連日晴れた日が続いてくれたが今日はややいつもより雲が多い。職場の方にお聞きするとやはり釜石ではどこも今は鹿がたくさん出て来ているようだ。中には天然記念物の日本カモシカらしい動物が車とぶつかって死んでしまったという話もある。冬を控えて食べ物を今のうちに確保しようと民家に近いところへも出没するようになったのだろう。福島第一原発事故後原発から20Km範囲では飼い主のいなくなった動物たちが放置されたままになっていた。5月12日には政府は警戒区域内の家畜について安楽死処分をするよう指示を出した。37歳の民主党の新人、衆議院議員高邑勉氏は郷里の山口県上関町に中国電力が建設を予定している上関原発の参考にと南相馬市を訪れたことがきっかけで警戒区域内の家畜の問題に直面させられた。地域の酪農家や自治体は安楽死に強く反対しており、被爆した家畜を食用にはできないため、むしろ家畜を保護して被爆した動物たちの研究のために役立てようと政府にかけあった。農林水産省は反対の意向が強かったようだが結局は安楽死しないで保護することができることになった。全国の研究者たちの協力も得て、浪江町に希望の牧場プロジェクトが立ち上げられた。地元の牧場主たちの協力も得られたが、何ぶん多くの家畜の飼料を確保するにはその維持費が十分ではなく苦労されているようだ。高邑議員は福島を家畜と放射線研究の拠点に、と訴えている。9日その希望の牧場、エム牧場の場長をされている吉沢正己氏が記者会見をされ、『絶望の街』に希望の光を灯したい」と語られた。「"死の街"と言われたが、その通りです」「私は絶望の街・浪江町と呼んでいる」「6、7ヵ月、我々は戦いながら言うべきところは言い、行動し、絶望的な状況の中で希望という光を自らの力で灯すため取り組んできた。これを一生の残り人生の課題として取り組んでいきたい。『決死救命・団結』、みんなの力で死ぬ気で頑張る。そういう中に希望の光というものは灯ると思うんです」。福島第1原発から14キロ地点まで毎日被曝しながら通われている。記者会見に同席した高邑議員はチェルノブイリではプルシアンブルーを牛に投与して牛からセシウムを除去することに成功し、実際に出荷もされたことや薬剤の開発にも寄与出来ることなどを語られた。エム牧場は常時放射線量を測定していて、ほぼ毎時2.9μSvの線量になっている。平常時の25倍の線量だ。福島県内の除染は政府の決めた規準では十分な除染ではないが、実際に除染にかかわっておられる山内知也神戸大教授(放射線工学)は福島市内には高濃度のセシウムに汚染された地域があることを明らかにした上で、除染について「水を掛けたり、土を取るだけでは線量は下がらない」と警告している。そして福島市が出した除染目標を「何もしない」のと同じだと述べている。森林や山地については「山林、葉っぱ、針葉樹につくと言われている。山林の除染は荒唐無稽なこと。できなくはないが、具体的にどうするか、イメージがわかない」と付け加えている。東京大学アイソトープ総合センター長児玉龍彦教授も南相馬市での除染にかかわっておられるが、子供たちの幼稚園や学校の緊急除染と本格的な住める環境とする恒久的除染とは分けて取り組む必要があることを訴えておられる。本格的な恒久的除染にはしかし相当の財源を要する。10月8日には静岡県伊豆市の乾シイタケからも国の暫定基準を超える599ベクレル/Kgの放射性物質が検出されている。組織的な検査はまったく行われていないため散発的な検査が各地で行われているだけであり、ほとんどの食品が未検査のまま子供や妊婦の口に入っているのが現状だ。全国さんま棒受網漁業協同組合は7日操業自粛としていた福島第一原発から半径100キロの海域を操業禁止にする、と決めた。今月中旬にはさんまの群れが南下しこの海域に入る。さらに、同原発から100キロ以上離れている福島東方沖や、200キロ離れた銚子沖でも今月中旬から11月上旬にかけ、捕獲されたさんまの放射性物質を検査し結果が出るまで操業を自粛することも決めた。一方で北海道サンマ産地流通協議会は同原発から100キロの宮城県金華山より南の海域でとれたサンマの水揚げを拒否するよう道東部の市場に要望している。毎年釜石で水揚げされたさんまは新鮮で、釜石ではじめてほんもののさんまの味を知った。原発事故は生産者と消費者の両方に被害を与えている。二度とこうした事故が起きないと言う保証はどこにもないばかりか、今の原発の規制体制や電力業界の姿勢ではむしろ再度同じような事故が起こる懸念の方が強い。
庭の紫式部 白実の白式部というのもある