釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

オークションの利用

2012-05-31 19:13:47 | 文化
よく晴れたいい天気になった。昼休みにまた裏山の旧道を車で走ってみた。山の緑が濃くなった。その緑の中に薄紫の山藤と桐の花が目立っている。この旧道沿いには朴の木がたくさんある。朴の木の花は木がそれなりに大きくならないと咲かないようだ。まだ偽アカシアは蕾も見えない。道路脇で桜草が自生しているのを見つけた。小鳥たちが飛び交い、可愛い声で鳴いてくれる。今日も何人かの初老の方たちが散歩をしていた。2年ほど前から古いレンズを手に入れることをきっかけにオーションに参加するようになった。最近の新しいレンズとは一味違った趣のレンズに魅了された。それぞれに個性があり、欠点もあれば長所もある。今のレンズは優秀だが個性を失って来ている。古いレンズからやがて古いカメラにも興味が出て来た。古いカメラは形と機能にとても個性がある。ただ眺めるだけでも楽しくなる。国ごとの特徴もよく出ている。ドイツにはじまり、英国、フランス、イタリア、米国、旧ソ連、中国のそれぞれ古いカメラを手に入れた。外観はドイツのものに似ていても中身は各国毎に意外に工夫されたり、省略されたりしている。ドイツの模倣から出発して、国毎に工夫を凝らした発展の跡が感じられる。中でも日本のカメラの開発は目を見張るものがある。精密で安く、描写のすばらしいカメラとレンズを開発した。世界中で日本のカメラとレンズが受け入れられ、多くの人の間で普及した。戦後から1970年頃までの開発の跡をたどることが出来る。オークションそのものもやり始めてみると、いろいろ要領があるのに気付いた。オークション参加者にはそれぞれに「評価」が付けられる。1回毎の取引の結果がそれに反映されるようになっている。参加当初はどうしても目的のものを獲得しようとして、つい熱が入る。気が付いてみると市販されている価格と変わらない価格になっていたりしたこともあった。しかし、よくよく気を付けるようになると、逆に、予め市販価格を調べておく。最高でもその3分の2以下の価格で落札しなければオークションの意味はない。酷い場合は落札商品より送料の方が高い場合などもあった。入札している人の「評価」を見ていると、評価の高い、ベテランほどこの価格の動きをよく見ているようで、市販価格に近くなりそうな場合は早々と入札を中止している。評価の低い、初心者ほどいつまでも値を追いかけて、価格を釣り上げている。結局高価格で落札している。ベテランは何度も安い価格帯で挑戦して、あせらず、じっくりと時間をかけて入手しているようだ。手を引く頃合いをよく心得ている。しかし、見ているとこうしたベテランもめったに出ない希少なカメラやレンズではかなり熱を入れることもある。希少品にはあまり興味がないが、ベテランの行動を見るいい機会にはなる。市販品は中古のカメラやレンズを在庫として持ち、店を構えた多くの業者から入手出来る。こうした業者もまた良心的なところと、そうではないところがあるようだ。中古品は値があってないようなもので、ほんとうに値付けはピンからキリまである。一応そうした業者の価格を参考にさせてもらっている。オークションの最近の落札価格を表示してくれるサイトまである。ネットさえ繋がれば今はネット上でたくさんの品を見つけることが出来る。山野草や花なども業者やオークションを利用することがある。釜石の限られた店の環境であっても不自由することはほとんどなく過ごせている。
白い朱鷺草(ときそう) 鷺草(さぎそう)の方はもう少しで咲きそうだ

