釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

文化を持っていたネアンデルタール人

2016-06-04 19:14:29 | 科学
現生人類は60万年前にアフリカで原人の一種として誕生したハイデルベルク人を祖先とする。50万年前にそのハイデルベルク人から2種が分岐し、1種は現生人類となり、もう1種は35万年前にネアンデルタール人とデニソワ人に分岐した。現生人類とこの他の2種は主にヨーロッパで同時期を共存していた。ネアンデルタール人とは現生人類は交雑も行っており、アフリカを除く他のすべての民族に平均で2%のネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいる。むろん、日本人もである。フランスの南西部には壁画洞窟や旧石器時代の遺跡がたくさん見つかっているが、ブルニケル洞窟もそんな一つである。この洞窟は1万年以上前に入口が塞がってしまっていた。1990年に洞窟探検家が入口を掘って初めて中に入った。入口付近にはホラアナグマなどの絶滅した大型動物の痕跡が認められている。しかし、本格的な考古学者の調査は2013年まで行われていなかった。この調査で、入り口から336m奥の広い空間にストーンサークルが見つかった。鉱物を多く含む水が洞窟の天井から床に落下していた長い年月の間にタケノコの形のように固まったものが出来る。これを石筍と言うがこの洞窟ではその石筍が400個近く並べられていた。同じ長さの石筍が一部は直径約6.7mの大きな円形に並べられ、他の石筍はやや小さい半円形に並べられ、残りは山積みされていた。一部の石筍には赤と黒に変色したひびが入り、上で火が焚かれたことを示していた。小さい円形構造の近くでは、クマや大型草食動物の炭化した骨片も見つかった。この遺跡は当初現生人類によるものだと考えられた。現生人類は4万年前にヨーロッパへ到達していた。ところが石筍や骨片の表面の鉱物のウラン系列年代測定の結果、17万6000年前のものであった。現生人類はまだヨーロッパには到達してない時期だ。となると、このストーンサークルはネアンデルタール人のものである可能性が高くなる。世界的に知られるストーンサークルは日本のものを含めてせいぜい5000~6000年前に作られたものである。このフランスのストーンサークルは桁違いに古いものとなる。しかも、年代的にはネアンデルタール人のものと言うことになり、これまで考えられた以上にネアンデルタール人が組織的な社会生活や思考力、技術力を持っていたことになる。考古学的な発掘が進むほど、太古の時代は意外にも文化が進んでいたことが明らかになって来ている。
銭葵(ぜにあおい)

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