釜石の日々

ボブ・ディランBob Dylan

ボブ・ディランBob Dylanがノーベル賞を受けた。1960年代に登場した彼は決して美しいとは言えない独特な声で、自分の思いを歌に託した。初期の代表曲である「風に吹かれてBlowin' in the Wind」は、ピーター・ポール&マリーPeter, Paul and Maryのカバーでむしろ世に知られるようになった。単純な反戦歌ではなく、人の生き方まで問うている。20代初めの彼にとっては自らの生き方を問いかけてもいたのかも知れない。時代はキューバ危機やキング牧師の公民権運動の最中であった。1970年代の日本のガロの歌にも彼の名が歌われている。同じ時期に登場したビートルズThe Beatlesとともに日本の若い歌手たちに多大の影響を与えた。1970年代後半に世界が保守化して行く中で、彼は洗礼を受け、クリスチャンとなる。その精神世界は歌にも影響したが、残念ながら彼のゴスペル調の歌はあまり歓迎されてはいない。75才になる現在もコンサート活動を続けており、心の若さは永遠のようだ。歌は本来詩であり、詩に音程やリズムが加えられたものだ。彼は弾き語りで、その詩を歌った。世界が保守化するとともに、若い世代も大きく変化した。特に日本は時とともに若者が孤立化して行っているように思える。他者との共有よりも一人での孤立化が進んで行ったように思う。現代の若者の歌には日常語が溢れ、中には若者にしか理解できない言葉もある。すっかり詩から脱落してしまっているように感じられる。それでもそんな歌が若い世代に受け入れられていることを考えれば、ある種の共有があるとも言えるのかも知れないが。和歌から始まる日本の詩の歴史は形式の中で歌い上げられて来た。ある枠組みの中でいかに自分を表現するかが、多くの秀作を生み出して来た。若者はいつの時代もそれまでの枠組みを壊して、自分たちを主張して来た。世の中が保守化すると、自ずから若者も保守化し、自分の中に閉じこもってしまう。枠を壊すと言うより、枠を意識しない、日常のまま、声にしているようだ。ボブ・ディランは当時のたくさんの若者に共感を与え、熱狂的に迎え入れられた。ビートルズにしても同様だ。彼らは形式も自分たちのものを築き上げた。したがって他の歌手への影響もそれだけ大であった。ボブ・ディランの受けた文学賞はメッセージ性や社会批判を重視すると言う。その意味では彼の存在自体がすでにメーセージであり、受賞がふさわしいものと言えるのではないだろうか。
八重咲き秋明菊
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