釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

ソ連の崩壊

2018-06-02 19:16:45 | 社会
第二次大戦後、世界には米ソ二大国が君臨し、冷戦時代を迎えたが、両国の経済力は1950年代までが実質的には最高であった。ソ連ではアムステルダム大学のマイケル・エルマン教授が言ったように「上からの圧力」が、また米国では「自由競争」が生産力の原動力であった。しかし、1960年代に入ると、ソ連ではスターリンの死により「上からの圧力」が減少し、米国には日本やドイツの発展が競争に加わり、米ソともに生産力が相対的に低下して行く。1980年代に米国は日本とドイツに工業力では太刀打ち出来なくなり、金融経済に活路を見出す。ソ連は巨大組織の官僚化が進み、資源配分の非効率さと石油産出への過剰依存により、財政赤字と通貨の増刷に至る。1991年12月25日、ついにソ連は崩壊した。しかし、この時のソ連の財政赤字はGDPの3分の1である。崩壊直前の91年9月末に中央銀行(ゴスバンク)が増発した通貨ルーブルは6722億ルーブルで、1990年のGDPの7割であった。この時のソ連での工業品卸売価格は前年同月比で164%上昇していた。ソ連が崩壊した時、日本も含めた西側のメディアは「共産主義の崩壊」を当然のごとく報じた。しかし、今や、その西側諸国も「共産主義」の中国も揃って財政赤字を拡大している。ソ連の崩壊には主に3つの要因があるとされる。政治の腐敗と対立、生産力の低下と財政赤字、民族問題である。民族問題を除けば、現在の日本と米国には前二者は十分揃っている。工業生産に敗れて、金融経済に逃れた米国では、生産力の低下に代わって、企業と個人の膨大な債務がある。隣国の中国は生産力低下と企業と個人の膨大な債務を抱える。もっとも、生産力はまだ日米欧より若干優ってはいるが。日本や米国、欧州には政治の腐敗と対立もすでに見られる。中国は長期独裁政権を築いた。日本は経済規模では世界第三位を維持しているが、上位二国とは差があり、人口にも大きな差がある。しかし、日本が経済破綻した場合は直接には米国の国債を保有するため、米国への影響が大きい。米国の経済破綻は世界経済をどん底に落とし込んでしまう。銃社会である米国は、失業者が溢れ、医療・年金などの社会保障が絶たれ、社会不安が高まるため、凄絶な暴動に発展する可能性がある。超富裕層には守るべきものがあるため、また経済的な余裕もあるため、こうした社会情勢を読み、すでに国外に資産と住居を移している。マクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは日本の京都にも別荘を持つが、軽井沢に巨大な別荘を建設している。ニュージーランドに移住した者もいる。個人でも企業でも国でも、収入に見合わない負債を抱えれば、必ずいずれの時点かで破綻する。経済の世界では「フリーランチはないThere's no such thing as a free lunch.」ことは常識である。日本の巨額の財政赤字はこれまで貯蓄率の高かった国民の預貯金で支えられて来たが、バブル崩壊後、その貯蓄率が低下し、国民の預金に変わって、日本銀行が支えざるを得なくなった。しかし、中央銀行がいつまでも支え続けられる訳ではない。政府の借金である国債を買い続けることは、それだけの通貨を発行していることでもある。ソ連やそれを引き継いだ直後のロシアだけでなく、今のイタリアやギリシャ、ベネズエラなどを笑えないところまで来てしまった。日本も含めた主要国全てが5年以内に激動の時を迎えるだろう。きっかけは隠れた小さな出来事かも知れない。
杜若(かきつばた)

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