日本では1981年に死亡率で癌が脳卒中を抜き第1位となって以来、癌による死亡率は増え続けている。では癌の発症率はどうか。OECD(経済協力開発機構)の2012年の統計を見ると、対10万人で世界のトップはデンマークの338.10人となっており、先進国ではフランスが2位で324.60人、米国が318.00人で6位、ドイツ283.80人で17位、イギリス272.90人で22位、日本は217.10人で30位である。つまり、先進国の中では日本は癌の発症はむしろ少ない。これを癌死亡率で見てみると、同じくOECDの2013年の統計では、対10万人で英国222.40人で11位、ドイツ204.80人で19位、フランス203.50人で20位、米国197.90人で23位、日本は179.00人で33位である。しかし、これら先進国にあって、欧米では毎年およそ5%ずつ癌死亡数が減っているのに対して、日本は唯一男女とも、癌の死亡数は増加し続けている。その理由を一般には高齢化によるとされる。しかし、同じく平均寿命が80才超えているドイツでも癌による死亡は減少している。医療制度が充実しているはずの日本でどうしてこのような現象が見られるのだろうか。癌は様々な要因で発生すると思われるが、やはり日常生活に関連している部分が大きいと思われる。特に戦後の日本人の食生活の変化は発癌にも影響していると考えられる。肉の摂取量は50年間で約10倍となり、脂肪分は約3倍にも増えた一方で、野菜や果物の摂取量は減り、米国を下回っていると言う。数日前スウェーデンの食品庁は米の摂取制限を勧告した。米には他の食品よりもはるかに高い濃度の発癌性のある無機ヒ素が含まれているためだと言う。東京大学大学院の小栗朋子氏の論文「日本人の無機ヒ素摂取量とその健康リスク」によれば、やはり日本人の一日無機ヒ素摂取量の90%を米とひじきから摂取している。スウェーデンの食品庁の精米調査では無機ヒ素含有量は最小値が0.03mg/kg、最大値が0.148 mg/kgとなっており、日本の農林水産省の『食品中に含まれるヒ素の実態調査』によれば、精米の無機ヒ素含有量は最小値が0.02mg/kg、最大値が0.26mg/kgで、平均値0.12mg/kgとなっている。スウェーデンは今回の勧告で大人は摂取量を減らし、週に6回までにするようにとしている。そして、6歳未満の子どもにはライスクッキーを食べさせないようにとする。先月29日までオーストリアのウィーンで開かれた欧州癌学会で、イタリアの研究機関連合ユーロケアが欧州29カ国の癌患者2,000万人超を対象にした調査結果を発表している。それによると、癌と診断されてから5年後の患者の生存率(5年生存率)は欧州で最も高いのがスウェーデンの64.7%であった。東京経済大学西下彰俊教授によれば、「スウェーデンはそもそも寝たきりになる人がほとんどいない。いたとしても、終末期ケアが行われる数日から数週間の短期間だけ」だと言う。また国際医療福祉大学大学院高橋泰教授によれば、「スウェーデンを始めとした北欧諸国では、自分の口で食事をできなくなった高齢者は、徹底的に嚥下訓練が行われますが、それでも難しいときには無理な食事介助や水分補給を行わず、自然な形で看取ることが一般的です。それが人間らしい死の迎え方だと考えられていて、胃に直接栄養を送る胃ろうなどで延々と生きながらえさせることは、むしろ虐待だと見なされているのです」と言う。スウェーデンの平均寿命は81.7歳だ。日本の83.1歳と大差はない。食事に対する注意と高齢者のライフスタイルの違いは癌の発生やその死亡率へも大きく影響しているように思われる。子供と暮らす65才以上の高齢者は日本は44.1%もいるのに対して、スウェーデンはわずかに4%しかいない。高齢者も独立して、暮らしを楽しめているのだろう。国連が4月に発表した「World Happiness Report 2015(世界幸福度報告書2015年度版)」では158カ国中スウェーデンは8位で日本は46位になっている。報告書では「幸福になるにはお金だけでは不十分で、社会の公正さや個人レベルでの正直、信頼、健康も必要である」としている。
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