人を育てることを見失った学校

2012-05-30 19:26:15 | 文化
今日は薄日が時々射す程度のどちらかと言うと曇天に近い天気になった。近所の庭先では菖蒲が咲くようになった。牡丹の花が終わり、今は芍薬だけが咲いている。鈴蘭もまだ見かけることがある。いくつか色合いの異なる苧環があちらこちらで見られる。今、娘の方は釜石のNPOで開催する写真展のための写真の整理やU先生たちの釜石での被災した人たちのカウンセリング活動の手伝いなどで忙しそうだが、息子の方は気仙沼のボランティア活動がまだ始まらないため、家の庭の花壇づくりに取り組んでいる。ホームセンターから鉢や土を買い込んで来て、計画を立てて、庭のスペースの活用を考えながら進めているようだ。家人は大阪府下のある市教育委員会の委託で障害を持つ生徒の支援のために毎日その生徒の通う中学へ行っている。最近、その中学の生徒たち、特に、世間で言う、「ぐれた」生徒たちへの教師の対応について聞かされた。「ぐれた」生徒たちは家庭内に問題があることが多い。まだ十分に自己形成がなされていない年齢の生徒たちにとって、家庭に問題があるのはとても大変なことだ。しかし、教師たちは生徒のすさんだ心から出て来る表面的な行動しか見ない。対応もただ怒鳴りつけて、抑え込もうとするばかり。中には教師よりも体格がよく、教師も腕力ではとてもかなわないような生徒もいるが、そうした生徒には教師もあまり怒鳴らないのだと言う。多くの生徒から嫌われているある教師は、授業中に自分はこんな学校に来ることは望んでいなかったし、お前たちを相手になどしたくはなく、仕方なく教えているのだから、静かに授業を受けろ、とはっきり言っているそうだ。この話を聞いて、息子はどうして不登校や引きこもりの生徒には学校もちゃんと対応しようとするのに、こうしたぐれて問題行動を引き起こす生徒には学校もちゃんとした対応をしないで、ただ怒鳴って抑え込もうとするだけなのだろう、と疑問を呈していた。これは基本的に教師や学校の責任回避でしかないだろう。不登校や引きこもりと言った生徒の内向的な行動は生徒の自殺を招きかねなく、状況によっては学校や教師の責任が追及されるために、こうした生徒の場合は学校も少しは真剣に取り組もうとする。しかし、ぐれて問題行動を引き起こす生徒の場合は、世間も学校や教師ではなく、生徒自身の責任として捉えることが多いため、学校側はむしろ世間の目を気にしないで、生徒に怒鳴りつけることで対応が可能だと考えてしまうのだろう。「教育」は教え育てることだ。しかし、今の学校教育はその後半の育てることが欠落している。かってはぐれた生徒でもそれなりに話のできる教師がいた。自分を少しでも認めてくれる教師がいるという気持ちは自己形成期の生徒にとってとても重要なことだ。まして家庭に問題があり、家でも学校でもだれも自分を認めてくれる大人がいない生徒は自分を大切にすることなど学べない。そうした生徒の親だけでなく、学校の教師たち自体も結局は自分を大切にすることを学べていないのだろう。生徒たちから嫌われていると言う教師の言葉を聞いても、教師自身が荒んでいることが分かる。
菖蒲が咲き始めた

大潮高謄

2012-05-29 19:13:53 | 文化
関東では深夜に震度4の内陸地震があったようだ。M5.2となっている。昨日は釜石では一時的に多量の雨が降ったようだが、建物の中にいたので気付かなかった。今日は日射しが出ていたので昼休みにまた職場の裏山の旧道を走ってみた。それほど高くないところで雉が鳴くのを聞いた。住宅もすぐ近くにある。これまで何度も禁煙に挑戦したが、一昨年から半年近く禁煙出来ていた。しかし、震災直後から再び喫煙するようになった。今も止められないでいる。家の中では吸わないことにしているので、いわゆる蛍族だ。ただ蛍族にも効用はある。喫煙の最中にゆっくりとまわりの情景を眺めることができるので、季節の変化を確実に捉えることが出来る。昨夜も小雨が降る中じっと地表を見つめながら喫煙していると、意外に多くの虫たちが動めいているのに気付く。その虫たちを見るだけで、やはりこの東北の自然の豊かさを感じ取れる。自然の豊かさと言えば、震災後海では奇妙な現象が起きていると言う。5月23日付けの警察庁の発表によれば震災後行方不明者はまだ3021人いる。今月も各地で捜索が続けられた。その捜索の中心は海だ。海の捜索では潜水捜索になるが、その捜索で、魚や貝、海藻などの成長が震災以前に比べても驚くほど早いと言う。原因は大量の泥とプランクトンの発生で、それに続いて海の生物たちが急速に成長して行った。極めて豊かな海が現出したのだ。津波がいつも以上の豊かな海をもたらした。ただし、放射能汚染を考えると手放しでは歓迎出来ないが。日本の文献で津波の記事が記録されている最古の文献は日本書紀の684年白鳳南海地震による津波だと言われる。津波という言葉が使われるようになったのは17世紀初めの江戸時代の「津浪」からのようで、日本書紀では「大潮高謄」などと表現されている。1854年の安政南海地震による大津波では大阪の浪速区にも津波が押し寄せ、そこには石碑が残されている。一部では3mの津波が遡上したと考えられている。現在の大阪は当時より工業化, 都市化のため地下水の汲 み上げが激増し、最大で3mもの地盤沈下が起きており、人口も密集しているため、同規模の津波が襲えば甚大な被害が生じるだろう。古来日本へは何度も津波が襲っているが、世界の津波の8割は太平洋に集中しており、1700年に北米で起きた地震による津波が日本へも到達したことが記録されているようだ。太平洋を渡って来る津波は深さ2000mの海底をジェット機並みの500~700Km/hrのスピードで伝わって来る。震災後津波の研究はかなり加速されているようで、特に各地の地層調査は様々な研究者が取り組んでいる。その結果、知られていなかった過去の津波の痕跡が見出され、これまでの想定を次々に覆して来ている。北海道道東では過去に30mの津波が来ており、奥尻などの日本海側でも600~700年周期で1993年の北海道南西沖地震(M7.8)クラスの地震が繰り返されていることも分かって来た。3月31日政府の中央防災会議の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」が発表した南海トラフの巨大地震の想定ではM9.1となっているが、南海トラフの東海、東南海、南海の3連動に留まらず、沖縄までの4連動の可能性を指摘する研究者もいる。検討会の想定では高知県の50cmにも及ぶ堆積地層の結果なども反映されておらず、巨大地震は可能性としてM9.1をさらに上回ることも考えられる。M9.1の想定ですら最悪の場合、政府の作業部会は30万人の犠牲者を出す可能性を示している。いたずらに最悪のケースを誇張することは避けなければならないが、堆積層の発見などは十分に考慮されなければならないだろう。政府の検討会がそうした新事実を盛り込んだ想定を今後も更新して行くのか、一方で不安も残る。
駒草 高山植物の女王

