で、中国の台頭を迎えた。中国は安い賃金で物を作り、安価な製品が日本にも出回った。いまだに中国製品への粗悪イメージが流布されているが、日本メーカー名の家電製品はほとんどが中国で作られている。衣類も然りである。敗戦後、日本は米国に市場を得て、経済成長を始めたが、当初は同じく米国からは日本製品は粗悪だと見られていた。同じことがただ中国で繰り返されているだけだ。カメラなどは戦後間も無くは欧米の模造品ばかりが日本で作られていたのだ。日本では、1990年以後実質賃金が下がり続けている。変わらぬ産業構造のため、中国の安価な製品に押されて、企業収益は思うように伸びなくなり、企業は対抗上コストを下げざるを得ず、真っ先に手をつけられたのが人件費である。非正規雇用の拡大はその一環でしかない。産業構造が変わらない限り、この傾向は今後も続いて行く。米国が日本に製造業を追い越された時、米国は産業の主力を金融産業に切り替えて、延命を図った。また優秀な大学と優秀な移民の受け入れにより、世界のデジタル革命を先導し、FAANG(ファング)、すなわちフェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルなどの超巨大ハイテク企業が成長した。アップルは今や企業としては初になる同社株の時価総額が1兆ドルを目前にするまでになっている。もちろん、バブルではあるが。総務省は先月、「自治体戦略2040構想研究会 第一次報告」を発表している。「人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか」と言う副題が付いている。最初に「我が国は、少子化による急速な人口減少と高齢化という未曾有の危機に直面している。」と書かれている。「未曾有の危機」としながら、人口対策も産業転換対策も全く取られていない。この両者の欠如は産業の衰退をもたらし、税収を減少させ、増え続ける高齢者の年金や医療費などの社会保障費の増大で、政府負債をさらに膨張させる道筋しかないことを意味する。そして、それは持続不可能である。
スミレ

失業率と実態の乖離

2018-05-11 19:14:01 | 経済
米国のニューヨークタイムズThe New York Timesは先月26日、「Fed Officials Worry the Economy Is Too Good. Workers Still Feel Left Behind.(FED当局は経済が良過ぎることを懸念している。労働者はそこから置き去りにされていると感じている)」と言う記事を載せている。米国の中央銀行連邦準備制度FEDの当局者は、ここ数週間、異常に低い失業率がインフレの急騰を引き起こし、金融市場を不安定にする可能性があるとして、経済が「過熱」にどれほど近づいているかについての公的・民間の討論を拡大したと言う。米国の現在の失業率は4.1%で、半世紀に記録された最低水準に近く、FRB連邦準備制度理事会が持続可能な長期失業率と判断している水準を下回っている。このことがFRBには経済の加熱状態を懸念させている。一方、ニューヨークタイムズの3月の世論調査では、消費者物価が前年度よりも速く上昇したと回答した回答者は62%だった。しかし、インフレ率が、国が直面している最大の経済問題であると答えたのは4%にとどまり、最大の経済問題として医療費を挙げたのは25%、21%は貧富の格差、10%は停滞した賃金と恩恵を挙げている。経済をコントロールしようとする中央銀行は、「失業率」を見て、経済の加熱状態と判断しているが、労働者は実質賃金が低下し、「経済の加熱」など実感出来ないでいる。仮に米国経済が「加熱」に近ければ、中央銀行は金利をさらに上げて、「加熱」を抑えなければならない。何故、失業率と言う統計データと労働者の実感に乖離があるのだろう。失業率が極めて低いと言うことは、本来であれば賃金は上昇しているはずである。失業率が高ければ、失業者が多いわけだから、企業は安い賃金でも労働者を雇うことが出来るが、失業率が低ければ、失業者は少なく、企業はより賃金を高くしないと新たな労働者を雇えない。ここで雇用統計を見る場合、失業率の他にも労働参加率を見ることが大事だ。この指数は16歳以上の人口に対し、雇用されている人と「仕事を探している人」の比率を示している。景気が加熱するとこの比率は上がる。ところが、セントルイス連邦準備銀行Federal Reserve Bank of St. Louisのデータでは、2008年の金融危機からの9年におよぶ経済回復でも、労働参加率は下落傾向で明らかで、それ以前20年の66~67%と言うトレンドとは異なり、現在は63%弱にまで落ち込んでいる。1600万人の労働者が労働市場から立ち去っている。FRBが用いる失業率はU-3失業率と言われるもので、これには仕事を探すのを止めた失業者は含まれない。実際には失業していてもだ。労働参加率を考慮した失業率をみると、失業率は一挙に9.1%にもなる。やはりセントルイス連邦準備銀行が算出した個人所得年間成長率personal income annual growth rateを見ても、1968年から1980年代までは10%ほどであったものが、以後、趨勢的に下がり、現在は2%ほどでしかない。米国のインフレ率を考えれば、実質賃金が増えていないことも頷けるだろう。日本も同様で、「失業率」が低いことを政府は強調するが、景気の過熱は見られない。実質賃金は同じく低下している。人手不足が言われる産業はサービスや建設などで、いずれも非正規雇用を対象としている。
鈴蘭

