正月9日に行れた川上村東川の祈年行事「弓祝式」を紹介します。
「弓祝式」は千百数十年に亘り、隣り合う烏川神社と運川寺を舞台にして行う神仏習合の式次第です。 宮守2名、住職1名、奉行1名、射手3名を主役に介添えの方が数名、カメラマンが数人、一般の見学客も数名の和やかな雰囲気の祭り行事です。
行事は先ず、社務所の大広間から始まり、本殿を拝礼。 その後、行列を組んで隣の寺院で弓の名人「東 弥惣」の法要と行事の由来を住職より古文書の拝聴。
次に、寺の庭先の射場(式台の上)から小川を隔てた40mぐらい先の神社・的場に立てられている霞の大的に矢を射込む。 厄年の射手3名は一手3本の白箭を3回射込むが、なかなか的には当たらない。 そこで境内の薬師堂に参り的中を願って九字の秘法を切り、再び射続ける。
次は的場に場所を移して桑弧蓬矢の儀式が行われる。 神職(宮守)が桑弓・蓬矢で東西南北天地の方角に蓬矢を射る。 一方向を射ると桑弓を折って終わり、次の方角には新たな桑弓と蓬矢に取り換える。 (写真は儀式終了後に戴いた桑弧蓬矢と比較のための煙管)
桑の弓(くわのゆみ)と蓬の矢(よもぎのや)は男の子が生まれた時に家の四方に向かって矢を射り、厄を払うそうだ。 中国の故事熟語では四方天地の魔を払って所有を宣言し、我が物とする中華思想の儀式が桑弧蓬矢(そうこほうし)。
桑の木の枝で作った弓、蓬の矢は秋に蓬の茎が伸びたものを刈り取り、紙で羽を矧いだ矢。 その昔、鎮守の夜店で買って遊んだ吸盤付きの遊具の弓矢よりも少し小さいサイズです。
次の儀式は、もう一人の神職が宮守刀を持ち、先ほど寺庭先から矢を射込まれた事で弱体している大的に擬態された鬼を油断させるべく、千破美(ちわみ)の踊りをおどけて踊る。 霞的の裏面は異体字の一画無しの鬼では無いが、鬼と書かれた的を切りつけ、鬼切の行を終える。
次に、僧侶の読経で鬼の供養をおこない、悪魔降伏の神術式は社務所に場所を変えて祝宴で閉式となる。