生き物が教える自然現象

2012-05-28 15:20:55 | 文化
今日は昨日までの晴天とは打って変わって朝から曇天と小雨の1日となった。職場の裏山の桐の木の花が光の反射がないためいつもより紫の色が濃く目に映る。背景の緑の中で浮き出ている。久しぶりに巨匠とお会いした。仕事と熊の駆除でとても忙しいようだ。今年は春の冬眠開けから熊が仮設住宅によく出没する。釜石は土地が狭いので、仮設住宅も山間部に建てられているところが多い。今は熊にとって木の実の季節ではないので、野草しか餌にならない。野草以外の餌の臭いを仮設住宅に嗅ぎ付けているのだろう。鹿もよく出ているようだ。冬を前にした熊は油が厚くなっているが、今の熊はあまり油がないので巨匠には欲しい熊ではないそうだが、警察から駆除の依頼があれば断るわけにはいかないようだ。先の土日は盛岡で、東北6県から集まった復興を願って開かれた東北六魂祭が開催された。青森県のねぶたをはじめとして東北6県の代表的な祭りが披露された。昨年ははじめて仙台で開かれた。盛岡には2日間で24万人を超える観客が訪れたそうだ。職場の方で観覧された方もおられた。同じ催すならば被災した地域で催した方が勇気づけられるのでは、とも思ったりするが。気象庁は今日も東北から西日本にかけて強い積乱雲が発達し、局地的な激しい雷雨になっていることを報じている。読売新聞によれば気象研究所などがこの積乱雲が生まれる現場を突き止めることに成功したようだ。風に乗って運ばれる昆虫やクモが滞留している場所を気象レーダーで追跡し、そこで積乱雲が発生していることを突き止めた。昆虫の体内の水分が、雨滴と同じようにレーダーの電波を反射するのだという。風が集まった場所で上昇気流ができると積乱雲が発生するが、その風の集まった場所には1mm程度の昆虫たちが風で運ばれて来ている。これをレーダーで捕らえるわけだ。自然現象の影響は多くの生き物に影響を与えるわけで、生き物たちはそれに様々の反応をする。その反応のパターンを上手く活用すればこうして自然現象の発生を知ることに繋げられる。一見、非科学的に見えるが、生態学的には非常に合理的であることが分かる。これまで科学は自然のこうした利用を無視して来たように思う。地震の予知のようにいくら高額の機器を設置してもこれまで地震の科学的な予知は不可能なままだ。しかし、地震の前にネズミが集団移動したという話や井戸が涸れたり、沿岸で魚が大量に獲れたりという話にはそれなりの根拠がある可能性も考えられるのではないか。むしろそうした生物の行動や地下水の動きなどにもっと科学的な分析の目を向ける必要があるのではないだろうか。ネズミや猿を使った行動分析などはこれまでも行われて来ている。その手法を応用して、地震や津波の際の生物の行動に注目することは可能だと思う。地震と津波とともに共存して行かなければならない日本だからこそできる分析だと思うのだが。
庭で咲く藤の花