米国のイランとの核合意離脱

2018-05-10 19:14:54 | 社会
2016年の世界の国別石油産出量を見ると、1サウジアラビア、2ロシア、3米国、4イラク、5カナダ、6イラン、7中国、8アラブ首長国連邦、9クウェート、10ブラジル、11ベネズエラ、の順となっている。しかし、サウジアラビアとロシアは僅差であり、昨年2月21日はブルームバーグBloombergは、「ロシアが昨年12月にサウジアラビアを抜き、世界最大の原油生産国となった。」と報じている。ベネズエラは現在の産出量は少ないが、埋蔵量では世界一である。同国は政治と経済の混乱が続き、先月、日本経済新聞が伝えたように3月末時点でのインフレ率が前年比8878%と言う途方もない数値に達している。ところで、一昨日、米国大統領はイランとの核合意から離脱すると発表した。2015年7月に、米英仏独中ロ、欧州連合(EU)とイランとの間で「包括的共同行動計画」が合意された。これを一般に「核合意」と読んでいる。イランが核開発を抑制する代わりに、各国による経済制裁を解除すると言うものである。米国大統領は当初からこの合意は意味のないものだと批判して来た。米国の合意からの離脱に対しては他の合意国は揃って批判的である。英国のBBCは不完全ではあるが合意は機能していた、として代案を示さない米国大統領に批判的な記事を載せている。米国のイランとの合意離脱は直接的に原油価格を押し上げた。中東ではイランとイスラエル、サウジアラビが敵対しており、今回の米国の離脱をイスラエル、サウジアラビ共に歓迎している。シリアを介してイスラエルとイランは直接的にも対峙してもいる。従って、米国の合意離脱により今後中東で紛争が激化する可能性が生まれて来たのだ。紛争の激化は中東での石油産油量を減らし、原油価格を高騰させてしまう。原油価格が高騰して利益を得るのは産油国であり、産出コストの高いシェール石油を多く埋蔵する米国である。石油を輸入に頼る国では原油価格の高騰は経済に大きく打撃を与える。1973年の第四次中東戦争を機にアラブ産油国は原油の減産と大幅な値上げを行い第1次石油ショックが、1979年には続いて第2次石油ショックが起きて、1980年にピークとなった悪夢が世界にはある。今では衣食住全てに渡ってエネルギーや原材料として石油が使われている。物価上昇と景気後退を共にもたらす。昨日、ロイター通信は「イランの欧州・アジア向け原油輸出、米制裁再開決定が影落とす」、またブルームバーグは「米国の原油輸出、年内に過去最高更新も-対イラン制裁再開で需要拡大」と題した記事をそれぞれ報じている。記事の表題が各国の立場を鮮明にしている。イランから石油を輸入する欧州やアジアは不利益をこうむり、米国は利益を得る。イラン自身は直接自国が武力攻撃を受けない限り、さほど大きな影響を受けないで済む。ただ、イランも内部では強硬派と穏健派の対立があり、穏健派である現イラン大統領は強硬派の突き上げに苦慮するだろう。米国の中東への関与の歴史は全て石油が絡んでいる。またイスラエルやサウジアラビアはその米国の関与を望んで来た。政治の背後には常に国益があるが、その国益が特定の商益と繋がりがあるのも常である。そして国民生活は二の次となる。
梅花落葉松

