釜石の日々

「戦略なき迷走」

今日は久しぶりに最高気温が10度に達した。そんな気温の日中に歩くのは気持ちがいい。日射しはもう春の明るい日射しになっている。よく見ると庭ではもう一本のロウ梅の蕾が膨らんで来ていた。人の世界が大きく変わっても、自然の毎年の巡りは変わらない。川の流れや葉の落ちた木々が覆う周辺の山々もいつものこの時期と変わらない。もちろん、それはただ上部の見た目だけなのだろうが。気温が上がったおかげで、路面の雪や氷が溶けて、とても歩きやすくなった。北海道に住んでいた時には、凍った路面で、毎年のように人が転んで骨折していた。今冬は一時、釜石でもそんな路面が現れていた。気温が上がって、昨日まで庭一面に残っていた雪も、ほとんど日中に溶けてしまった。 日本ではバブル崩壊後、新自由主義が幅を利かせ、教育・研究なども国費が大幅に削られた。それは当然ながら科学・技術の劣化を招いた。世界に大きく遅れをとっていた江戸幕府が倒れると、新生の明治政府は、何よりも当時の先進国からの科学・技術の導入に力を入れた。新設の帝国大学などの教官に欧州の優秀な人材を、高額で招聘した。明治の日本が良くも悪くも、急速に世界の先進国の仲間入りをした所以である。戦後の日本の復興も同じく、教育・研究に官民こぞって力を入れた結果であった。科学・技術の衰退は、前政権で加速し、それが今なお続いている。科学を拒否し、科学を無視することが政治で横行し、科学の側もまた政治に忖度するようになり、科学自らが劣化を先導した。昨年からの新型コロナウイルス感染症が、日本の科学・技術の衰退を露わにしている。如何なる理由があろうと、疾病治療の原則は変わらない。早期発見・早期治療に限られる。感染症ならば、その間に早期隔離が含まれる。しかし、日本では政治に忖度した「専門家」が最初から早期発見を放棄した。放棄だけでなく、事もあろうに、早期発見そのものを否定までした。PCR検査の否定だ。その結果、素人でも分かる無症状・軽症感染者を放置する結果となった。感染者を早期に見つけ出し、出来るだけ早く隔離し、病状に応じて治療に当たる。感染者が増えれば、それに応じて治療が必要となる人も増える。そんなことは最初から誰が考えても分かることだ。従って、感染が拡大された時のための準備は当然なされなければならない。感染初期にはとてもその整備は難しいが、数ヶ月もあれば十分可能である。英国も中国も大規模にそれを達成した。1年も経つにもかかわらず日本では、今になっても医療は整備されず、医療逼迫や保健所逼迫を避けるためだとして、検査を一層減らしている。やることが全く逆である。医療についても、国立や自治体立の医療機関にはわずかしか入院させず、民間病院の非協力を訴える。欧米では多くの大学病院が多数の感染患者を引き受けているが、日本はここでも欧米とは異質である。第2類分類の感染者は、民間病院の施設では即座には受け入れられない。原則、陰圧設備が必要となる。しかも、スタッフにはそれなりの訓練も必要になる。民間病院にどれだけの感染症専門家がいると言うのか。昨日、厚生労働省が発表した抗体検査について書いたが、東京大学先端科学技術研究センター児玉龍彦名誉教授の友人である、慶應義塾大学金子勝名誉教授によれば、この抗体検査では、ウイルスの表面にある突起のタンパク質ではなく、内部のヌクレオカプシドと呼ばれるタンパク質、いわゆるNタンパク質に対する抗体、N抗体だけを見ていると言う。重要なのはむしろ突起、スパイクのタンパク質に対する抗体であるS抗体である。1月28日には、東京都医学総合研究所が東京大学と共同で、「東京都における新型コロナウイルス 大規模抗体疫学調査」を公表している。2020年9月1日-2020年12月31日に東京都内14病院から、厚生労働省調査の4倍以上の1万4096件の検体を収集し、「検査に用いるウイルス抗原は核蛋白(N)とウ イルス表面突起のスパイク蛋白(S)を用いた」。つまり、N抗体とS抗体を検出した。その結果、抗体陽性率は、9月1.15%、10月1.2%、11月1.82%、12月1.8%と推移し、12月の結果は厚生労働省の結果の2倍の抗体陽性率となっている。となれば、東京都の実際の累計感染者数は、25万1329人となり、公表されている東京都の累計感染者数の2倍以上となる。一見、科学的な資料のように見えて、実は、厚生労働省の検査結果は、専門家により政治に忖度して、歪められた「科学」が用いられると言う、実に世界の失笑を買うような内容であった。昨日の日本経済新聞は、「感染追跡対策 戦略なき迷走  接触アプリ4カ月不具合 デジタル活用でも稚拙さ」を載せている。厚生労働省の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」は、昨年9月から現在まで、使えない状態が放置され、昨年5月に導入された、ココアともつながる新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)も「約9カ月たって、なおフル稼働していない。」。東京都や大阪府は使いずらさから、早々とこのシシテムを見限り、「FAX送信」に戻った。「台湾やシンガポール、韓国などはアプリやデータの活用で先行する。ITに精通した責任者を置き、アプリなどを使うメリットを前面に打ち出してきた。」「技術、ルールの両面で日本の対応の遅れは明らかだ。」。子連れで中国留学された浦上早苗氏は著書『新型コロナVS中国14億人』で、「中国で名を上げたのは、最前線で指揮を執った医師と、医療・国民の生活をバックアップした企業だった」とし、IT企業が次々に接触アプリや遠隔医療、生活必需品のオンライン配送システムなどを展開し、瞬く間に全国広まって行ったことを書いている。民間開発のアプリが国民に共有された状態に、政府が後から乗っかると言う逆パターンである。今では、移動に際しても、それが証明として利用されるまでになっている。IT(情報技術)の日本の大幅な遅れは、コロナ禍で如実になっている。国家の発展は上から起きるのではなく、下からであることを、まさに示しているのが、今の日本と中国だろう。政府の役割はただ下が発展するための環境を準備することである。その環境を削ぎ取って来たのが日本の政府である。
新型コロナウイルス(Sへの抗体が重要)

蝋梅の蕾
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