大地の下に眠る事実

2012-05-27 19:18:45 | 文化
今日も昨日に続いて良く晴れてくれた。外で身体を動かすと汗ばむ。日陰に入るといい風が吹いて気持ちがいい。庭にはまたウグイスやメジロがやって来て、可愛い声でさえずっていた。これだけいい天気が続くと家の中にいるのはもったいないが、逆に休日のいい天気をのんびりと家で過ごすことが出来た。東北は北海道ほど冬は寒くなく、関東以南ほど夏は暑くなく、この気候が植物の生育を助けて、これだけ豊かな環境をもたらしているのだろう。豊富な植物が育てば、山では動物たちも餌に困らず、動物もその豊かさを享受できる。河川もきれいな水と豊かな水中生物の存在で、淡水魚も豊富になり、海はリアス式の海岸と寒流と暖流の交差でとても豊かな魚介類の棲息を可能にしてくれている。こうした自然の豊かな環境は古代から続いており、その時代にも人々に豊かな食料を与えてくれていた。東北には豊かな生活があったはずだ。しかし、正史と言われる歴史書では蝦夷の地として野蛮な生活をする人々しか住んでいないかのように描かれている。しかし、その地には正史とは異なる伝承がたくさん残されていた。歴史書である古事記ですら稗田阿礼という「語り部」による口承を元に作成されている。青森県五所川原市の和田家に伝わる、いわゆる和田家文書も江戸時代に日本の各地に残されていた伝承をそのまま記述したものであり、中には矛盾する内容もある。しかし、その矛盾を矛盾としたまま伝承された内容を記述し、その判断を後世に委ねている。そこで書かれている東北の歴史は正史は無論、現代の歴史書にもまったく触れられていない内容が記述されている。太古の時代から人々が住み着いていて、紀元前7世紀に荒覇吐王国が生まれ、その王国の流れは11世紀の安倍氏の滅亡まで脈々と続き、さらにその血脈は奥州藤原氏にまで受け継がれている。和田家文書では荒覇吐王国を建国した安日彦王は近畿の邪馬台国の王であったが、九州から攻め寄せた「佐怒」により、追われて、津軽の地に落ち延びた。筑紫には邪馬壹国(やまひとこく)があり、女王卑弥呼の使者により製鉄技法も荒覇吐王国に伝えられている。荒覇吐王国は国王を中心に東西南北に分王が置かれ、一時、釜石にも東の分王が置かれたとある。ただ奥州のタタラ跡として「釜石貞任山」の名前があり、当時釜石の地名は広く現在の遠野をも含んでいたようだ。現在の二戸市爾薩体には王都が置かれたこともあった。今回の震災以後、太平洋側各地で過去の津波による堆積物が次々に調査され、これまで知られていなかった過去の大津波の事実が明らかになって来た。その調査の契機は多くの犠牲を払った昨年の震災であった。大地の下には我々がまだ知らないでいる事実がたくさん残されている。二戸市ではたくさんの考古学的遺物が発掘されているが、それらの遺物の解釈もあくまで東北は未開の地であると言う現在の歴史学の上に立って解釈されているため、遺物そのものが正当な扱いをされていない。まして、発掘調査そのものが東北では十分になされていない。北九州や近畿のように都市化された地域は工事により偶然発見される遺跡が多いが、東北は都市開発自体が限られており、まだまだ遺跡の発掘には時間がかかるのだろう。しかし、いずれ和田家文書に書かれているような歴史的事実が明らかになって行くだろうと思っている。
モミジの花が咲き始めた

