昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

ランボオと天キチ

2019-09-22 | テレパック
 
 
 ヨーロッパでは短い夏が過ぎ、厳しい冬を迎えようとする中、ゆく季節を惜しむ詩が多く詠まれているようですが、私達天キチには、また別の視点があるように思います。確かに虫の音を聴いたり、明るい星が少ない秋の星空を見上げると、寂しさを感じるのは事実なのですが、私達はもうすぐ冬の星々が昇ってくるのを知っています。オリオンの勇姿やシリウスの輝きには、力強さを感じ、ある意味勇気づけられるようにも思います。

 小林秀雄は傷心した友人に、ランボオの『訣別』という詩を贈りました。それは、なにかこの視点に通じるように思えてなりません。
 
 “もう秋か。-それにしても、何故に、永遠の太陽を惜しむのか、俺達はきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、-季節の上に死滅する人々から遠く離れて。”(地獄の季節 ランボオ作 訳者 小林秀雄 岩波文庫)
 
 秋の東天に、冬の星々が昇ってくるのを見つけると、私達は毎年このような気持ちになるのではないでしょうか。いや、天キチはいつもランボオのいう”清らかな光”を、捜し続けているのかもしれませんね。