釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

電力自由化も原発をかかえる限りコストは下がらない

2015-10-01 19:22:23 | 社会
来年4月1日から家庭用電力も自由化される。電力の自由化は世界的に1990年代に広がった。日本の1964年に出来た電気事業法は中央集権型のエネルギーシステ ムを前提に作られており、日本の高コスト構造、内外価格差を見直す方向で自由化が提起され、1995年の電気事業法改正に始まって、法人対象の電力自由化が開始された。2000年3月に使用規模が2000kW以上の事業者に限って自由化され、2004年4月には500kW以上に拡大。さらに2005年5月には50kW以上まで拡大されて来た。しかし、高コスト体制を改善するための新規電力業者の参入はシェアでわずか5%でしかなく、事実上は旧来の大手電力会社の地域独占が継続されて来ている。収益率のいい家庭用電力については東京電力が中心となり、自由化を阻んで来た。しかし、福島第一原発事故で東京電力は事実上経済産業省の管理下におかれ、家庭用電力も自由化が形の上では行われることになった。しかし、旧来の大手電力会社間の熾烈な競争は無論、新規の参入も期待出来ない。震災後、再生エネルギーへの期待が膨らんだが、電力会社と経済産業省は一体となり、再生エネルギーへの新規参入を実質的に制限している。特に日本では風力発電の場合は、28件もの法令に対し許認可を要し、その上で3~4年かかる環境アセスメントを受けなければなえらない。こうした手間が高コスト化を招き、新規参入を妨げている。電力は現在、発電と送配電を大手電力会社が握っており、欧米のような自由化が行われるには発送電分離、発電と送配電を分ける必要がある。電力を供給する企業と、電力を送り配する企業を別々にする。日本でも経済産業省は2020年にそれを行う意向だ。しかし、この場合も旧来の電力会社に送配電部門を子会社として、持ち株会社とすることを許す。形式的には分離するが、実態は旧来と変わらない。さらに、経済産業省の総合資源エネルギー調査会専門委員会は今年6月1日に2030年における電源構成の政府案を承認した。そこでは原子力が20~22%となっている。原発事故を受けて策定された「基本エネルギー計画」では、再生可能エネルギーを「最大限導入する」、原子力に関しては「可能な限り低減させる」となっていた。日本の原発は今48基で、そのうち2030年末で運転40年未満のものは18基しかなく、建設中の2基を加えても20基である。これらが70%の稼働率で稼働したとしても、2030年の予想総発電量1兆kWhの15%しか賄えない。原子力を20~22%とする政府案を達成するためには40年以上となる原発を稼働させるか、新規原発を建設する必要がある。福島第一原発事故は、2013年11月11日に自民・公明両党の東日本大震災復興加速化本部が政府に出した福島復興加速化案によれば、事故に伴う賠償、除染、汚染水処理、廃炉にかかる費用が10兆円を上回る。年間の国家予算の1割である。実際にはさらに費用はかさむだろう。原発堅持が前提であるため、本来であれば東京電力はこの事故だけで倒産する。しかし、この福島復興加速化案では政府がその費用に関与すべきとしている。要するに国民から徴収した税金を使えと言うものだ。原発を今後も維持する限り、例え形式上発送電分離を行っても日本の電力の高コスト構造は変わらないだろう。
藤袴(ふじばかま)

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