釜石の現状

2012-05-26 19:16:51 | 文化
今日は晴れ晴れとした、清々しい日になった。夕方、庭の木にウグイスがやって来て、珍しく長い時間きれいな声を聞かせてくれた。近くで鳴くと意外に声が大きい。千葉県での研修を終えて、疲れ切って娘は戻って来た。とてもいい研修会だったようだが、そうそうたるメンバーの中で最も若輩であったので内心では結構緊張していたようだ。懇親会の席ですら場慣れしていないので手際が良くなかったことを気にしていた。と言っても元厚生労働省事務次官を相手に自分の考えだけはしっかり伝えておいたようだ。娘も息子も小さい頃から大人を相手に話すことには慣れていた。その点だけは他の子供とは違っていたように思う。今日は天気が良く、風もあって暑過ぎず、寒過ぎずのちょうどいい天気で、息子の方は庭の植木の手入れをやっている。やるとなると徹底するところが長所でもあり、短所でもある。震災以来釜石市内にはたくさんの県外車が走っている。警視庁のパトカーも相変わらず見かけることがある。最近はしかし少し前と異なり、工事関係者の県外車が多い。市内各所で被災した建物の取り壊しが続いており、道路や新規建物の工事なども多くなっている。工事関係者の利用で飲食店も震災前に比べて客が多い状態が続いている。被災した沿岸部全体が同じような工事を行っているので、とても県内だけの業者では賄い切れないのだろう。釜石では仮設住宅に住む人たちがその後本格的に住むことが出来る復興住宅の建設が決った。来月半ばから平田地区で126戸分の復興住宅の建設が始まり、来年夏に完成する。野田地区にも建設が予定されており、岩手県全体で2016年までに5000戸が建設される。しかし、釜石の人口自体は毎年確実に減って来ており、4月末で37,617人になっている。2年前と比べても2000人ほど減っている。震災後は少し減少が加速したはずだ。沿岸部の例に漏れず、釜石も漁業が盛んなところだが、震災を契機に漁業から離れる若い世代も増えた。復興を名目に国は沿岸部を縦走する自動車道や釜石と内陸を結ぶ横断自動車道の建設を早めているが、これが名目とは裏腹にむしろ若者の流出に繋がって行く。これまで日本では地方の高速道路や新幹線が整備されればされるほど逆に地方から都市部へ若者を流出させて来た。つまり、道路や鉄道は都会への地方からの労働力の供給に貢献して来たのだ。その結果地方はますます衰退傾向を早め、高齢化も加速して来た。釜石の高齢化率は顕著だ。昨年10 月末現在で33.5%になり、これも毎年増加している。全国平均が25%ほどで、日本全体としてもすでに2005年には世界一の高齢化国となっている。2070年には日本全体としても40%を超える予想だ。 これまでの日本は製造業が経済の牽引役となって、地方はその労働力を供給し、見返りに公共事業や補助金を受けて成り立って来た。しかし、1994年にはすでに製造業の就業者数はサービス業に抜かれ、地方に補助金で誘致された製造業も撤退、縮小されて来た。今、釜石は「復興」を掲げるが、真の復興については何も考えられていない。若年者が減少し、ますます高齢化が進む釜石がどうやって生き残って行くのか。食料の供給地でもあった地方は、その食料の供給地の役割すら失って行く可能性がある。TPPの成立はおくとしても、いずれアジア諸国からの魚介類の輸入は増えて行くだろう。沿岸部の漁業も間違いなく収縮することになると思われる。地方になればなるほど車が生活必需品になり、自動車を使い続ける。ところが自動車を使えばガソリン税や自動車重量税を払い、それが道路特定財源となっているため、道路だけは延々と造り続けられる。国も釜石も経済の衰退を前提にしたシステムづくりの発想に転換する必要があるだろう。その中で如何に釜石が自立出来るのか、自立の道を模索する必要があると思う。
庭で咲く大葉大山蓮華 天女花と言われる

