釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

経済格差

2014-11-13 19:16:00 | 経済
今朝は10度あったが、午前中に13度になった後は気温が徐々に下がり、夕方には7度までに下がってしまった。風もあり体感的にも寒い。内陸では夕方3度まで下がったようだ。北からの寒気が下がって来たためのようで、明日からしばらくは低い気温が続くようだ。昼には雲がたくさん流れていたが、日射しも時々出ていたので、菅原神社へ行ってみた。神社前の紅葉の大樹は紅く染まってはいたが、風と雨で葉がかなり散ってしまった。少し離れた山の斜面には綺麗な紅葉が見られた。このあたりは茂みを手入れすればとてもいい紅葉の名所になるだろう。とてももったいない紅葉だ。 現在の臨時国会で労働者派遣法改正案が審議に上がったが、与党は早ければ来週中の衆議院解散を検討しており、本法案の成立を断念したようだ。厚生労働省によれば非正規労働者の比率は2003年の30.4%から昨年の2013年には36.7%まで広がった。これに伴い国税庁の調査では年収200万円以下の人の比率も2003年の20.2%から2013年の24.1%へ上昇している。格差が単に広がっているだけではなく、円安による物価上昇や消費税の増税により低所得層ほど実質的な負担率が高くなっている。こうした格差の拡大は日本に限られた話ではなく、先進国で一般的に見られるようになり、その格差の最も大きいのが米国である。経済協力開発機構(OECD)の1975年から2007年の間に世界の収入がOECD加盟18カ国の間でどのように分配されてきたかを示す「The World Top Incomes Database(世界のトップ収入データベース)」によれば、米国のトップ1%の人が税込所得の伸び全体の47%を占めている。しかもこれにはキャピタルゲイン(資産売却益)は含まれていない。トップ10%で見ると80%を占めている。残る20%を90%の人で分け合っている。1981年から2012年にかけて、税込所得全体に占めるトップ1%の富裕層の割合が2倍以上に拡大している。米国では1980年代にロナルド・レーガン大統領によるレーガノミクスReaganomicsと呼ばれた自由主義経済政策に始まる富裕層の保護が大きく寄与している。日本は戦後、世界でも経済的に平等な国と言われたが、実際には、先進国でも同じように格差は少なかった。第一次大戦と第二次大戦という戦争が各国とも統制経済を強いたために、むしろ格差は縮小した。米国ではノーベル賞受賞者のリベラル派経済学者であるポール・クルーグマンPaul Robin Krugmanプリンストン大学教授が2007年にはThe Conscience of a Liberal(リベラルの良心)邦訳『格差はつくられた』が出版され、米国の格差が政治よって作り出されたものだとしている。今年3月これまで名前も知られることがなかったフランスのトマ・ピケティThomas Pikettyパリ経済学校教授の英訳本『Capital in the Twenty-First Century(21世紀の資本論)』が米国で出版されるやたちまちベストセラーとなった。過去300年の膨大な資産や所得のデータをもとに分析したもので、資本収益率は経済成長率よりも大きいために富はより富裕層へ蓄積され、富が公平に分配されないことで格差が生じることを実証した。米国ではポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツ、ロバート・ソローのようなノーベル賞クラスの経済学者から絶賛を浴び、たちまち講演先ではロック歌手のような人気を博している。無論これには批判的な立場の経済学者や経済誌もあるが、未だに有効な反論を成し得ていない。データがあまりに反論を許さない。来月には邦訳も出るようだがかなりの大著だ。この著書では2100年まで資本収益率が経済成長率をますます上回り続けるとしている。つまり政治が所得の再分配に手をつけなければ、格差は拡大し続けると言うことだ。クリントン政権で財務長官を歴任した元ハーバート大学学長の経済学者ローレンス・ヘンリー・サマーズLawrence Henry Summersは批判的な立場で、資本が蓄積され続けることは「「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウン)する」とする経済理論であるトリクルダウン論を持ち出している。しかし、実際には1980年代以後も格差は拡大していて、決して富が滴り落ちて来ていない現実がある。
菅原神社近くの山の斜面の紅葉