規制がはびこる日本

2018-05-09 19:13:46 | 社会
日本は明治維新により、早く欧米列強に追いつくために富国強兵を唱い、産業の興隆に努めた。その際、産業への新規参入は現代以上に自由であった。多くの新規企業が参入可能であった。しかし、太平洋戦争が官僚統制を生み出し、産業も官僚の管理を優先し、統合されて行った。敗戦後もその統制は残され、「安定」を理由に既存産業への新規参入は制限された。高度経済成長を経て、1980年代の新自由主義が席卷しても、独占的な利益を確保したい企業と利権を保持したい官僚が一体となり、本来の自由化は阻まれた。官僚統制の残る時代に高度経済成長を成し遂げたことが、いまだに成功体験として残っているために、「自由化」は容易には行われない。その代表的な産業は電力業界である。2011年の福島第一原発事故があったにも関わらず、経済産業省は原発推進を続けている。同省では今尚原発は発電コストが最も低いとしており、世界的には急速に進んでいる再生エネルギーへの転換を遅らせている。震災後、再生エネルギー分野に多くの企業が参入したが、広がりは止まってしまった。再生エネルギーで発電しても、送電線が解放されないために新規参入の企業は利益に結びつけられないからだ。いまだに再生エネルギーは原発より高コストで不安定だとされてもいる。日本のこうした「井の中の蛙」ぶりをよそに、世界では急速に再生エネルギーが拡大しており、コストも格段に低下して来ている。太陽光発電で使われるパネルは、高度に自動化された大規模工場で生産されるようになり、7年前には1Kw/hあたり36セント(38円)だったものが今では3分の1以下の10セントであり、2019年には3セントにまでなると、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は見ている。経済産業省が最もコストが安いと主張する原発は8.9円である。しかもこのコスト計算には建設前の地元への補償費や使用済み核燃料棒の処理費用、事故後の対策費などは含まれていない。エネルギー関連事業を展開する多国籍企業である英国のBP社が昨年発行した「エネルギー白書」では、再生エネルギー発電量トップは中国で、僅差で米国が続き、ドイツ、ブラジルに次いで日本となっているが、日本は中国、米国の5分の1ほどだ。英国は1990年、ドイツは1998年にすでに発送電分離を終えており、日本は2020年を予定すると言う遅さである。しかも、日本の発送電分離は単に既存の電力会社の分割であり、発電会社と送電会社は同じ「系列」として残り、独占は実質的に崩れない。昨年12月12日、NHKのクローズアップ現代は「中国で急拡大する再生可能エネルギー 日本は飲み込まれる?」を報じている。中国は以前には火力発電と原発を発電の主力としていたが、日本の福島第一原発事故を機に、原発から大きくシフトして、今では「2050年までに再生可能エネルギーを全電力の8割に拡大する」としている。また、中国企業はコスト競争で優位に立ち、世界をリードする存在となりつつあると紹介している。上海に本社を構える太陽光パネルメーカーは一昨年、パネルの出荷量で世界一となり、火力や原子力より低いコストを実現し、さらに独自の発電事業にも力を入れ、中国国内に300以上の発電所を所有するまでになっている。中国の地方の農村部では再生エネルギー関連のベンチャー企業が次々に起業し、農家も土地の賃料を得ている。同番組では欧州では風力発電で、1kw/hあたり6円で発電する企業が登場し、中東のUAEでは3円で発電するメガソーラーが建設されたことも伝えている。
石楠花