3.11を超える超巨大地震と津波

2012-05-25 19:18:30 | 文化
今日はまた一日曇り空で、夕方には雨も降り出した。日は射さないが緑は日増しに濃くなり、ウグイスやシジュウカラたちが元気にさえずる。緑が深くなった木々では昆虫やその幼虫も活動を始め、それらを狙って野鳥たちも活発に飛び交っている。平地ではたくさんの花々が咲き誇って、1年のうちでも今が最も生き生きとした感じが強い時期なのだろう。庭の西日しか射さない角にある花たちもしっかりその西日の射して来る方向を向いてい咲いている。そんな姿を目にすると生きている花たちの証しを見る思いがする。46億年の地球の歴史の中で人類の祖であるホモ・エレクトスが猿人から分かれたのは高々180万年前である。日本列島が大陸から分かれ、氷河期を経て3万年前から大地震や海底火山の噴火などの地殻変動や、気温の上昇による氷河融解が始まり、現在の姿に落ち着いたのはわずか1万年前である。和田家文書『總輯東日流六郡誌』によれば5万年前に氷河の寒気を逃れて南下する動物たちを追って氷上を渡って大陸から日本列島へやって来たのがモンゴロイドである阿蘇部族だ(津保化族は1万年遅れた4万年前に米大陸から大筏に乗って列島に漂着した)。列島に広く移動していた。日本列島が大陸から分離する地殻変動は巨大な地震や噴火を伴い、以来、列島は成り立ちの特殊環境により、地震と噴火、津波とは無縁ではいられない地勢となった。これまでに明らかになっている最大の津波は沖縄県で1771年に起きた八重山地震による最大遡上高85.4mの明和の大津波だとされている。ただこの津波には異論もあり、千葉工業大惑星探査研究センター後藤和久上席研究員らは30mだとする。しかし、石垣島大浜崎原公園に残されているこの津波で海底から打ち上げられた津波大石は推定重量が700トンもあり、東日本大震災で襲った最大遡上高38mの津波でさえ、これだけの巨石を打ち上げるほどではなかった。打ち上げられたおびただしい津波石は他にも宮良湾内やリーフ、宮良川河口にも残されている。また昨年4月高知大学の岡村眞教授らは高知県土佐市の現在の海岸から約400m内陸にある蟹ヶ池で2000年前の地層から津波による50cmの厚さの砂層堆積物を見つけている。東日本大震災以前では最大級とされる1707年の宝永大地震では蟹ヶ池近くの寺を襲った津波は高さ25mだった。そしてその時の津波堆積物はわずか15cmの厚さでしかない。2000年前には単純に当てはめても75mを超える津波があったことになる。東海大学海洋研究所・地震予知研究センター長である長尾年恭教授は3.11の地震によって東日本が東方へ約5m動き、地殻変動が起きていることを重視している。「地球の表面は繋がっているにもかかわらず、一部分だけが移動すれば、他の部分に無理な力がかかってしまう。したがって、3.11のときに破壊されなかった領域にはより大きな力が加わってしまい、岩盤が不安定な状況にある」。また高知県以外でも静岡平野や浜名湖など様々な場所で、1800~2000年前に超巨大地震が起きていたことが明らかになったことで、この時と同じく、中部地方から関西、四国、九州の沖合、沖縄すべてを飲み込む3.11以上に大きな地震が起きる可能性を指摘されている。3.11と同様、太平洋の沖合でプレート境界が一度に壊れることで、日本列島の太平洋側にはどこでも15~20mの津波が押し寄せることになるだろう、される。発生時期は30~40年、長くても50年以内とされる。同教授は「地球が生きている以上、巨大地震を避けることはできない。」、「これから懸念しなければならないのは、房総半島沖(東日本)、首都直下型、西日本の3つの巨大地震である。」と言われる。火山噴火予知連絡会の会長である東京大学藤井敏嗣名誉教授は「世界でM9クラスの地震が起きると近くで火山が噴火する」「20世紀以降の例だと例外がない」とも言われる。
庭の黒百合 北海道道東の野付半島に自生していたのを思い出す

カメラにも便利さの代償がある

2012-05-24 19:14:50 | 文化
朝は曇っていたが午前中に青空が広がり、気温も上がって来た。ライラックの咲く今頃は北海道のリラ冷えに似て、釜石でも曇天が多く、気温もいつもより低くなる。甲子川沿いの通勤路を走っていると浜茄子も咲いていた。釜石へ来るまで、浜茄子は鮭の遡上や毛ガニ同様北海道だけのものだと思っていた。天気がよくなったので、昼休みにまた職場の裏山の旧道を車で走った。開けた窓から気持ちのいい風が入って来る。ウグイスの声も聞こえて来る。日射しに透かされた新緑がとてもきれいだ。紫の桐の花や山藤が緑の背景の中でよく映えている。2~3人の方がそれぞれ歩かれていた。健康のために晴れていると今は特に気持ちがいいのでなお歩かれているのだろう。朴の木の花も次々に開いていた。日当りのいいところに咲いた花はもう終わりかけていた。朴の木の花をよく見ようとして、少し空いたスペースに車を止めて、日射しの中を少し歩くだけで汗ばんで来るほどだ。いつも持ち歩く望遠レンズを付けたカメラできれいな朴の木の花を写真に収める。デジタル一眼レフにはフィルムの機能にあたるCCDやCMOSと言われる撮像素子が使われており、そのサイズ規格でAPS-Cサイズと言われるものが大半のカメラで使用されている。このサイズ規格だと50mmレンズは実質その1.5倍ほどの75mmのレンズで撮影したように写る。望遠を効かせたい時には有利だが、逆に広い範囲を撮るために一般的に使われる24mmのレンズを使うと36mmのレンズと同等に写る。できるだけ広く撮りたい時には不利になる。APS-Cサイズに対してかっての35mmフィルムカメラと同じ大きさになるフルサイズ規格がある。これだと24mmのレンズはそのまま24mmで写すことが出来る。つまり望遠を効かせたい時にはAPS-Cサイズ規格のカメラを、広い範囲の風景を撮りたい時にはフルサイズ規格のカメラを使えばそれぞれの目的を叶えてくれることになる。さらに、オリンパスやパナソニックからはフォーサーズ規格のカメラが出ており、この規格だと1.5倍ではなく、2倍になり、50mmのレンズは100mmのレンズとしての写真になる。写真を撮っているとだんだんこの使い分けがしたくなり、結局規格の異なるカメラを手元に用意することになる。メインにはいつもキャノンのカメラを使っているが、キャノンにもAPS-Cサイズ規格とフルサイズ規格のカメラがある。フィルム時代にはニコンやペンタックス、コニカなど優秀なレンズを出したメーカーが揃っていたが、デジタル化の波でメーカーも統合整理されてしまった。2大カメラメーカーとしてニコンとキャノンが残っているが、ニコンもデジタル化に際して、キャノンに遅れをとった。ただレンズはニコンにもいいレンズがたくさんあり、デジタルの進化は早いので、現在は基本的に両社の差はないと考えていい。デジタルの進化は画像処理を小さなコンピュータでやっており、コンピュータで写真を合成しているとも言える。このコンピュータを一般には画像処理エンジンなどとも言われている。高価なカメラは画像処理エンジンが進化している。そして進化のスピードが速いので、A4サイズくらいの写真にするには800万画素もあればよく、逆にちょっと古いカメラでも十分使用に耐えられる時代になって来ている。趣味でそうした少しだけ古くなったデジタルカメラを手に入れて遊んでいる人も増えて来ている。ただし、デジタルカメラはかっての機械式のフィルムカメラと異なり、コンピュータ部分が故障すると使い物にならない。完全に使い捨てになる。メーカーも比較的新しいものしかコンピュータ部品の在庫を置いていない。つまり修理不能だ。
甲子川沿いに咲く浜茄子の花

