釜石の日々

初夏の晴れた日に

昨日、近畿から関東甲信まで一斉に梅雨入りとなったようだが、岩手は晴天の気温25度以上の夏日となっており、内陸の盛岡や北上は30度を超える。四国で生まれながら、北海道に少し長くいたせいか、夏の暑さに耐えられなくなった。愛知県から岩手県に引っ越しした当初は、夏の涼しさに喜んだが、それも身体が次第に慣れて、今では岩手の夏も暑く感じるようになった。たまに大阪や東京の方から、釜石も雪が大変でしょう、と言われる。岩手に引っ越す前には自分でもそう思っていた。しかし、釜石は同じ東北でも別天地で、雪は積もらない。動植物の豊富さを考えると、東北は人の身体にも年間の平均気温がちょうどいいのかも知れない。今朝も早くから近所でウグイスが鳴き、職場の窓からも日中にウグイスの声が入って来た。近くの山道に入ると、必ずホトトギスの声が聴こえて来る。日射しの強くなったところを避けて、日影に入ると、今はそれでもまだ涼しさを感じさせてくれる。社会的存在の人間である以上、年間で何度かは心身の疲れを感じることがある。そんな時に、近くの川の流れの音やカジカガエルの声、庭の山野草の花、ウグイスやホトトギスの声に癒される。若かりし頃の音楽も時には癒しになるが、やはり自然が一番だ。その自然の素晴らしさを教えてくれたのは北海道ではなく、この東北だ。北海道には広大な自然があるが、豊かさと言う点では、東北がはるかに勝る。まして釜石はすぐそばに豊かな海も山もある。それでいて雪が積もらないとなると、これほど素晴らしい東北はないだろう。残念ながら、そのことを地元の人が気付いていない。釜石は人口がわずか3万5000人ほどの小さな街で、高齢化率が高く、今後もさらに高まって行くだろう。かっての新日鉄の城下町で、一頃は人口10万人近くになっていて、県下一の近代的な場所であったそうだ。今ではその趣も失われている。震災後の復興事業が続いているために全国からたくさんの人がやって来ているが、それも数年内のことで、その人たちがいなくなれば、疲弊しきった街が残るだけだろう。釜石を見ていると、まさに日本と言う国の縮図に思えて来る。これまでの産業に執着し、世の中の大きな変化に目を向けない。日本にも釜石にもいいものはまだまだある。それを生かさないで、むしろなおざりにしている。以前、震災直後に高校生が市長に無くなったカラオケを誘致して欲しいと要望した。その後、進出したイオンモールの中にカラオケが出来た。先日、職場の近所を歩いていると、市長杯争奪カラオケ大会のポスターが貼られていた。個人の楽しみとしてカラオケを否定しないが、行政がそれに関わることに何かが失せてしまう。今は日本の歴史で言えば、ちょうど幕末の頃に似ているのかも知れない。江戸幕府は財政難に窮し、統治力を失った。動乱を経て維新となり、良くも悪くもともかく日本が再生された。
裏山のジギタリスの花
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