裏山の桐の花

いつ、どこで起きてもおかしくない地震

2012-05-23 19:19:45 | 文化
朝から小雨模様で、午後には曇天に変わりやがて青空が広がって日も射して来た。やや肌寒い。午前中は海岸部に霧が立ちこめていた。明日から娘は千葉県で行われる元厚生労働省事務次官が主催する研修会にオブザーバーとして参加する。東京大学の教授も何名かいる。職場の同僚の方の計らいだ。普通ならばとてもこうした研修会になど参加出来ないのだが。息子は大阪から戻って来ても、気仙沼でのボランティア活動は6月からの再開なので、庭木の手入れにいそしんでいる。ホームセンターで土を買い込み、花壇も手作りする予定のようだ。現地時間で20日早朝、イタリア北部でM6.0の内陸地震が起き、7名の死者と50人以上の負傷者が出た。雨の中を1万1,000人が避難した。震源の深さは5.1Kmで1時間後と11時間後にそれぞれM5.1、M5.8の余震も起きている。歴史的建造物もかなり損壊した。内陸の浅い震源での地震は揺れも大きい。同地域の特産品で世界へ輸出されているチーズ生産が大きな影響を受けているようだ。イタリアはユーラシアプレートとアフリカプレートの境界の北側に位置しており、有史以来の地震地帯でもある。地震だけでなく、プレートの動きのために火山活動も盛んな地域だ。地形も日本のように長くなっている。今日の共同通信によれば、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の研究チームは東日本大震災とその余震により関東地方のプレート(岩板)が刺激され、M8級の地震が予想よりも早く首都圏で起きる可能性があるとの分析結果を発表している。869年の貞観地震以降、東北の太平洋沖を震源としたM8級の地震は5例あるが、うち4例で30年以内に関東でM7級以上の地震が後に続いて起きている。相模湾から房総沖に伸びた相模トラフ周辺を震源として起きるのがこれまでの関東地震であった。1703年の元禄地震と1923年の関東大震災はいずれも相模トラフ近辺を震源としていた上、30年以内にそれらより早く三陸沖から房総沖で巨大地震が起きている。同研究チームはM7級の関東直下型地震だけでなく、こうした相模トラフ周辺を震源とする地震にも警戒する必要が早まっているとしている。東日本大震災から1年以上過ぎて、娘や息子が大阪に行ってみると、もう震災を口にする人はほとんどおらず、原発事故による放射線被害を心配する人は皆無だった。震災の被害を大きく受けた釜石ですら、実際に家を津波で流されたり、身内を失った人たちとまったく被害のなかった人たちの間に大きな心の隔たりがあり続けている。まして、直接的な被害が報じられていない大阪など、東北から距離があるほど他人事として時間が経過すれば忘れて行くのも当然ではあるだろう。しかし、日本列島に住む限りは、常に、どこで地震や津波が起きてもおかしくないことを考慮しておく必要がある。活火山や原子力発電所が近ければなおのこと。若狭湾一帯にある原発銀座を警戒して京都府や滋賀県は福井県の大飯原発の再稼働にすら慎重な姿勢をとっている。滋賀県は緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測を文部科学省に要望していたが、2ヶ月経った現在も同省からは開示がない。滋賀県は今日再度同省に開示を要請している。大阪なども非常に影響を受けやすい地域であるはずなのだが、首長だけは慎重姿勢をとっていても、住民にはあまり警戒感はないようだ。まして南海トラフの連動地震では大阪にも津波が押し寄せ、無警戒だけに大きな被害が予想されるのだが。
可愛い色合いの五月

牡丹も今が見頃だ

上品な色合いの石南花

日本列島周辺だけでなく、太陽まで活動期に

2012-05-22 19:21:47 | 文化
午前中は比較的青空も広がっていたが、午後からは雲が多くなった。今、釜石は4月下旬から引き続き、花で満たされている。街路では花水木が咲き、ツツジ、石南花、牡丹、芍薬、スズラン、紫蘭、ライラック、などが個人の家の庭先で咲いている。山藤や桐の花が裏山では満開になっている。新緑を背景にそれらがとても気持ちよく目に入って来る。花の近くを通ると個々の花で違った香りが漂って来る。ここしばらくは釜石は1年でも最も花の多く咲く時期になる。今日も昼休みに裏山の旧道を車で走って朴の木の花の開き具合を見た。4分咲きくらいにはなっている。釜石へ来た頃に初めて職場の方に教えてもらった花で、それ以来毎年欠かさずこの花を見ている。白い蓮の花といった風情で、独特の葉の形もあってとても好きになった花だ。子供の頃に育った家に泰山木の大きな木があり、よくこの木に上って遊んだ。その泰山木も花がよく似ていて、香りも独特の香りがした。同じような花を咲かせる大山蓮華も今、家の庭で咲き始めている。みんな花の色は白で、形も清楚な白に似合った可愛い形をしている。昨日千葉市で開かれた日本地球惑星科学連合大会で東京大学総合防災情報研究センターの古村孝志教授らは、今後南海トラフで起きる可能性のあるM8.7の東海・東南海・南海の連動地震を想定した場合、高層ビルを揺らす長周期地震動による揺れの強さは、東日本大震災と比べて、東京都心で2~3倍、大阪府の湾岸部では5倍になる、との研究結果を発表している。南海トラフ沿いの「付加体」と呼ばれる厚さ数Kmの軟弱な地層や平野の厚い堆積層で長周期の地震波が増幅されるためだ。東日本大震災では震源域には「付加体」がなく、長周期の揺れが比較的弱かったのだそうだ。南海トラフでの連動地震が起きれば、東京や大阪の高層ビルはこれまで考えられていた以上の揺れが生じる可能性があり、耐震性を再検討する必要が出て来るのではないかと思われる。高さ634mの世界一の自立式電波塔、東京スカイツリーが今日開業したが、これも十分な設計が施されているのか不安だ。スカイツリーが立つ墨田区は決して固い地盤でもない。3月30日に内閣府の有識者検討会が発表した南海トラフの想定地震はしかもM9.1であったのだ。20日のNHKスペシャル宇宙の渚、第2集「天空の女神 オーロラ」でも少し触れたようだが、2012年から2013年にかけてオーロラ活動が活発になる。これは先日も書いたフレアとも関連する。太陽活動がとても活発な活動をする時期になっている。特に今年2012年が最も太陽活動が極大化すると言われている。太陽フレアが放出するエネルギーはオーロラのような美しいものを発生させるだけであればいいが、地球の磁場を混乱させ、強力な電流によって高圧変圧器が故障し、電力網が停止する可能性ももたらす。1859年には記録の残る中では最大の磁気嵐が地球を襲った。電信局の交換台で過電流が生じ、記録が残されている限りで最も明るいオーロラが発生し、地球の広範囲でオーロラが観測された。太陽表面で起きる磁気爆発により発生したエネルギーが原因だが、磁気爆発はわずか1、2時間で、1000万個の原子爆弾に相当するほどのエネルギーを放出するという。この時よりもずっと規模の小さい磁気嵐であった1989年でさえ、カナダでは9時間にわたって停電し、600万人が影響を受け、復興に数ヵ月を要した。先日のスーパーフレアが生じれば、地球上への影響は計り知れないものになる可能性がある。当然放射線も大量に到達する。
裏山の朴の木の花

裏山に咲く山藤